労働問題415 労働審判法の目的とは?経営者が知っておくべき「3回以内の決着」と早期解決のメリット
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迅速に結論が出る 原則3回以内の期日で審理が終結し、通常3〜4ヶ月程度で結論に至ります。初動が遅れると、不利な結果につながることがあります。 |
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「対応姿勢」も見られる 法律論だけでなく、実務に通じた審判員の視点で、会社の対応や説明の誠実性なども含めて厳しく評価されます。 |
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調停不成立でも審判が示される 様子見の対応は通用しません。調停が成立しなければ裁判所が審判を下す仕組みになっており、戦略的な解決の判断が求められます。 |
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目次
01労働審判法制定の背景
労働審判法が制定された背景には、個別労働紛争の増加と、従来の訴訟手続の限界があります。解雇・雇止め・賃金・配置転換など、労働者と事業主との間の紛争は多様化・複雑化していましたが、通常の民事訴訟では解決までに長期間を要し、当事者双方にとって大きな負担となっていました。
特に、労働紛争は事実関係の評価や現場の実情を踏まえた判断が重要であるにもかかわらず、書面中心の訴訟では実情に即した柔軟な解決が図りにくいという問題が指摘されていました。また、紛争が長期化することで職場環境の悪化や企業経営への影響が拡大するという弊害もありました。
こうした状況を受け、裁判所の関与のもとで、より迅速かつ実効的に労働紛争を解決する新たな手続として創設されたのが、労働審判法に基づく労働審判手続です。裁判官に加え、労使双方の立場を理解する専門家が関与することで、現実的かつ納得性の高い解決を目指す制度として位置づけられています。
会社経営者としては、労働審判法は「訴訟の前段階の簡易手続」という位置づけにとどまらず、紛争解決の主戦場となり得る制度であることを前提に、その制定背景と目的を正しく理解しておくことが重要です。
02労働審判法が対象とする紛争
労働審判法が対象とするのは、個々の労働者と事業主との間に生じた民事上の労働関係紛争です。これを法律上は「個別労働関係民事紛争」と呼びます。
具体的には、労働契約の成立や存否に関する紛争・解雇・雇止めの有効性・賃金・残業代の支払請求・配置転換や懲戒処分の有効性など、労働契約に基づく権利義務を巡る争いが広く含まれます。労働審判手続は、労働者個人と会社との間の紛争を対象としており、労働組合が当事者となる集団的労使紛争は含まれません。
また、労働審判手続は、訴訟と異なり、厳格な法律構成だけでなく、事案の実情や当事者の置かれた状況を踏まえた解決を重視する点に特徴があります。そのため、法律上の白黒をつけるだけでなく、金銭解決や和解的解決が図られることも少なくありません。
会社経営者としては、労働審判の対象となる紛争は日常的な人事・労務管理の延長線上で発生するものが多いことを踏まえ、自社の対応が労働審判の場でどのように評価されるかを常に意識しておくことが重要です。
03労働審判手続の特徴
労働審判手続の最大の特徴は、迅速性と専門性を重視した裁判所主導の紛争解決手続である点にあります。通常の民事訴訟と比べ、短期間で結論に至るよう制度設計がなされています。
労働審判手続では、裁判官である労働審判官1名と、労働関係に関する専門的知識・経験を有する労働審判員2名(労使双方の立場から各1名)が合議体を構成します。この構成により、法的観点だけでなく、労務現場の実情を踏まえた判断が可能となっています。
また、原則として3回以内の期日で審理を終結させる運用がされており、早期解決が強く意識されています。書面だけでなく当事者本人の意見聴取を重視する点も、労働審判手続の特徴です。
さらに、労働審判手続は、判決ありきの手続ではなく、調停による解決を基本とする構造を持っています。話合いによる解決の可能性を探りつつ、それが困難な場合には、裁判所が審判という形で結論を示します。
会社経営者としては、労働審判は「簡易な裁判」というよりも実質的な紛争解決の場であり、初期対応や主張立証の在り方が結果に大きく影響する手続であることを理解しておく必要があります。
04調停と労働審判の位置づけ
