労働問題812 競業行為に対し損害賠償請求する場合、どのようなことに留意する必要がありますか。
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相当因果関係のある損害を、使用者側が主張・立証する必要がある 競業行為について損害賠償を請求する場合、使用者は、競業避止義務違反と相当因果関係のある損害(損害の発生と損害額)を主張・立証しなければなりません。 |
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逸失利益の期間は、6か月以内で認定されることが多い 逸失利益が認められる期間は、使用者が競業避止義務違反の影響から回復するに足る相当期間として検討され、6か月以内で認定されることが多くなっています。 |
目次
競業行為に対して損害賠償を請求する場合、実務上最大のハードルとなるのが、損害額の立証です。811の記事で解説した差止め請求と並んで、実際に会社が受けた経済的損失を、どのように金銭に換算し、裁判所に認めてもらうかが重要な課題になります。
会社側専門の弁護士の立場から、競業行為への損害賠償請求における留意点を解説します。
01立証すべき損害の内容
競業行為について損害賠償を請求する場合、使用者は、競業避止義務違反と相当因果関係のある損害(損害の発生と損害額)を主張・立証しなければなりません。単に「競業行為があった」というだけでは足りず、その競業行為によって、具体的にどのような損害が、いくら発生したのかを示す必要があります。
02損害額の算定方法
損害額を算定する際には、使用者がいかなる利益を逸失しているかを具体的に把握し、その上で、把握した逸失利益を金額に換算していきます。この際、一つ一つ具体的に算定することができるものであれば問題ありませんが、具体的な算定が難しい場合は、合理的な推計方法を考え、その方法に従って計算していくことになります。
03逸失利益が認められる期間の目安
逸失利益が認められる期間については、使用者が競業避止義務違反の影響から回復するに足る相当期間がどの程度か検討され、6か月以内で認定されることが多くなっています。たとえば、従業員の引き抜き行為については、人材の流動性等を踏まえ、使用者が人材を補塡し得る相当期間がどの程度なのかが検討され、また、顧客を奪われた場合は、市場の状況などを踏まえ、使用者が営業を回復するに足る相当期間はどの程度かが検討されることになります。
04裁判例(フレックスジャパン対アドバンテック事件)
裁判例では、派遣元企業が派遣スタッフを引き抜かれた事案において、派遣スタッフの減少によって発生した3か月分の損害が認定されています(フレックスジャパン対アドバンテック事件、大阪地裁平成14年9月11日判決)。この裁判例は、813の記事で詳しく解説する在職中の引き抜き行為の判断基準を示した事例でもあり、人材派遣業における大量の派遣スタッフ引き抜きという典型的な事案において、逸失利益の期間が具体的に認定された点で参考になります。
05会社側が押さえておくべき視点
会社側が損害賠償請求を検討する際には、感覚的に「大きな損害を受けた」と考えるだけでなく、具体的にどのような利益を逸失したのか(売上の減少、顧客の喪失、人材補充コスト等)を、可能な限り客観的な資料(売上データ、顧客リストの変動、採用コスト等)で裏付けられるよう準備することが重要です。
また、逸失利益の期間が6か月以内で認定される傾向にあることを踏まえ、過大な期間・金額を請求することは、かえって裁判所の心証を悪くし、認容額を下げるリスクがあります。合理的な推計に基づいた、説得力のある請求額を設定することが望ましいといえます。
06よくある質問(FAQ)
Q. 競業行為による損害は、何年分でも請求できますか。
できません。逸失利益が認められる期間は、使用者が影響から回復するに足る相当期間として検討され、6か月以内で認定されることが多くなっています。
Q. 損害額を一つ一つ正確に計算できない場合、どうすればよいですか。
合理的な推計方法を用いて算定することができます。具体的な算定が困難な場合には、この推計方法に従って損害額を主張・立証していくことになります。
Q. 派遣スタッフを引き抜かれた場合、どの程度の損害が認められますか。
事案によりますが、派遣スタッフの減少によって発生した3か月分の損害が認定された裁判例があります(フレックスジャパン対アドバンテック事件)。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。競業行為への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日