労働問題811 競業行為に対し差止め請求する場合、どのようなことに留意する必要がありますか。
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契約上の差止め条項があれば、これに基づき差止めを求める 就業規則や個別の合意書に競業の差止め条項が明記されている場合、通常は、同条項に基づき、競業行為の差止めを求めることになります。 |
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契約上の義務がない場合、差止めが認められるのは限定的な場合のみ 契約上の競業避止義務を負わない労働者への不法行為に基づく差止めは、違法性が強度で、事後的な損害賠償では使用者の損害の回復が図れないと認められる場合に限定されます。 |
従業員の競業行為が発覚した際、会社としては、損害賠償だけでなく、その行為自体をやめさせたいと考えることが多いはずです。しかし、差止め請求は、金銭賠償以上に慎重な検討が必要な手段です。
会社側専門の弁護士の立場から、競業行為への差止め請求における留意点を解説します。
01契約上の差止め条項に基づく請求
就業規則や個別の合意書に競業の差止め条項が明記されている場合、通常は、同条項に基づき、競業行為の差止めを求めることになります。810の記事で解説したとおり、退職後の競業避止義務は、就業規則や個別合意で定められ、その内容が有効であれば認められるため、これらの条項が差止め請求の主要な根拠となります。
02契約上の義務がない場合の差止め
契約上の競業避止義務を負わない労働者が、自由競争を逸脱する不法な競業行為を行っている場合、不法行為を根拠に差止めを求めることができるのは、不法行為の違法性が強度で、事後的な損害賠償では使用者の損害の回復が図れないと認めるような場合に限定されると考えられます。契約上の根拠がない場合、差止めというハードルの高い救済を得るには、通常の不法行為よりも一段高い違法性が求められるということです。
03差止めが慎重に判断される理由
差止めは、競業の主体に重大な不利益を課す措置であることから、慎重に判断される傾向があります。差止めの対象となる行為は必要十分な範囲に限定され、差止めの期間も合意された期間の範囲内で必要十分な期間に限定される傾向にあります。金銭賠償と異なり、差止めは、相手方の職業活動そのものを直接制約する措置であるため、裁判所もその範囲を厳格に絞り込む傾向にあるということです。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側が差止め請求を検討する際には、まず、就業規則や個別合意に明確な差止め条項があるかを確認することが出発点になります。条項がある場合でも、その内容が合理的な範囲(810の記事で解説した要素:企業の利益、従業員の地位、地域的限定、期間、行為範囲の制限)にとどまっているかを、あらかじめ精査しておく必要があります。
契約上の根拠がない場合には、差止めのハードルが非常に高いことを踏まえ、損害賠償請求(812の記事参照)を中心に検討し、差止めはあくまで例外的な選択肢として位置づけることが現実的です。差止めを求める場合には、対象行為・期間を必要最小限に絞り込んだ申立てを行うことが、認容の可能性を高めます。
05よくある質問(FAQ)
Q. 競業避止義務の契約がない従業員に対して、差止めを求めることはできますか。
できる場合もありますが、限定的です。不法行為の違法性が強度で、事後的な損害賠償では回復が図れないと認められる場合に限られると考えられます。
Q. 差止め請求は、金銭賠償に比べて認められやすいですか。
認められやすいとはいえません。差止めは相手方に重大な不利益を課す措置であるため、対象行為・期間ともに必要十分な範囲に限定して慎重に判断される傾向があります。
Q. 差止め請求を成功させるには、どうすればよいですか。
就業規則や個別合意に明確な差止め条項を整備し、その内容を合理的な範囲にとどめておくことが重要です。請求時も、対象行為・期間を必要最小限に絞り込むことが認容の可能性を高めます。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。競業行為への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日