労働問題22 懲戒解雇事由に該当することを理由として普通解雇することはできますか?
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懲戒解雇事由に該当する事実は普通解雇の客観的合理的理由の根拠となり得る。多くの場合、普通解雇は可能 重い処分の根拠となる事由であれば、それより軽い普通解雇の根拠にもなり得るという論理が一般的な解釈です。ただし解雇権濫用法理(労契法16条)による審査は別途受けます。事実が軽微で改善可能性がある場合は相当性が認められないこともあります。 |
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懲戒手続を経ていないことへの評価リスクと退職金不支給規定の不適用の2点を解雇前に必ず確認する 懲戒手続(弁明の機会の付与等)を経ずに普通解雇した場合の手続的相当性への評価リスクと、普通解雇を選択した場合は退職金不支給・減額規定が使えないという2点を、解雇前に必ず確認してください。 |
目次
01懲戒解雇事由に該当する事実は普通解雇事由にもなり得る
懲戒解雇事由と普通解雇事由は、就業規則上は別々に規定されることが一般的です。しかし、懲戒解雇事由に該当する事実(例えば、重大な業務命令違反・不正行為・長期無断欠勤など)は、同時に普通解雇の客観的合理的理由にも該当すると考えるのが一般的な解釈です。
懲戒解雇は普通解雇よりも重い処分です。重い処分の根拠となる事由であれば、それより軽い処分である普通解雇の根拠にもなり得るという論理から、懲戒解雇事由への該当は普通解雇事由の存在を支える根拠として機能します。したがって、多くの場合、懲戒解雇事由を理由とした普通解雇は可能といえます。
02前記事(労働問題21)との関係の整理
この論点は、前記事(労働問題21「懲戒解雇事由があっても普通解雇を選択できるか」)と密接に関連しています。前記事は「どちらの解雇形式を選ぶか」という選択の問題であったのに対し、本記事は「懲戒解雇事由という事実を普通解雇の根拠として使えるか」という根拠の問題です。
整理すると、①普通解雇を選択でき(前記事・高知放送事件が認める)、かつ②懲戒解雇事由に該当する事実を普通解雇の根拠として用いることができる(本記事)、という2つの論点が組み合わさって、初めて実務上の対応が完結します。いずれの論点も、解雇権濫用法理(労契法16条)による審査は別途受ける点は共通しています。
03普通解雇の有効性は解雇権濫用法理による別途の審査を受ける
懲戒解雇事由に該当することを理由として普通解雇する場合でも、普通解雇の有効性は解雇権濫用法理(労働契約法16条)に基づく審査を受けます。懲戒解雇事由への該当が確認できても、次の2つの要件を満たさない限り、普通解雇は無効となる可能性があります。
①客観的に合理的な理由があること:懲戒解雇事由に該当するという事実は、この要件を満たす根拠となり得ます。しかし、その事実の内容・程度・状況によっては、普通解雇の合理的理由として不十分と判断されるケースもあります。②社会通念上相当であること:解雇という手段が当該事案において相当と評価されることが必要です。懲戒解雇事由に形式的には該当するものの、その程度が軽微で改善可能性が高い場合などは、普通解雇の社会通念上の相当性が認められないことがあります。
「懲戒解雇事由に該当するから、普通解雇も当然有効になる」は誤りです。横領・暴行・重大な情報漏えいなど労働関係の継続を期待しがたいほど重大な事実であれば相当性も認められやすいですが、比較的軽微な非違行為に過ぎない場合は注意が必要です。
04懲戒手続を経ていないことへの評価リスク
懲戒解雇事由に該当する事実があるにもかかわらず、あえて懲戒手続(弁明の機会の付与・懲戒委員会など)を経ずに普通解雇を選択した場合、「本来は懲戒解雇をすべき事案であったのに、手続を省略して普通解雇を選んだ」という評価を受けるリスクがあります。
弁護士として会社側の解雇事案に関わる中で、懲戒手続を経ずに普通解雇したことが手続の相当性の観点から問題視されたケースを経験しています。懲戒解雇事由に該当する事実を理由として普通解雇する場合、懲戒手続に準じた手順(本人への事実確認・弁明の機会の付与など)を踏むことが、後のトラブルを防ぐ上で有効です。
05退職金の取り扱い:普通解雇選択で不支給規定は使えない
懲戒解雇事由に該当する事実があるにもかかわらず普通解雇を選択した場合、就業規則・退職金規程上の懲戒解雇時の退職金不支給・減額規定を適用することはできません。普通解雇を選択する以上、原則として退職金は支払う必要があります。「懲戒解雇事由を理由に普通解雇したので、退職金を払わなくてよい」は誤りです。
懲戒解雇事由を理由とした普通解雇をめぐる問題でよく見られるのは、次のようなパターンです。
・「懲戒解雇事由があるから普通解雇も当然有効と思い、弁明の機会も与えずに解雇したところ、手続上の問題を指摘されて解雇無効の主張を受けた」
いずれも、解雇形式の選択前に弁護士への相談があれば防げたケースです。この点を事前に十分考慮した上で、解雇形式を選択することが重要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
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最終更新日:2026年6月28日