労働問題28 普通解雇の有効性が争われやすい場面とは?試用期間・能力不足・傷病解雇を会社側弁護士が解説
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紛争になりやすい4類型:①試用期間の本採用拒否(最多)②能力不足③勤務態度不良④傷病解雇 裁判例上最も多く争われるのは試用期間中の本採用拒否です。「試用期間中だから自由に解雇できる」は誤りです(三菱樹脂事件・最高裁昭和48年12月12日)。いずれの類型でも客観的合理的理由と社会通念上の相当性が必要です。 |
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類型を問わず共通して必要な3点:①日常的な記録②改善機会の付与③解雇前の弁護士への確認 傷病解雇では業務上か否かの確認と休職制度の適用が特に重要です(業務上は労基法19条の解雇禁止あり)。いずれの類型でも解雇前の弁護士への相談が解雇無効リスクを最小化する最善策です。 |
目次
01最多類型:試用期間中の本採用拒否をめぐる紛争
普通解雇の有効性が争われた裁判例を見ると、試用期間中の本採用拒否(解雇)が有効かどうかという問題として争われるケースが非常に多く存在します。その理由は、試用期間という制度の性格と、経営者の誤解にあります。
試用期間は、採用した社員の適格性を一定期間観察・評価するための期間です。しかし「試用期間中だから自由に解雇できる」という理解は誤りです。「試用期間中だから大丈夫」という誤解のもとで適切な手順を踏まずに本採用拒否をした結果、紛争に発展するケースが実務上非常に多く見られます。
02三菱樹脂事件が示す本採用拒否の法的要件
最高裁判所は三菱樹脂事件(昭和48年12月12日大法廷判決)において、試用期間中の本採用拒否は通常の解雇よりも広い範囲で認められるとしつつも、「解約権留保の趣旨・目的に照らして、客観的に合理的な理由が存し社会通念上相当として是認されうる場合」でなければならないと判示しています。
つまり、試用期間中であっても自由に解雇できるわけではありません。通常の解雇よりは広い裁量が認められますが、客観的合理的理由と社会通念上の相当性は依然として必要です。
試用期間中の本採用拒否を有効に行うためには、試用期間中に問題となった事実を具体的に把握・記録しておくことが不可欠です。「なんとなく合わない」「印象が悪い」といった主観的な評価だけでは、客観的合理的理由の証明ができません。また、問題が判明した時点で早期に対応することが重要です。試用期間満了直前や満了後に問題を持ち出すと、「なぜもっと早く言わなかったのか」という反発が生じやすくなります。
03②能力不足・適格性欠如を理由とした解雇
採用時に期待した能力を発揮できない・職務遂行能力が著しく低いといった能力不足を理由とした解雇は、紛争になりやすい類型の一つです。能力不足解雇が難しい主な理由は次の3点です。
第一に、能力不足の客観的証明が難しいことです。「仕事ができない」という評価は主観的になりがちであり、具体的な数値・記録・他の社員との比較など、客観的証拠による裏付けが必要です。
第二に、改善のための措置を尽くしたことを示す必要があります。注意指導・教育機会の提供・配置転換の検討など、解雇以外の手段を先に尽くしたかどうかが問われます。
第三に、「解雇しなければならないほど」の重大性・深刻性が求められます。単に業績が平均以下というだけでは不十分で、業務の遂行に重大な支障が生じていることが必要です。
04③勤務態度不良・業務命令違反を理由とした解雇
遅刻・無断欠勤の常習、業務命令への繰り返しの違反などを理由とした解雇も紛争になりやすい類型です。この類型では、注意指導の記録が特に重要です。「何度も口頭で注意した」という事実だけでは、書面による記録がなければ「指導した」という主張が認められにくくなります。
注意指導書・警告書・面談記録などの書面証拠を積み重ねた上で、それでも改善されなかったという経緯を示せることが、解雇の有効性を支える根拠となります。業務命令違反の場合には、その命令自体が適法かどうかも検討対象となります。違法・不合理な命令への拒否は、直ちに解雇理由とはなりません。
05④傷病による就労不能を理由とした解雇
傷病(身体疾患・精神疾患)により就労が不可能または著しく困難な状態が続く場合の解雇も、紛争になりやすい類型です。「病気で長期休んでいるから当然解雇できる」は注意が必要です。
この類型では、安全配慮義務への配慮・就業規則の休職制度の適用・医師の診断書・産業医の意見など、医学的な確認プロセスを経ていることが特に重要です。休職制度がある場合は休職期間を経た上での解雇でなければ、解雇の有効性が認められにくくなります。
また、傷病が業務起因性を持つ場合(業務上の傷病)は、療養中の解雇が法律上禁止される場合があります(労働基準法19条)ので、特に注意が必要です。業務上か否かの確認を怠って解雇を強行した場合、後に業務上と認定されれば解雇禁止規定違反となります。
・「メンタル疾患で休んでいる社員を休職制度を適用せずに解雇した。業務上の傷病に該当するかどうかの確認もしておらず、解雇禁止規定(労基法19条)違反を主張された」
いずれも、解雇前の弁護士への相談で防ぐことができたケースです。
06類型を問わず共通して必要な実務上の対策
普通解雇の類型にかかわらず、有効な解雇を実現するために共通して必要な実務上の対策は次の3点です。
② 改善の機会を与えてから解雇する:注意指導・改善期限の設定・教育機会の提供などのプロセスを経ることが、社会通念上の相当性を支える上で不可欠
③ 解雇前に弁護士に確認する:具体的な事案の状況が解雇の有効性要件を満たしているかどうかは個別の事情によって大きく異なるため、解雇を実行する前に弁護士に確認することが解雇無効リスクを最小化する最善策
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年6月28日