労働問題1010 「休職を要する」という診断書のみで休職を認めてはいけない理由

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この記事の要点

主治医が「休職を要する」と書く意図を正しく理解する

主治医は「このまま働かせると体調が悪化するので休ませてほしい」という趣旨で書いている。会社の休職制度の内容を把握した上で「即休職スタート」という意味で書いているわけではない。この趣旨の違いを踏まえた上で、会社のルール通りに対応する

休職制度がない会社は「欠勤」として扱う

休職制度は義務ではない。制度がない会社では「欠勤」として対応する。「休職」という呼び方を使ってしまうと、就業規則の用語と混同してトラブルになりやすい

休職制度がある会社でも、所定の欠勤期間を経てから休職スタートが原則

診断書を受け取ったその日から即休職スタートにすると、就業規則で本来予定されている「欠勤期間+休職期間」の合計より短い在籍期間になってしまい、本人にとって不利益になる場合がある

就業規則の用語を正しく整理して本人に正確に伝える

「欠勤」「年次有給休暇」「傷病休暇」「休職」は就業規則上で明確に区別されている。大雑把な用語を使って本人に伝えると、後からトラブルになりやすい。一体どの制度に当てはまるのかを整理してから正確に説明することが大事

01「休職を要する」という診断書が来たとき、多くの会社がやってしまう対応

 社員から「休職を要する」と書かれた主治医の診断書が提出されたとき、どのように対応していますか。

 多くの会社では、この診断書を受け取った段階でそのまま休職をスタートさせています。「お医者さんがそう言っているのだから間違いないだろう」という感覚から、診断書の記載に従って即座に休職に入れてしまいます。しかしこれは正しい対応ではありません。

 なぜ診断書通りに即座に休職スタートさせることが問題なのか。この記事ではその理由と、正しい対応の手順について解説します。

02主治医が「休職を要する」と書く意図を正しく理解する

 対応を間違えないようにするためには、まず主治医が「休職を要する」と診断書に書くときの意図を正しく理解する必要があります。

 主治医が「休職を要する」と書くとき、その頭の中にあるのは大まかに次のような考えです。「このまま働かせていると体調が良くならない。あるいはさらに体調が悪化する可能性があるので、休んで療養させてほしい」という趣旨です。

 重要なのは、主治医はその会社の休職制度の内容を詳しく理解した上で書いているわけではないという点です。就業規則に欠勤期間と休職期間がどのように定められているか、休職要件がどうなっているかなどを把握して書いているわけではありません。

 したがって「休職を要する」という診断書は、「仕事を休む必要がある」という医学的な意見であり、「会社の休職制度を即座にスタートさせてください」という指示ではないのです。この趣旨の違いを踏まえた上で、会社のルール通りの対応をしていく必要があります。

03休職制度がない会社の対応

 まず確認しておきたいのは、休職制度は法律上の義務ではないということです。休職制度を設けていない会社も存在します。

 休職制度がない会社の場合は、「欠勤」として対応することになります。しばらく欠勤を認め、回復して働けるようになれば復帰してもらう。回復しないようであれば、どこかの時点でやめていただくという対応になります。

 この場合に注意すべきことがあります。「休職を要する」という診断書が提出されたからといって、その後の欠勤を「休職」と呼んでしまうことは避けてください。休職制度がないのに「休職」という言葉を使うと、就業規則に定められた「休職」と混同されてトラブルになることがあります。制度がないのであれば、明確に「欠勤」という名称で対応してください。

04休職制度がある会社でも即休職スタートにしてはいけない理由

 一定以上の規模の会社では休職制度が設けられていることが多いです。例えば「傷病による欠勤が1か月続いた場合、最長3か月の休職期間を認める」という形です。

 この場合、傷病による休みについて「欠勤1か月+休職3か月」の合計4か月、会社に在籍できることになります。これが制度の本来の姿です。

 ところが「休職を要する」という診断書が提出された当日から即座に休職をスタートさせてしまうと、欠勤期間なしで休職期間3か月のみになります。本来4か月在籍できるはずだったのに、3か月しか在籍できない扱いになってしまうのです。

 これは労働者にとって不利益な方向での扱いです。会社が当初予定していた制度の運用とも異なります。この問題を避けるためにも、診断書が提出されたからといって即座に休職スタートにすることは原則として行うべきではありません。

即休職スタートにした場合の問題

就業規則の定め:欠勤1か月後に休職スタート、休職期間の上限3か月
 ↓
本来の在籍期間:欠勤1か月+休職3か月=合計4か月
 ↓
診断書提出当日から即休職スタートにした場合:休職3か月のみ
 ↓
本人が本来享受できたはずの1か月分(在籍期間)を短縮してしまっている

