労働問題810 退職後の競業行為が不法行為と判断される場合のポイントを教えてください。

 従業員の退職後の競業は、原則として自由と考えられています。退職後の競業避止義務が認められる場合としては、まず、就業規則の規定や個別の合意があり、これらが有効な場合が考えられます。就業規則は、在職中の従業員の労働条件を規律するものであり退職後は適することはできないのではないかという意見もありますが、裁判例は、適用を肯定しています。
 退職後の競業避止義務が就業規則の規定や個別合意から認められない場合でも、職業選択の自由や自由競争の原理を逸脱する競業が行われたときは、不法行為が成立する余地があると考えます。裁判所は、三佳テック事件(最高裁一小平成22年3月25日判決)において、「雇用契約終了後は、当然に競業避止義務を負うものではないが、元従業員の競業行為が、社会通念上自由競争の範囲を逸脱した違法な態様で雇用者の顧客を奪取したとみられるような場合等は、不法行為を構成することがあるというべきである。」と述べています。
 退職後の競業避止義務に関する就業規則の規定や個別の合意の有効性を判断する要素は、
・守るべき企業の利益があるかどうか
・従業員の地位
・地域的な限定があるか
・競業避止義務の存続期間
・禁止されている行為の範囲に必要な制限がかけられているか
等が考えられます。

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