労働問題707 労働審判の期日変更はできますか。

この記事の結論
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期日変更は「顕著な事由」がある場合に限り認められ、厳格に運用される

労働審判の期日変更は、顕著な事由がある場合に限って許されます(労働審判法29条・民訴法93条3項)。裁判官と労働審判員2名の日程調整が必要なため再調整が難しく、通常の業務都合では認められにくいのが実情です。

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会社側は、変更を前提とせず、指定された期日に合わせて準備する

呼出状を受け取ったら、当該期日を最優先で確保し、直ちに答弁書の準備と弁護士への相談に着手すべきです。本人が出席できない場合でも、弁護士を代理人として対応する方法があります。

 労働審判の期日変更は、顕著な事由がある場合に限って認められます(労働審判法29条により準用される民事訴訟法93条3項)。もっとも、労働審判の期日には、裁判官(労働審判官)に加えて労働審判員2名が関与するため、当事者双方の都合だけでなく、これらの日程も同時に調整する必要があり、他の手続に比べて再調整が難しいのが実情です。そのため、裁判所は期日変更について厳格な運用をとっており、通常の業務上の都合では変更が認められにくくなっています。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の期日変更が認められる場合と、会社が指定された期日に向けて取るべき対応を解説します。

01なぜ労働審判の期日変更は難しいのか

 労働審判における期日変更は、通常の訴訟と比べてもハードルが高く、例外的な措置と位置づけられています。その背景には、制度の迅速性と手続構造上の事情があります。労働審判は短期間での解決を目的として、あらかじめ厳格なスケジュールで進行することが予定されており、期日の変更を安易に認めれば、この迅速性が損なわれます。

 さらに、労働審判の期日には、裁判官に加えて、労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名が関与する合議体(労働審判委員会)が構成されます。当事者双方や代理人を含めると複数名の予定を同時に調整する必要があり、一度決定された日程の再調整は実務上極めて困難です。このため、期日変更が認められるには、単なる業務上の都合では足りず、出席が物理的に困難といえる「顕著な事由」が必要とされます。会社側としては、「都合が悪ければ変更できる」という前提ではなく、指定された期日に合わせて対応体制を整えることが原則であると理解しておく必要があります。

02例外的に変更・調整が検討されるケース

審理の空転を避けるための変更

 期日変更が例外的に検討される典型的な場面は、そのまま期日を実施しても審理が実質的に進行しない、いわゆる「空転」が明らかな場合です。たとえば、当事者本人や重要な参考人がやむを得ない事情で出頭できず、事実関係の確認や主張の整理ができない状況では、期日を開いても実質的な審理が成立しません。このような場合には、無理に期日を実施するよりも、適切な審理を確保する観点から、例外的に期日の変更が認められる可能性があります。もっとも、この判断は裁判所の裁量によるものであり、一方当事者の都合だけでは足りず、審理の実効性に重大な支障が生じるかどうかという観点から厳格に判断されます。

労働審判員の交替による調整

 期日変更が困難な場合でも、別の方法で調整が図られることがあります。その一つが、労働審判員の交替による対応です。労働審判員は本業を持ちながら関与しているため、日程調整が難航することがあり、特に第1回期日の指定前の段階で全員の予定が長期間一致しない場合には、期日を大幅に遅らせることは制度趣旨に反します。そのため、一定の場合には、期日を維持したまま審判員の構成を変更することで、迅速な審理を確保するという対応が取られることがあります。会社側としては、期日が合わない場合に単純に延期されるとは限らず、別の形で手続が進行する可能性があることを理解しておく必要があります。

03期日変更と答弁書提出期限の扱い

 第1回期日が変更された場合に、答弁書の提出期限がどう扱われるかについては、一律のルールがあるわけではなく、裁判所が個別の事情を踏まえて判断します。期日が後ろにずれたからといって、当然に提出期限も延長されるとは限りません。裁判所は、会社側が申立内容を十分に検討し、適切な答弁書を作成するための準備期間が確保されているかを重視するため、すでに十分な準備期間が与えられていると判断される場合には、提出期限が維持されることもあります。

経営者が見落としやすいポイント

期日が変更されれば準備の時間も延びる、と安易に考えるのは危険です。答弁書の提出期限は当然には延長されないため、期日変更の有無にかかわらず、答弁書の準備は当初のスケジュールを前提に進めるべきです。早期に着手し、余裕をもって提出できる体制を整えておくことが実務上の適切な対応です。

04会社側が取るべき対応

 期日変更が極めて限定的であることを踏まえると、会社側に求められるのは、変更を前提としないリスク管理と初動対応です。取るべき対応は、次のとおりです。

呼出状を受け取ったら①期日の優先確保(労働審判の期日を最優先事項としてスケジュールを再調整する。会議や出張を理由とする変更は通常認められない)/②直ちに会社側専門の弁護士へ連絡(出席可否や代理人対応の可否も含め、早期に方針を決める)/③代理人対応の検討(本人が出席できない場合でも、弁護士を代理人として選任することで、期日への対応を維持できる)

 労働審判では、出頭の有無が審理の進行や評価に大きく影響するため、何ら対応しないという選択はリスクが高いといえます。本人が出席できない場合であっても、労働問題に精通した弁護士を代理人として選任することで、会社側の主張や証拠を適切に提示し、期日前の準備から当日の対応まで一貫した対応を確保することができます。呼出状を受け取った時点で、すでに手続が始まっていると認識し、直ちに相談することが重要です。

05よくある質問(FAQ)

Q. 重要な出張と労働審判の期日が重なりました。変更はできますか。

労働審判の期日変更は、通常の訴訟に比べて困難です。当事者双方に加えて労働審判員2名を含めた調整が必要なため、顕著な事由がある場合に限られ、業務上の都合では認められないことが多いといえます。まずは早急に弁護士へ相談し、代理人出席などの対応を検討すべきです。

Q. 期日が変更になった場合、答弁書の提出期限も延びますか。

裁判所が個別に判断します。会社側が充実した答弁書を作成するために必要な準備期間が確保されているか等を考慮したうえで判断されるため、当然に延長されるとは限りません。期日変更の有無にかかわらず、早期の準備が重要です。

Q. 労働審判員と予定が合わない場合はどうなりますか。

第1回期日の指定前の段階で、労働審判員との日程調整がつかず、全員の予定が長期間合わないような場合には、期日を大幅に遅らせるのではなく、労働審判員を交替して対応することも検討されます。

経営上のポイント 労働審判の期日変更は、顕著な事由がある場合に限って認められます(労働審判法29条・民訴法93条3項)。裁判官と労働審判員2名の日程調整が必要なため再調整が難しく、業務上の都合では変更が認められにくい厳格な運用がされています。例外的に、審理が空転する場合に変更が検討されたり、労働審判員の交替で調整されることはありますが、いずれも限定的です。答弁書の提出期限も、期日変更に伴って当然に延長されるわけではありません。会社側としては、変更を前提とせず、呼出状を受け取った時点で期日を最優先で確保し、直ちに答弁書の準備と弁護士への相談に着手すべきです。本人が出席できない場合でも、弁護士を代理人として対応する方法があります。期日への対応から答弁書の作成まで、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。タイトなスケジュールで進む労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日

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