労働審判手続においては、調停による解決がまず優先されるという点が重要な特徴です。労働審判法は、紛争について調停成立の見込みがある場合には、裁判所が積極的に調停を試みることを予定しています。
調停では、労働審判官および労働審判員が当事者双方の主張を聴取し、法的な見通しや実務上の妥当性を踏まえた解決案を提示することが多くなります。単なる話合いではなく、裁判所の関与のもとで現実的な落としどころを探る点に特徴があります。
もっとも、調停が成立しない場合には手続はそこで終わるわけではありません。その場合、裁判所は労働審判を行い、個別労働関係民事紛争について、当事者間の権利義務関係を踏まえつつ、事案の実情に即した解決を図るために必要な判断を示します。
このように、労働審判手続は、調停と審判を一体的に組み合わせた制度であり、話合いによる柔軟な解決と、裁判所による判断とを段階的に用意している点に制度上の意義があります。
会社経営者としては、調停段階での対応がその後の審判内容にも影響し得ることを踏まえ、早期の段階から戦略的に対応することが重要となります。
05労働審判法の目的(労働審判法1条)
労働審判法の目的は、同法1条に明確に定められています。すなわち、個々の労働者と事業主との間に生じた労働関係に関する民事紛争について、裁判所において、迅速・適正かつ実効的な解決を図ることにあります。
労働審判法1条が定める制度の仕組み
①対象:労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について生じた個別労働関係民事紛争
②審理体制:裁判官である労働審判官と、労使双方の立場から選任された労働審判員による合議体で審理を行う
③第一次的解決:まずは調停による解決を試みる
④最終的解決:調停が成立しない場合には、事案の実情に即した労働審判を行う
ここで重視されているのは、単に法律論としての正解を示すことではなく、当事者間の権利義務関係を踏まえつつ、現実的かつ実効性のある解決を導くことです。長期化しがちな労働紛争を早期に収束させることで、労働者の生活の安定と企業経営の円滑化の双方を図る点に、労働審判法の本質的な目的があります。
会社経営者としては、労働審判法は「労働者救済のためだけの制度」ではなく、企業にとっても紛争を早期に整理し経営リスクを最小化するための制度であることを理解しておくことが重要です。
06会社経営者が理解しておくべき実務上のポイント
労働審判法は、個別労働紛争を迅速に解決するための制度であり、会社経営者にとっても無関係ではいられない現実的な紛争解決手段です。実務上、特に理解しておくべきポイントを整理します。
まず、労働審判は短期間で結論が示される手続である点です。原則として数か月以内に手続が終了するため、初期対応の遅れや準備不足はそのまま不利な結果につながりやすくなります。紛争の兆候がある段階から、事実関係や証拠を整理しておくことが重要です。
次に、労働審判では法律論だけでなく、事案の実情や当事者の対応姿勢が強く影響します。形式的に正しい対応であっても、説明不足や配慮を欠く対応は、調停や審判の場で不利に評価される可能性があります。
また、調停が重視される手続であることから、早期解決のための柔軟な判断も求められます。必ずしも白黒をつけることが最善とは限らず、経営上の影響や将来の労使関係を見据えた対応が必要となります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 労働審判と訴訟(通常裁判)の最大の違いは何ですか。
A. 最大の違いは解決までのスピードと手続の性質です。労働審判は原則3回以内の期日(通常3〜4ヶ月)で結論が出ますが、訴訟は1〜2年以上かかることが通常です。また、労働審判は調停による柔軟な解決を優先する構造ですが、訴訟は判決による法律的な白黒付けが基本です。さらに、労働審判には実務に通じた審判員が参加するため、現場実態も考慮した判断がなされる点に特徴があります。
Q2. 労働審判で会社側が不服な結論(労働審判)が出た場合はどうすればよいですか。
A. 労働審判の結論(審判)に不服がある場合は、審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができます。適法な異議申立てがあれば、労働審判は失効し、事件は訴訟手続に移行します。異議を申し立てるかどうかは、審判内容の妥当性・訴訟に移行した場合の見通し・経営への影響等を総合的に考慮して判断します。使用者側弁護士と速やかに協議することをお勧めします。
最終更新日:2026年5月31日