労働問題226 時間外労働時間計算の具体例・月〜土各9時間勤務の場合の1日単位・週単位の算定方法【会社側弁護士が解説】
残業代(割増賃金)の計算において、時間外労働時間の算定は「1日単位」(1日8時間超)と「1週間単位」(週40時間超)の二つの基準で行います。この二つの基準の関係を正しく理解するために、具体的な計算例を用いて解説します。
特に注意が必要なのは、1日単位で時間外労働と判定された時間を、週単位の計算でも重複してカウントしないという点です。使用者側弁護士の立場から、具体例を用いて正しい計算方法を解説します。
01具体例の設定
日曜日が法定休日の企業において、月曜日から土曜日まで毎日9時間ずつ労働させた場合を例に考えます。週の内訳は以下のとおりです。
日曜日:法定休日(休み)。月曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。火曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。水曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。木曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。金曜日:9時間労働(1日8時間超の時間外労働1時間)。土曜日:9時間労働。週の総労働時間は9時間×6日=54時間です。
021日単位の時間外労働の集計
月曜日から金曜日の各日について、1日8時間を超えた時間は1日単位の時間外労働として確定されます。各日1時間ずつ、月〜金の5日間で合計5時間が1日単位の時間外労働となります。
土曜日はこの時点ではまだ1日単位の時間外労働の判定のみ行います(後述の週単位判定で判断)。
03週単位の時間外労働の判定
週単位の判定では、週の総労働時間から1日単位で時間外労働と判定された時間を除いた残りが40時間を超えているかどうかを確認します。
週の総労働時間:54時間。1日単位の時間外労働(月〜金各1時間、計5時間)を除く:54時間から5時間を引いて49時間。法定の40時間を超えた部分:49時間から40時間を引いて9時間。この9時間が週単位の時間外労働となります。
この9時間は土曜日の労働時間(9時間)にすべて当てはまります。つまり、土曜日の勤務を開始した時点から週40時間超の時間外労働となると考えることになります。
04誤った計算例(二重カウントの例)
誤った計算として、「月〜木に9時間×4日=36時間労働させているから、金曜日に4時間を超えて労働した時間から週40時間超の時間外労働になる」と考えるケースがあります。しかし、これは1日単位で時間外と判定した時間(各日の超過1時間)を週の計算に再び含めてしまう誤りです。
正しくは、月〜金の8時間×5日=40時間(1日単位の時間外労働を除いた所定内部分の合計)が週の法定労働時間に達しているため、土曜日の9時間は全て週40時間超の時間外労働となります。
05正しい計算の結論と実務対応
この例の場合、時間外労働の合計は1日単位の5時間(月〜金各1時間)と週単位の9時間(土曜9時間)の合計14時間となります。この14時間分に対して25%以上の割増賃金を支払う必要があります。
給与計算において時間外労働時間の算定方法が誤っている場合、退職した社員から過去3年分の差額を請求されるリスクがあります。労働問題に強い会社側弁護士に相談のうえ、給与計算の適正性を定期的に確認することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代の正確な計算方法や給与規程の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 月〜土の各日9時間労働させた場合の時間外労働の合計は何時間ですか。
A. 1日単位(月〜金各1時間×5日=5時間)と週単位(土曜9時間:週の所定内部分40時間を超えた分)の合計14時間が時間外労働となります。この14時間分に対して割増賃金を支払う必要があります。
Q2. なぜ土曜日の勤務を開始した時点から週40時間超の時間外労働となるのですか。
A. 月〜金の1日8時間以内部分(8時間×5日=40時間)がすでに週の法定労働時間40時間に達しているためです。土曜日の勤務はこれに上乗せされるため、最初の1分から週40時間超の時間外労働となります。
Q3. 土曜日の時間外労働(週40時間超分)には休日割増(×1.35)は適用されますか。
A. 土曜日が法定休日でなければ適用されません。この例では日曜日が法定休日のため、土曜日は所定休日(法定休日以外)です。所定休日の労働には休日割増(×1.35)ではなく、時間外割増(×1.25)が適用されます。
Q4. 時間外労働の計算で間違いやすい点は何ですか。
A. 最もよくある誤りは「1日単位の時間外労働を週の計算にも重複して含める(二重カウント)」ことです。1日単位の時間外労働は週単位の判定から除外して計算しなければなりません。また、法定休日と所定休日の区別を誤ることも多い誤りの一つです。
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最終更新日:2026年5月10日