 また就業規則に「その他各号に準ずる自由がある時」などの包括条項を根拠として即座に休職を命じた場合も、後の解釈において問題が生じることがあります。包括条項は、所定の欠勤期間と同程度の状況にある場合に用いるものと解釈される可能性があるからです。こうしたリスクを踏まえても、原則論として所定の欠勤期間を経てから休職スタートという手順を取ることが安全な対応です。

05正しい手順。欠勤期間を経てから休職スタート

 「休職を要する」という診断書が提出されたときの正しい対応の手順は次の通りです。

ステップ 内容
① 年次有給休暇 残っている年次有給休暇がある場合は、本人の希望に応じてまず年休を取得させる。給与が出るため本人にとっても有利
② 傷病休暇 就業規則に傷病休暇の制度がある場合は、それを活用する
③ 欠勤 年休や傷病休暇を使い切った後、就業規則所定の欠勤期間(例:1か月)の欠勤が続くまでは「欠勤」として扱う
④ 休職スタート 就業規則所定の欠勤期間を満たした段階で初めて休職を命じる(休職命令書を書面で交付)。休職開始日と満了日を明確に伝える

 このように順序を踏むことで、本人の労働者としての権利を損なわずに、かつ会社のルール通りの対応ができます。後の紛争においても「原則的な扱いをしっかり行った」という事実が、会社側に有利に働きます。

 具体的な手順については、就業規則の内容によって異なるため、弁護士に相談しながら進めることをお勧めします。

06就業規則の用語を整理して正確に伝えることが重要

 今回の問題が実務上なぜ生じるのかというと、診断書に書かれた「休職を要する」という大雑把な用語と、就業規則上の具体的な制度(欠勤・年次有給休暇・傷病休暇・休職)が混同されてしまうからです。

 社長や人事担当者が「お医者さんが言うんだから間違いないだろう」という感覚から、そのまま「休職」として扱ってしまう。その結果、就業規則上の「欠勤」にあたる期間まで「休職」と呼んでしまい、本人への説明も混乱したものになります。

 重要なのは、診断書に書かれた「休職を要する」という言葉を、自社の就業規則に当てはめるとどの制度に該当するのかを整理してから対応することです。「今のあなたの状況は就業規則上の欠勤にあたります」「〇か月間の欠勤が続いた場合に休職命令を出します」という形で、正確な用語と制度の説明を本人に行うことが大切です。

 間違った日本語で伝えると誤解を招き、後にトラブルになりやすいです。特に最近はうつ状態や適応障害などメンタル系の問題による休職の紛争が増えています。用語の整理と正確な説明を怠らないようにしてください。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。休職・復職対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 「休職を要する」という診断書が提出されました。すぐに休職をスタートさせてもよいですか。

A. 原則としてすぐに休職をスタートさせることは避けてください。就業規則に定められた欠勤期間(例:1か月)を経てから休職スタートというのが原則的な手順です。診断書が提出されたその日から休職にすると、本来の「欠勤+休職」の合計期間より在籍期間が短くなり、本人に不利益な扱いになることがあります。まず自社の就業規則の休職要件を確認し、弁護士に相談した上で対応を決めてください。

Q2. 当社には休職制度がありません。「休職を要する」という診断書が来た場合はどう対応しますか。

A. 休職制度がない会社では「欠勤」として対応してください。年次有給休暇が残っている場合は、まずそれを取得させる。年休を使い切った後は欠勤として扱います。「休職を要する」という診断書が来たからといってその期間を「休職」と呼ぶことは避けてください。就業規則上の制度と混同されてトラブルになります。

Q3. 本人から「休職したい」と申し出がありました。即座に認めてよいですか。

A. 就業規則の休職要件を満たしているかどうかを確認してください。本人が希望しても、就業規則上の欠勤期間を経ていない段階で休職命令を出すと、本来の在籍期間の計算が変わります。原則として年休取得→欠勤(所定期間)→休職命令という手順を踏むことをお勧めします。具体的な対応については就業規則の内容を弁護士に確認してもらいながら進めてください。

Q4. 休職命令を出すとき、書面は必要ですか。

A. 書面(休職命令書)を交付することを強くお勧めします。口頭での通知だけでは、後から「いつから休職が始まったのか」「満了日はいつか」についての認識に食い違いが生じやすいです。休職命令書には少なくとも「休職開始日」「休職期間の満了日」「満了時に復職できない場合の扱い(退職・解雇等)」を明記して本人に交付してください。

最終更新日:2026年5月10日

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