労働問題856 退職勧奨が不法行為に当たらないようにするためには、どのような配慮をするべきですか。
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意思形成への過度な強制・干渉は不法行為になり得る 退職勧奨は労働者に退職の意思表示を促す行為ですが、退職の意思形成に過度に強制、干渉すれば、違法な権利侵害として不法行為となり、使用者が損害賠償義務を負うおそれがあります。 |
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5つの配慮点と録音を意識した対応が重要 長時間拘束の回避、威圧的言動の禁止、執拗な繰り返しの禁止、理由説明と労働者の言い分の聴取、拒否の意思表示後の中断という5点に加え、無断録音への意識も重要です。 |
805・806の記事で解説した退職勧奨の基本的性質・違法とされた裁判例を踏まえ、本稿では、実際に退職勧奨を実施する際、会社側が具体的にどのような配慮をすべきかを整理します。
会社側専門の弁護士の立場から、退職勧奨が不法行為に当たらないようにするための配慮点を解説します。
01退職勧奨が不法行為になる場合
退職勧奨は労働者に対して退職の意思表示をするよう促す行為ですが、その労働者の退職の意思形成に過度に強制、干渉すれば、違法な権利侵害として不法行為となり、使用者が損害賠償義務を負うおそれがあります。805の記事で解説したとおり、退職勧奨自体は説得のための事実行為であり、その実施自体は自由ですが、実施方法が社会的相当性を逸脱すれば違法になるということです。
02不法行為を避けるための5つの配慮
退職勧奨が違法な権利侵害に当たらないためには、次のような配慮をするべきです。
- 退職勧奨のために長時間拘束しないよう心がける
- 威圧的な言動は避ける
- しつこく退職勧奨しないようにする
- 一方的に退職勧奨するのではなく、退職勧奨の理由を労働者に説明し、労働者側の言い分も聞く
- 労働者が退職しない意思を明確に表明した場合には、退職勧奨を中断する
これら5点は、806の記事で紹介した違法とされた裁判例(面談の頻度・時間の長さ、拒否後も繰り返す執拗さ、屈辱的な言辞、懲戒解雇可能性の示唆等)を踏まえたものであり、実務上意識すべき基本的な配慮事項です。
03無断録音を意識した対応
なお、労働者が面談の内容を断りなく録音することがありますので、退職勧奨を行う際には、後にやり取りが裁判所等に明らかにされても不都合にならないような対応をすることが重要です。近年はスマートフォンによる録音が容易であるため、面談時の言動が、そのまま証拠として後の紛争で提出される可能性を常に念頭に置いておく必要があります。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側としては、退職勧奨を実施する担当者(人事担当者、上司等)に対して、上記の配慮事項を事前に研修・共有しておくことが重要です。特に、感情的になりやすい場面では、担当者が冷静さを失い、威圧的な言動や執拗な繰り返しに陥りやすいため、複数回にわたる面談の場合には、都度の記録化(面談日時、参加者、発言内容の要旨等)を徹底することをお勧めします。
また、面談は録音されている前提で臨む姿勢が重要です。感情的な発言や威圧的な言葉遣いを避け、常に冷静かつ丁寧な対応を心がけることが、後の紛争予防につながります。
05よくある質問(FAQ)
Q. 労働者が「退職しません」と明確に言った後も、退職勧奨を続けてよいですか。
続けるべきではありません。労働者が退職しない意思を明確に表明した場合には、退職勧奨を中断することが求められます。
Q. 労働者が無断で面談を録音していた場合、証拠として使われますか。
使われる可能性があります。無断録音であっても証拠として提出されることがあるため、面談時は常に録音されている前提で慎重に対応することが重要です。
Q. 退職勧奨の理由を説明しなくても問題ありませんか。
一方的に退職勧奨するのではなく、理由を説明し労働者側の言い分も聞くことが、不法行為を避けるための配慮として求められます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。退職勧奨の実施でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日