労働問題113 解雇することができなくても退職勧奨して辞めさせることができるのですから、問題点を記録に残したり、注意指導したり、懲戒処分に処したりする必要はありませんよね?

 解雇することができなくても退職勧奨して辞めさせることができることがあるのは事実ですが、有効に解雇できる可能性が高い事案であればあるほど退職勧奨に応じてもらえる可能性が高くなり、退職条件も使用者側に有利になることに留意する必要があります。
 到底解雇が認められないような事案で退職勧奨したところ明確に退職を拒絶された場合、退職に応じてもらうために、通常よりも高額の金銭の支払を提示するなどしなければならなくなってしまいますし、それでも合意退職に応じてもらえなければ、手の施しようがなくなってしまいます。
 退職交渉が行き詰まれば、無理な退職勧奨をしがちになりますので、退職勧奨が違法と評価されて不法行為に基づく損害賠償請求が認められたり、せっかく退職届を取ったのに退職を撤回されたり、錯誤無効や強迫取消の主張が認められてしまうリスクが高くなります。
 使用者側が一方的に労働契約を解除する方法は解雇だけなのですから、退職勧奨に応じないようであれば解雇できるよう、退職勧奨に先立ち、問題点を記録に残し、十分な注意指導を行い、懲戒処分を積み重ねるなどして、解雇する際と同じような準備をしておくべきでしょう。

 

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