労働問題300 営業社員に営業手当さえ支払っていれば、残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払わなくてもいいのですよね。
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営業手当を支払っていても、時間外・休日・深夜労働をさせれば残業代の支払義務は変わらない 「営業手当を払っているから残業代は不要」という考えは誤りです |
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営業手当が残業代として認められる場合——不足額があれば追加支払で足りる 正しく残業代として認定されれば、「営業手当」はその限度で残業代に充当されます |
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営業手当が残業代として認められない場合——営業手当も算定基礎賃金に加算した上で残業代の全額を支払う必要がある 算定基礎賃金が上がれば残業代の時間単価も上がり、支払総額が大幅に増加します |
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リスクを避けるためには、297番・298番で解説した正しい支払名目・金額明示で残業代を支払うことが不可欠 内訳が判別できる形で「時間外勤務手当」等の明白な名目にすることが最善策です |
目次
01営業手当があっても残業代支払義務は変わらない
営業手当を支払っていても、時間外・休日・深夜労働をさせれば残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要があることに変わりありません。
「営業手当を払っているから残業代は不要だ」という考えは法律的に誤りです。299番で解説したとおり、営業社員も労基法上の労働者であり、時間外・休日・深夜労働に対する残業代の支払義務があります。「営業手当」という名目の手当を支払っているという事実だけでは、残業代の支払義務を消滅させることはできません。
02営業手当が残業代として認められる場合——不足分の追加支払で足りる
営業手当の支払により残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払がなされていると認めてもらえる場合は、当該金額で不足する残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を追加で支払えば足りることになります。
ただし、これは298番で解説したとおり、営業手当の中で通常の賃金部分と残業代部分が判別できるよう金額を明示している場合に限られます。判別できない場合は、残業代として認めてもらえる可能性が低くなります。
例:「営業手当5万円(うち時間外割増賃金分3万円)」が残業代として認められ、実際に必要な残業代の総額が4万5000円の場合
→ 既払残業代(3万円)を超える不足額(4万5000円-3万円=1万5000円)を追加支払
→ 「営業手当3万円は残業代に充当済み」として処理
03営業手当が残業代として認められない場合——最も危険なリスク
営業手当の支払を残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払と認めてもらえない場合は、営業手当も残業代(割増賃金)算定の基礎賃金に加えた上で残業代(割増賃金)を算定し、その全額を支払う必要があります。
これが「営業手当」名目での残業代支払の最も危険なリスクです。営業手当が残業代と認められないことで、次の04節で解説するとおり、残業代の計算基礎が上がり、支払総額が大幅に増加することになります。
営業手当が残業代として認められない場合の最悪のシナリオ
「営業手当月5万円を支払っているから残業代は不要」という運用を続けた営業社員が退職後に未払残業代請求を申し立てた場合:
①「営業手当5万円は残業代とは認定できない」と判断される
②「営業手当5万円」も基礎賃金に含まれる→時間単価が上昇する
③上昇した時間単価を基に過去3年分の残業代が計算される(元本増大)
④未払残業代の元本に加えて、退職後の遅延損害金(年14.6%・276番参照)と付加金(278番参照)が加算される
⑤「営業手当を払っていた」という事実は抗弁として機能せず
04営業手当が基礎賃金に加算されることで残業代が増加する仕組み
営業手当が残業代として認められない場合、その「営業手当」は通常の賃金(給与所得)として扱われることになります。残業代の時間単価は「通常の労働時間の賃金(基礎賃金)÷平均所定労働時間」で計算されますので、「営業手当」が基礎賃金に加算されると、時間単価が上昇し、結果として残業代の総額が増加することになります。
計算例——営業手当が基礎賃金に加算された場合の影響
前提:基本給25万円、営業手当5万円、月平均所定労働時間160時間、時間外労働月40時間
「営業手当が残業代として認められた場合」の時間単価:
基本給25万円÷160時間=1562円/時
時間外割増賃金単価:1562円×1.25=1953円/時
時間外割増賃金:1953円×40時間=7万8120円
「営業手当が残業代として認められず基礎賃金に加算された場合」の時間単価:
(基本給25万円+営業手当5万円)÷160時間=1875円/時
時間外割増賃金単価:1875円×1.25=2344円/時
時間外割増賃金:2344円×40時間=9万3760円(→1万5640円増加)
この差額(1万5640円)が毎月生じ、これが過去3年分(36か月)積み重なると、差額だけで約56万円になります。これに遅延損害金・付加金が加算されると、さらに大きな負担となります。
05まとめ——正しい残業代の支払方法へ
営業手当を支払っていても、残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)の支払義務はなくなりません。営業手当が残業代として認められる場合は不足分の追加支払で足りますが、認められない場合は営業手当も基礎賃金に加えた上で残業代の全額を支払う必要があります。また、基礎賃金が増加することで残業代の時間単価が上がり、支払総額がさらに増大するリスがあります。
このような事態を避けるためには、297番・298番で解説したとおり、残業代は「時間外勤務手当」等の明白な名目で、または少なくとも通常の賃金部分と残業代部分の金額を明示した上で支払うことが不可欠です。現状の運用を見直したい場合は、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。営業社員の残業代対応の見直し・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 営業手当を支払っていれば残業代を払わなくてよいですか。
A. 払わなくてよいわけではありません。営業手当を支払っていても、時間外・休日・深夜労働をさせれば残業代(時間外・休日・深夜割増賃金)を支払う必要があることに変わりありません。「営業手当を払っているから残業代は不要」という考えは法律的に誤りです。
Q2. 営業手当が残業代として認められる場合と認められない場合の違いは何ですか。
A. 297番・298番で解説したとおり、営業手当の支払が残業代として認められるためには、通常の賃金部分と残業代部分が判別できるよう金額が明示されていること等の要件を満たす必要があります。「営業手当○万円」とだけ定めた場合は内訳が判別できず、残業代として認められない可能性があります。
Q3. 営業手当が残業代として認められない場合、どのように残業代を計算しますか。
A. 営業手当が残業代として認められない場合、その「営業手当」は通常の賃金(基礎賃金)の一部として扱われます。そのため、基本給に加えて「営業手当」も基礎賃金に算入した上で時間単価を計算し、残業代の全額を支払う必要があります。基礎賃金が増加することで時間単価が上がり、結果として残業代の総額が大幅に増加します。
Q4. 営業手当を残業代として有効に支払うにはどうすればよいですか。
A. 最も確実なのは297番で解説したとおり「時間外勤務手当」等の明白な名目に変更することです。それでも「営業手当」等の名目を維持したい場合は、298番で解説したとおり、就業規則・給与規程において通常の賃金部分と残業代部分の金額を明示した上で、給与明細書上も内訳を明示することが最低限の対応として必要です。具体的な整備については使用者側弁護士・会社側弁護士に相談してください。
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最終更新日:2026年5月10日