労働問題568 団体交渉の場面で不当労働行為となるのはどのような行為ですか。

この記事の結論
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使用者には誠実に団体交渉に当たる義務がある

使用者には、労働組合と誠実に交渉する義務があります。誠意をもって団体交渉に当たったとは認められない場合には、団交拒否の不当労働行為となります。

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不誠実団交となる具体的な行為がある

最初から協約締結の意思がないと宣言する場合、実質的な交渉権限のない者だけを出席させる場合、組合の要求を拒否するだけで根拠や対策を示さない場合などが、不誠実団交となりうる行為です。

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使用者に譲歩義務はなく、行き詰まりでの打ち切りは違反にならない

使用者には組合の要求を受け入れたり譲歩したりする義務まではありません。十分な討議の後、双方の主張が対立したまま行き詰まり、交渉を打ち切ることは、誠実交渉義務違反にはなりません。

01誠実交渉義務と団交拒否の不当労働行為

 使用者には、労働組合と誠実に交渉する義務(誠実交渉義務)があります。そのため、使用者が誠意をもって団体交渉に当たったとは認められない場合には、団体交渉の拒否の不当労働行為(労組法7条2号)となります。

 団交拒否の不当労働行為は、完全に交渉の場に出ることを拒否する場合だけでなく、形式的には交渉の場に出席しながら、実質的に誠意をもって対応しない場合(不誠実団交)も含まれます。「交渉の席には座っているから不当労働行為にはならない」と安易に考えることは危険で、実質的な内容が問われます。

 会社経営者として重要なのは、労働組合から団体交渉の申入れがあった場合には、正当な理由なく拒否せず、誠実に対応する姿勢を持つことです。「組合と交渉したくない」という判断は、不当労働行為として問題とされます(不当労働行為全体の概要は566番参照)。

02不誠実団交となる具体的な行為

 不誠実団交となりうるのは、例えば次のような行為です。

不誠実団交(不当労働行為)となりうる具体的な行為

・最初から労働協約締結の意思はないと宣言する場合
・実際上交渉権限のない者による、みせかけだけの交渉をする場合
・組合の要求を拒否するのみで、その根拠となる資料や対策を示さない場合
・合理性の疑われる回答に根拠を説明することなく固執する場合
・組合の要求への回答において、合理性の認められない前提条件を付してそれに固執する場合

 これらに共通するのは、形式的には交渉の場に出ているものの、実質的には誠意をもって対応しておらず、労働組合との間で実のある交渉を行っていないという点です。

 特に注意すべきなのは、「実際上交渉権限のない者によるみせかけだけの交渉」です。会社が、実際には何も決定権のない担当者を出席させ、「上に伝える」というだけで何も動かないような対応は、不誠実団交と評価される可能性があります。団体交渉には、実際に交渉を進め、一定の決定権を持つ者が出席することが求められます。また、「組合の要求を拒否するだけで根拠となる資料や対策を示さない」という対応も問題とされます。拒否するのであれば、なぜ受け入れられないのかの説明や資料の提示が必要です。

03交渉打ち切りは誠実交渉義務違反にならない

 他方、使用者には、組合の要求を受け入れたり、組合に対して譲歩をしたりする義務まではありません。これは重要なポイントです。

 誠実交渉義務とは、誠意をもって交渉に臨み、組合側の主張を十分聴取し、それに対する自社の考え方・根拠を説明する義務です。組合の要求すべてを受け入れることを義務付けるものではありません。

交渉打ち切りが違反とならない場合

十分な討議の後、双方の主張が対立し、意見の一致を見ないまま交渉が行き詰まった結果、交渉を打ち切ることは、誠実交渉義務違反(不当労働行為)にはなりません。

 つまり、「誠実に交渉したが、双方の主張が折り合わなかった」という状況での交渉打ち切りは、不当労働行為にはなりません。しかし、十分な討議を尽くさず、初めから交渉を形骸化させることを意図して打ち切った場合は問題となります。会社経営者としては、团体交渉において「誠実に対応しているか」という観点を常に意識し、対応の記録を残しておくことが重要です。具体的な団体交渉の対応方針に迷う場合は、使用者側弁護士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 使用者には誠実に団体交渉に当たる義務があり、これを怠ると不当労働行為となります。不誠実団交となる具体例は、協約締結意思がないと宣言する場合、実質的な交渉権限のない者による形式的交渉、組合要求を拒否するだけで根拠や資料を示さない場合などです。他方、使用者には組合の要求を受け入れる義務まではなく、十分な討議の後に双方の主張が行き詰まって交渉を打ち切ることは誠実交渉義務違反にはなりません。団体交渉の対応に迷う場合は弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 合同労組(ユニオン)から団体交渉を申し入れられました。応じる義務がありますか。

A. 合同労組(個人が加入できる外部の労働組合)に加入している労働者についても、使用者には団体交渉に応じる義務があります。「社内に組合を作っていないから関係ない」「外部の組合は関係ない」という対応は、正当な理由のない団交拒否として不当労働行為となります。交渉の議題が自社の労使関係に関わる事項(賃金・労働条件等)であれば、誠実に対応する必要があります。申入れがあった段階で、速やかに使用者側弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 団体交渉でいくら交渉しても組合が主張を変えない場合、打ち切っても構いませんか。

A. 十分な討議を尽くした後、双方の主張が対立したまま行き詰まった場合、交渉を打ち切ることは誠実交渉義務違反(不当労働行為)にはなりません。ただし、まだ検討する余地があるにもかかわらず早々に打ち切ったり、組合の要求に対して根拠もなく固執するだけで実質的に討議を尽くさなかったりする場合は問題とされ得ます。「行き詰まった」と言えるだけの十分な交渉を経たかどうかがポイントです。打ち切りを検討する場合は弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 団体交渉の出席者は、どのような権限を持つ者を出席させればよいですか。

A. 「実際上交渉権限のない者によるみせかけだけの交渉」は不誠実団交とされます。そのため、団体交渉には、交渉事項について一定の判断や回答ができる権限を持つ者(例えば人事担当者・取締役等)が出席することが重要です。「会社の決定権のある者を出席させない」「何でも『持ち帰り検討』だけで何も返答しない」という対応は問題とされ得ます。もちろん、すべての要求についてその場で即決できる必要はありませんが、実質的な交渉が進む体制を整えることが求められます。

最終更新日:2026年2月25日

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