労働問題412 労働局のあっせんは社会保険労務士も代理人になることができますか。


この記事の要点

労働局のあっせんで代理人になることができるのは「特定社会保険労務士」である。通常の社会保険労務士はあっせんにおける代理権を持たない

「社会保険労務士」と「特定社会保険労務士」は別資格です

特定社会保険労務士の代理権はあっせんに限定されており、労働審判・訴訟では代理人にはなれない。あっせん後に訴訟等に発展した場合は弁護士に依頼し直す必要がある

最初から弁護士に依頼することで継続的な対応が可能になります

あっせんで解決しなかった場合に備え、最初から使用者側弁護士に相談して対応方針を立てることが最善

「あっせんで終わる」とは限らないため、司法手続も見据えた対応が必要です

01特定社会保険労務士とは何か

 「特定社会保険労務士」とは、社会保険労務士法上の資格区分の一つで、一定の研修を修了し試験に合格した社会保険労務士に与えられる付加的な資格です。通常の社会保険労務士と特定社会保険労務士では、できる業務の範囲が異なります。

 特定社会保険労務士には、個別労働関係紛争の解決手続(あっせん等)において、紛争の当事者を代理する権限が付与されています(社会保険労務士法施行規則等)。つまり、特定社会保険労務士は労働局のあっせんにおいて代理人になることができますが、通常の社会保険労務士はこの代理権を持ちません。

02特定社会保険労務士が代理人になれる手続と範囲

 特定社会保険労務士が代理人として関与できるのは、個別労働関係紛争に係る次の手続に限られます。

手続 特定社会保険労務士の関与可否
労働局のあっせん(紛争調整委員会) 代理人になることができる
労働審判(裁判所) 代理人にはなれない(弁護士のみ)
訴訟(裁判所) 代理人にはなれない(弁護士のみ)

 また、特定社会保険労務士が代理できる紛争額の上限は、社会保険労務士法の規定により制限が設けられています(上限額は法令・規則に定められています)。これを超える請求金額の事案については、特定社会保険労務士であっても代理できない場合があります。

03弁護士との違いと選択のポイント

 あっせんへの対応において、特定社会保険労務士と弁護士のどちらに依頼するかを検討する際のポイントは次のとおりです。

最初から弁護士に依頼することを推奨する理由
特定社会保険労務士の代理権はあっせんに限定されているため、あっせんで解決しなかった場合(労働審判・訴訟に移行した場合)は、弁護士に改めて依頼し直す必要があります。その際に、事案の引き継ぎ・重複した説明・追加費用が発生することになります。あっせんを申請された時点で、最終的に訴訟・労働審判に発展する可能性も念頭に置き、最初から弁護士に相談・依頼することで、一貫した対応方針を維持できます。

 ただし、既に顧問として連携している特定社会保険労務士がいる場合、あっせん対応において協力してもらうことは有意義です。この場合も、法的評価・主張内容の確定については使用者側弁護士と連携して進めることをお勧めします。

04まとめ

 労働局のあっせんは、「特定社会保険労務士」であれば代理人になることができます。通常の社会保険労務士はこの代理権を持ちません。ただし、特定社会保険労務士の代理権はあっせんに限定されており、労働審判・訴訟では代理できません。あっせんで解決しなかった場合に備え、最初から使用者側弁護士に相談して対応方針を立てることが最善です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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Q&Aよくある質問

Q1. 顧問社会保険労務士(特定ではない)に、あっせんの対応を依頼することはできますか。

A. 代理人(本人に代わって手続を行う者)としては参加できません。ただし、書面の作成補助・対応方針の助言・当日の同席(補佐人としての参加が認められる場合)等、代理権を必要としない形での協力は可能な場合があります。具体的な関与の形については、使用者側弁護士とともに検討することをお勧めします。

Q2. 相手方(労働者側)が特定社会保険労務士を代理人として選任してきました。こちらも特定社会保険労務士を立てる必要がありますか。

A. 必ずしも必要ではありません。会社側は特定社会保険労務士・弁護士のいずれかを代理人に選任することも、代理人を立てずに担当者自身が対応することも選択できます。ただし、相手方に代理人がついている場合は、対等に対応するために会社側も専門家を立てることが望ましいといえます。訴訟等への移行可能性も考慮すると、弁護士に依頼することがより確実な選択です。

最終更新日:2026年5月31日

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