労働問題620 残業代計算において、日給、月給制、歩合給制、年俸制の通常の賃金の時間単価はどのように計算しますか?
1.通常の賃金の時間単価の計算方法
割増賃金(残業代)は、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額」(以下、通常の賃金の時間単価という)に割増率を乗じて計算します(労基法37条1項)。
通常の賃金の時間単価については、労基則19条に定めがあり、時間給の場合はその額、日給の場合は日給を所定労働時間数で除した額、月給制の場合は月給を所定労働時間数で除した額、歩合給制の場合は歩合給の金額を賃金計算期間の総労働時間数で除した額となります。年度当初に年俸制を決定し、その一部を賞与として支払うという年俸制の場合は、賞与を含めた年俸額の12分の1を月における所定労働時間数で除して、通常の賃金の時間単価を求めることになります。
したがって、時間外手当を算出する計算式は、(労働契約に基づく1時間当たりの単価)×(時間外労働時間)×(労働基準法に基づく割増率)となり、端的にいえば、「単価×時間」で求めることができます。
とはいえ、単価については、労働時間の性質によって割増率が異なり、労働時間については労働日毎に所定労働時間と時間外労働時間を区別し、さらに割増率が異なる労働時間の性質毎に内訳を分類する必要があることから、技術的な困難性を伴うことがあります。
通常の賃金の時間単価の具体的な計算方法は、以下のとおりです。
2.日給制
日給:8000円
1日の所定労働時間:8時間
[計算式]
通常の賃金の時間単価=8000円÷8時間=1000円/時
3.月給制
月給:基本給20万円
1日の所定労働時間:8時間
年間休日数:130日
この例では、月により所定労働時間数が異なるため、一月平均所定労働時間数を計算する必要があります。一月平均所定労働時間数を計算する場合、まずは、1年間の日数から年間休日日数を引いて、その年の所定労働日数を計算します。1年の起算点について、法的規制はなく、各企業において就業規則などで選択することができます。
通常の賃金の時間単価の具体的な計算は次のとおりです。
[計算式]
○年所定労働日数=365日-休日130日=235日
年間の所定労働時間数=1日の所定労働時間8時間×235日=1880時間
一月平均所定労働時間数=1880時間÷12か月≒156.67時間(小数第三位以下四捨五入)
通常の賃金の時間単価=月給20万円÷156.67時間≒1277円/時(小数点以下四捨五入)
4.歩合給制(出来高払制)
当月の歩合給:32万円
当月の総労働時間数:180時間
[計算式]
通常の賃金の時間単価=32万円÷180時間≒1778円/時(小数点以下四捨五入)
5.年俸制
年俸額:500万円
年間休日数:130日
[計算式]
月額賃金=500万円÷12か月≒41万6667円(小数点以下四捨五入)
○年所定労働日数=365日-休日130日=235日
年間の所定労働時間数=1日の所定労働時間8時間×235日=1880時間
一月平均所定労働時間数=1880時間÷12か月≒156.67時間(小数第三位以下四捨五入)
通常の賃金の時間単価=41万6667円÷156.67時間≒2660円/時(小数点以下四捨五入)
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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