労働問題678 賃金形態別の割増賃金1時間単価の計算式(時給・日給・月給・歩合給)【会社側弁護士が解説】

割増賃金(残業代)の計算には、まず賃金形態ごとの「1時間あたりの賃金単価」を正確に算定する必要があります。時給制・日給制・週給制・月給制・歩合給制(請負給制)では計算式が異なり、特に月給制では月の所定労働時間数の設定が重要です。本記事では会社側弁護士が、各賃金形態の計算式と実務上の留意点を解説します。

01割増賃金の計算における1時間単価の重要性

労働基準法第37条に基づく割増賃金(時間外・休日・深夜)の計算式は、以下のとおりです。

割増賃金 = 1時間あたりの賃金単価 × 割増率 × 割増対象時間数
(時間外:125%以上/深夜:125%以上/休日:135%以上 ※時間外が月60時間超の場合:150%以上)

この計算において、「1時間あたりの賃金単価」をどのように算定するかが重要です。賃金形態によって計算方法が異なり、誤った算定は残業代の過少払いにつながる可能性があります。

02各賃金形態の1時間単価の計算式

労基法施行規則第19条に基づき、賃金形態ごとの1時間あたりの賃金単価は以下のとおり算定します。

賃金形態 1時間あたりの賃金単価の計算式
①時給制 その1時間あたりの金額(時給そのもの)
②日給制 日給 ÷ 1日の所定労働時間数
(日によって所定労働時間数が異なるときは1週間における1日平均所定労働時間数)
③週給制 週給 ÷ 週の所定労働時間数
(週によって所定労働時間数が異なるときは4週間における1週平均所定労働時間数)
④月給制 月給 ÷ 月の所定労働時間数
(月によって所定労働時間数が異なるときは、1年間の1月平均所定労働時間数)
⑤歩合給制
(請負給制)
その賃金算定期間の歩合給総額 ÷ その賃金算定期間の総労働時間数

03月給制における所定労働時間数の算定

月給制では「月の所定労働時間数」が1時間単価の分母となります。月によって所定労働時間数が異なる場合は、1年間の1月平均所定労働時間数を用います。

計算例:年間所定労働日数が240日、1日の所定労働時間が8時間の場合

1月平均所定労働時間数 = 240日 × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 160時間
月給20万円の場合の1時間単価 = 200,000円 ÷ 160時間 = 1,250円

この1時間単価が、時間外割増・深夜割増・休日割増の計算基礎となります。

実務上のポイント:就業規則・労使協定に所定労働時間数を明記し、割増賃金の計算基礎を明確にしておくことが重要です。計算基礎が不明確な場合、トラブルの原因となります。

04割増賃金の計算から除外できる賃金

労基法施行規則第21条に基づき、以下の賃金は割増賃金の計算基礎(1時間単価の分子となる賃金)から除外することができます。

  • 家族手当
  • 通勤手当
  • 別居手当
  • 子女教育手当
  • 住宅手当
  • 臨時に支払われた賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)

ただし、これらの手当の名称にかかわらず、実質的に労働の対価として支払われる固定的な手当(例:職務手当・業務手当等)は除外できません。名称だけを「家族手当」とすることは無効と解されます。

05会社側の実務的留意点

割増賃金の正確な計算と未払い残業代トラブルを防ぐため、会社として以下の整備が推奨されます。

  • 賃金形態と所定労働時間数の就業規則への明記:各賃金形態・所定労働時間・割増賃金の計算方法を就業規則に明確に規定する
  • 除外賃金の実質的審査:算入除外とする手当の実質が「家族手当等」に該当するかどうかを確認し、根拠を明確にする
  • 定額残業代制度の適切な設計:定額残業代を設ける場合は、有効要件(明確な対価関係・実際の時間外労働との適正な対応)を満たしていることを確認する
  • 賃金計算の記録保存:各労働者の賃金計算根拠・時間外労働時間数の記録を適切に保存する(労基法上5年の保存義務・当面3年)
  • 専門家への確認:割増賃金の計算方法は複雑な要素が多く、不明点は弁護士・社会保険労務士へのご相談を推奨します
SUPERVISOR

弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代・割増賃金の計算方法でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

06よくある質問(FAQ)

Q. 月給制の場合、月の残業時間が増えると1時間単価が下がりますか?

A. いいえ。月給制の1時間単価の計算式の分母は「所定労働時間数」であり、実際の労働時間数ではありません。したがって残業時間が増えても1時間単価は変わりません。

Q. 通勤手当は割増賃金の計算基礎から除外できますか?

A. はい。労基法施行規則第21条に基づき、通勤手当は割増賃金の計算基礎から除外することができます。ただし、通勤手当の名称であっても実質的に労働の対価として支払われる場合(例:全員に一定額を支払う場合等)は除外できないことがあります。

Q. 深夜割増と時間外割増は重複して計算しますか?

A. はい。深夜時間帯(22時〜翌5時)に時間外労働が行われた場合、深夜割増(25%)と時間外割増(25%)が重複し、合計50%以上の割増賃金が必要となります(1時間単価×150%以上)。

Q. 歩合給(請負給)の場合、残業代の計算はどうなりますか?

A. 歩合給は「賃金算定期間の歩合給総額 ÷ 総労働時間数」で1時間単価を算出します。ただし、時間外・深夜・休日に該当する時間については、この1時間単価に割増率(25%・35%等)を乗じた割増分の支払いが必要です(1倍分は歩合給に含まれているため、割増分のみ追加支払いが必要)。

最終更新日:2026年5月

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