労働問題403 会社を辞めた社員の代理人弁護士から内容証明郵便が届き、7日以内に回答するよう要求されていますが、今が会社の繁忙期ということもあり、間に合いそうもありません。2週間後の回答では遅過ぎますか。

この記事の要点

相手方(元従業員の代理人弁護士)が示した回答期限は、必ずしも守る必要はないケースがほとんど——しっかり準備して合理的期間内に回答すれば足りる

「7日以内」という期限に過剰に焦る必要はありません

ただし合理的期間を超えて回答が遅れると、訴訟・労働審判を申し立てられる可能性が高まる——2週間程度であれば合理的期間内と評価されるケースが多い

「後で返事する」のではなく、期限内に準備を整えて回答することが重要です

準備に時間がかかる場合は事前に連絡してから回答を準備することが望ましい——そして内容証明を受け取った時点で使用者側弁護士に依頼することが最善

初動対応を誤ると、その後の紛争が不利になるリスがあります

01相手方が示した回答期限に法的拘束力はない

 元従業員の代理人弁護士から内容証明郵便が届き、「7日以内に回答せよ」と要求されている場合でも、相手方が一方的に設定した回答期限に法的な拘束力はありません。

 「7日以内」という期限は、相手方が自らに都合よく設定した期限にすぎません。この期限を守らなかったことを理由に、会社が法的不利益を被ることは原則としてありません。したがって、「7日以内に回答しなければ大変なことになる」という恐れから、不十分な準備のまま急いで回答する必要はありません。

02「合理的期間内」の回答で足りる

 一般論として、しっかりと準備した上で合理的期間内に回答すれば十分です。回答の品質(内容・法的根拠・事実関係の整理)が、期限を数日超えることよりも重要です。不十分な準備で急いで出した回答が、その後の紛争において会社側の不利な証拠として使われるリスクがあります。

 ただし、合理的期間を大幅に超えて回答が遅れると、相手方が「誠実な対応をしていない」と判断し、訴訟や労働審判を申し立てる可能性が高まります。「いつか返事しよう」という先送りは危険です。

032週間という期間の評価

 内容証明郵便を受け取ってから2週間後の回答については、一般的に合理的期間内と評価されるケースが多いといえます。繁忙期等の事情もあることを踏まえると、2週間という期間は「回答の準備に要する合理的な時間」として社会通念上許容される範囲内に収まるケースがほとんどです。

 もちろん、請求内容の性質や事案の複雑さによって判断は異なります。単純な事案であれば1週間以内の回答が合理的とされることもあり得ます。逆に事実関係の確認に相当の時間を要する複雑な事案であれば、2週間を超えても合理的と評価されることもあります。

04準備に時間がかかる場合の対応

 回答の準備に時間がかかる場合は、まず相手方(代理人弁護士)に連絡して「○月○日までに回答する」という旨を事前に伝えることが望ましいところです。この「準備中の連絡」をすることで、誠実に対応しようとしていることが示され、その間の訴訟・労働審判申立てのリスクを低減できます。

 準備中の連絡は、電話よりも書面(ファクス・電子メール等)で記録として残しておくことをお勧めします。口頭での連絡のみでは後に「連絡がなかった」と主張される可能性があります。

05内容証明を受け取った時点での最善の対応

 元従業員の代理人弁護士から内容証明郵便が届いた時点での最善の対応は、速やかに使用者側弁護士に依頼することです。

内容証明を受け取ったら最初にすべきこと

①使用者側弁護士への即時相談:内容証明の内容を分析し、請求の法的根拠・自社の対応方針を専門家と協議する
②感情的な返答を控える:「とんでもない」「断固争う」等の感情的な回答は紛争を拡大させる。冷静な法的回答を準備する
③関連証拠の保全:内容証明の請求内容に関連する記録(タイムカード・給与明細・業務記録等)を保全・整理する
④相手方への暫定連絡:必要であれば「内容を確認の上、○日以内に回答する」旨を書面で連絡する

 「自社で対応できそうだ」と判断して弁護士への相談を後回しにするケースがありますが、初動対応の誤りは後の紛争において回復困難な不利益を招く可能性があります。内容証明を受け取った段階が、専門家に相談すべき最適なタイミングです。

06まとめ

 相手方弁護士が示した回答期限は必ずしも守る必要はなく、しっかり準備して合理的期間内に回答すれば足ります。2週間という期間は一般的に合理的期間内と評価されるケースが多くなっています。ただし合理的期間を超えると訴訟・労働審判申立てのリスクが高まりますので、準備に時間がかかる場合は事前に連絡することが望ましいところです。内容証明を受け取った時点で、速やかに使用者側弁護士に依頼することが最善の対応です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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Q&Aよくある質問

Q1. 内容証明を無視して回答しない場合はどうなりますか。

A. 内容証明への回答義務はなく、無視しても直ちに法的制裁を受けることはありません。しかし、無視することで相手方が交渉の意思がないと判断し、訴訟・労働審判の申立てに踏み切る可能性が高まります。また、「誠実な対応をしなかった」という事実が後の紛争で不利に評価されるリスもあります。無視は最悪の選択といえます。

Q2. 回答する際に、会社自身で対応することはできますか。それとも弁護士に依頼した方がよいですか。

A. 内容証明への回答は自社でも行えますが、相手方には弁護士がついているため、対等に交渉するためには会社側も弁護士に依頼することを強くお勧めします。不適切な回答内容・不用意な認容表現・権利放棄と評価される発言等は、後の訴訟・労働審判において会社側に不利に使われる可能性があります。使用者側弁護士に依頼することで、適切な回答内容と方針を確定することができます。

最終更新日:2026年5月31日

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