労働問題1 中小企業の労務管理における労働問題対応の重要ポイント

この記事の結論
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申立書到達から約1か月で第1回期日。第1回期日までが勝負

労働審判は原則3回以内の期日で終結する短期決戦です。第1回期日での心証形成が結果を大きく左右します。申立書受領後すぐに会社側弁護士に相談し、答弁書の作成・証拠収集・対応方針の検討を進める必要があります。

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答弁書は証拠の内容を直接引用して20〜30頁程度。調停条項は口外禁止・清算条項を忘れずに

答弁書は証拠の内容を本文中に直接引用することが有効です。調停では口外禁止条項と清算条項を盛り込み、紛争の蒸し返しを防ぐことが重要です。

 裁判所から突然「労働審判手続申立書」が届いた場合、多くの会社経営者は「何から対応すればよいのか分からない」という状況に直面します。労働審判は通常の民事訴訟とは異なり、原則3回以内の期日で紛争解決を目指す極めてスピードの速い手続であり、申立書が届いてから約1か月程度で第1回期日が開かれるのが一般的です。

 労働審判では約70%以上が調停により終了し、全体の約80%が手続内で解決しているとされており、第1回期日までの準備が結果を大きく左右するといわれています。

01労働審判の現実:なぜ「第1回期日までが勝負」なのか

 労働審判は、極めて短期間で結論に至ることを前提とした手続です。労働審判法では、原則として3回以内の期日で審理を終えることとされており、実務上も申立てから終結までの平均審理期間はおよそ3か月程度とされています。

 多くの事件では第1回期日において証拠調べが行われ、その結果を踏まえて労働審判委員会の心証が形成され、直ちに調停が試みられます。第1回期日までに会社側の主張や証拠が十分に整理されていない場合、会社に不利な前提で調停が進んでしまうリスクがあります。

 いったん形成された心証を後の期日で覆すことは、実務上容易ではありません。また、労働審判では迅速な解決が制度の目的とされているため、第1回期日の変更は認められにくい傾向があります。

02「答弁書で勝負が決まる」と言える理由

 労働審判において、会社側の対応の中で最も重要な書面の一つが答弁書です。労働審判委員会は、まず申立書と答弁書を読み込んだうえで事件の構造を理解し、争点や証拠の評価の見通しを立てることが多いとされています。

労働審判員への配慮:裁判所によっては労働審判員に事前に送付される資料が答弁書のみの場合があります。このため、答弁書の中で重要な証拠の内容を本文中に直接引用する形で記載しておくことが有効です。「証拠○号証のとおり」と記載するだけでなく、当該証拠にどのような記載がありどの点が重要なのかを答弁書本文で説明しておくことが望ましいといえます。
分量の吟味:答弁書は分量が多ければよいというものではありません。事案の複雑さにもよりますが、本文を概ね20頁から30頁程度にまとめる構成が一つの目安となります。内容が整理されていない長大な書面は、争点を不明確にし、かえって会社側の主張が伝わりにくくなることがあります。

03労働審判期日への対応:出頭すべき人物

 労働審判では、第1回期日を中心に、労働審判委員会が当事者に直接質問する形で事実関係の確認が行われます。単に会社の代表者や人事担当者が出頭すれば足りるというわけではありません。

事実体験者の出頭:争点となっている事実を実際に体験した人物(解雇理由となった業務トラブルを直接確認した上司・担当者等)が出頭することが重要です。「そのような報告を受けています」といった間接的な説明は、事実の裏付けとして説得力が弱いと評価されるおそれがあります。

決裁権限者の出頭:第1回期日から調停による解決が試みられることが多く、解決金の額や退職条件についてその場で判断できる決裁権限者(代表取締役・人事労務担当役員等)が出頭していることが望ましいとされています。決裁権限者が出頭できない場合でも、期日中に代理人弁護士からの連絡にすぐ対応できる体制を整えておくことが重要です。

04適正な「解決金」と「調停条項」の設計

 労働審判事件の約70%以上が調停成立により終了しており、実務上は解決金の支払を内容とする合意によって紛争が終結するケースが多いといえます。会社としては、紛争の見通しや訴訟に移行した場合のコストなども考慮しながら、適切な解決金額や調停条件を判断する必要があります。

付加金請求への反論:残業代請求等が争われる労働審判では、労働者側から付加金の可能性を前提に解決金の増額を求められることがあります。ただし、付加金は裁判所が判決で支払を命じた場合に初めて発生するものです。労働審判手続では、調停や審判の段階で付加金の支払を命じることはできないとされています。付加金の可能性だけを理由として不必要に高額な解決金を受け入れる必要はありません。

 また、解決金という名称が用いられていても、その金銭が賃金としての性質を有する場合には、会社は源泉所得税の納付義務を負う可能性があります。解決条件を検討する際には、金額だけでなく、支払方法や退職日の扱いなども含めて総合的に判断する必要があります。

05紛争の蒸し返しを防ぐ条項設計

 労働審判において調停が成立した場合、その内容は調停調書に記載され、裁判上の和解と同様の効力を持ちます。調停条項の内容を適切に設計しておかなければ、解決したはずの紛争が後になって再び問題となる可能性があります。

口外禁止条項(守秘義務):本件紛争の経緯や調停内容について、正当な理由なく第三者に口外しないことを当事者双方で確認することが一般的です。インターネット上への公開や第三者への積極的な情報拡散を抑止する効果が期待できます。

清算条項:「本調停条項に定めるもののほか、当事者間には何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する」といった内容の清算条項を設けることが重要です。これにより、労働審判での調停成立後に同じ紛争が蒸し返されるリスクを低減できます。

調停条項設計の要点:解決金の支払条件だけでなく、①口外禁止条項、②清算条項、③退職日の確認、④源泉所得税の処理方法まで含めた総合的な条項設計が紛争の完全終結につながります。
経営上のポイント 労働審判の申立書が届いたら、速やかに会社側弁護士に相談することが最優先です。答弁書は証拠の内容を直接引用して20〜30頁程度にまとめ、期日には事実体験者と決裁権限者を出頭させることが望ましいです。調停では口外禁止条項と清算条項を忘れずに盛り込み、紛争の蒸し返しを防いでください。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 労働審判の申立書が届いてから第1回期日まで何日くらいありますか。

A. 申立書が届いてから第1回期日まで、一般的に約1か月程度しかありません。この間に事実関係の整理・証拠収集・答弁書作成を行う必要があり、迅速な初動対応が不可欠です。

Q2. 答弁書の分量はどれくらいが適切ですか。

A. 事案の複雑さにもよりますが、本文を概ね20頁から30頁程度にまとめることが一つの目安です。内容が整理されていない長大な書面はかえって主張が伝わりにくくなることがあります。

Q3. 労働審判期日に出頭すべき人物は誰ですか。

A. 争点となっている事実を直接体験した人物(上司・担当者等)と、解決条件について最終的な判断ができる決裁権限者の双方が出頭できる体制を整えることが重要です。

Q4. 調停で支払う解決金に付加金は含まれますか。

A. 付加金は、裁判所が判決で支払を命じた場合に初めて発生するものであり、労働審判の調停・審判の段階では命じることができません。付加金を理由に不必要に高額な解決金を受け入れる必要はありません。

最終更新日:2026年3月1日

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