労働問題301 事業場外みなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代請求のリスクが高い場合
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「業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるにもかかわらず所定労働時間労働したものとみなしている場合」は、残業代請求のリスクが高い 所定労働時間でみなしているから残業代を支払っていないが、実際には超過時間が必要な業務という矛盾があります |
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このような場合、「業務の遂行に通常必要とされる時間」(例:1日10時間・11時間)労働したものとみなされ、みなし労働時間に基づく残業代の支払を余儀なくされる 過去の未払分が一括請求されると多額の支払義務が生じます |
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自社の営業社員について「通常所定時間を超えて業務が必要かどうか」を早急に確認し、必要であれば労使協定でみなし時間を定めて適正な残業代を支払うことが重要 放置すれば時効期間(3年)分の未払残業代が積み上がるリスがあります |
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残業代請求への対応・予防については早期に使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することが不可欠 問題が表面化してからでは対処が難しくなります |
目次
01残業代請求のリスクが高い具体的な状況
事業場外労働のみなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代(割増賃金)請求のリスクが最も高いのは、「業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるにもかかわらず、所定労働時間労働したものとみなしているような場合」です。
294番・295番・296番で解説したとおり、みなし労働時間制では、所定労働時間内に通常業務が終わる場合は「所定労働時間でみなす」とされますが、通常所定時間を超えて業務が必要な場合は「業務の遂行に通常必要とされる時間でみなす」とされます(294番参照)。この区別を正確に把握せずに「所定時間でみなす」と設定したまま実際には所定時間を超えて業務が必要な状態が続いている場合、非常に大きな残業代請求リスクを抱えることになります。
02なぜリスクが高いのか——「所定時間でみなし」と「実態は超過」の矛盾
所定労働時間労働したものとみなしていますので、会社側としては当然、残業代(時間外割増賃金)を支払っていません。他方、業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるわけですから、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなされてしまいます。
「所定時間でみなし」と「実態は超過」の矛盾——リスクの構造
会社側の認識(誤り):
「みなし制を採用して所定労働時間でみなしているから、残業代は不要」
法的な判断(294番・295番参照):
「通常は所定労働時間を超えて業務が必要な場合は、所定時間ではなく『通常必要とされる時間』でみなす。したがって、所定8時間ではなく例えば10時間でみなされるため、2時間分の時間外割増賃金の支払義務がある。」
結果:
「残業代は一切支払っていないのに、3年分の残業代(元本)+遅延損害金+付加金の支払を請求される」
03「通常必要とされる時間」でみなされた場合の残業代の発生
裁判になった場合、「業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があった」という事実が認定されると、1日10時間とか11時間といった時間労働したものとみなされてしまいます。その結果、みなし労働時間に基づき算定された残業代(割増賃金)の支払を余儀なくされることになります。
試算例——通常必要とされる時間が1日10時間と認定された場合
設定:所定労働時間1日8時間、時間単価1000円、月労働日数21日、消滅時効期間3年(36か月)
月次の時間外割増賃金:1000円×1.25×(10時間-8時間)×21日=5万2500円/月
3年分(元本):5万2500円×36か月=189万円
遅延損害金・付加金を含む総支払見込み:189万円の元本に対し、遅延損害金(退職後は年14.6%)および付加金(最大同額:189万円)が加算されると、総額500万円以上に達する可能性がある
04実務上の対処方針——リスクを低減するために今すぐできること
①自社の営業社員の業務実態を確認する
まず、自社の営業社員について「通常は所定労働時間(8時間)以内に業務が終わっているのか、それとも超えているのか」を業務実態に基づいて確認することが必要です。日報・タイムレポート・業務記録等から、平均的な業務所要時間を把握してください。
②通常所定時間を超えているなら労使協定でみなし時間を定める
業務実態として通常所定時間を超えて業務が必要であることが確認できた場合は、速やかに労働者代表との間で労使協定を締結し、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」(例:1日10時間)を定め、みなし時間超過分の残業代(時間外割増賃金)を「時間外勤務手当」等の明白な名目で支払うことが必要です(296番・297番参照)。
③既存の未払残業代リスクの把握と対処
現状を改善したとしても、過去の期間(消滅時効3年以内)に既に生じている未払残業代のリスクは残ります。自主的に未払残業代を支払うか、否認して争うかも含めて、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談した上で方針を決定することが重要です。
05まとめ
事業場外みなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代請求リスクが最も高いのは、「業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるにもかかわらず、所定労働時間労働したものとみなしている場合」です。このような状況では、みなし制の適用として「通常必要とされる時間」でみなされた結果、未払残業代の元本・遅延損害金・付加金が積み重なり、多額の残業代請求を受けるリスがあります。
まずは自社の営業社員の業務実態を確認し、通常所定時間を超えて業務が必要な場合は速やかに労使協定を締結して正しいみなし時間を定め、適正な残業代を支払う体制を整えることが不可欠です。具体的な対応については、使用者側弁護士・会社側弁護士に早期に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。みなし労働時間制の見直し・営業社員の残業代対応・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. みなし労働時間制を適用している営業社員からの残業代請求リスクが高いのはどのような場合ですか。
A. 業務を遂行するために通常所定労働時間を超えて労働させる必要があるにもかかわらず、所定労働時間労働したものとみなしているような場合です。実態として所定時間を超えた業務が必要なのに、みなし制の運用上は所定時間でみなして残業代を支払っていない場合、「通常必要とされる時間でみなす」との判断を受け、多額の未払残業代請求を受けるリスがあります。
Q2. 所定労働時間でみなしているのに実際には超えている場合、どのくらいの残業代が発生しますか。
A. 通常必要とされる時間が1日10時間と認定された場合、時間単価1000円・月21日勤務の例では月5万2500円の時間外割増賃金が発生します。これが3年分(36か月)積み重なると元本だけで189万円となり、退職後は年14.6%の遅延損害金と付加金(最大同額)が加算され、総額が大幅に増加します。
Q3. このリスクを回避するにはどうすればよいですか。
A. まず自社の営業社員の業務実態を確認し、通常所定時間を超えて業務が必要であれば、労働者代表との間で労使協定を締結して「通常必要とされる時間」(例:1日10時間)を定め、みなし時間超過分の残業代を「時間外勤務手当」等の明白な名目で支払う体制を整えることが重要です。使用者側弁護士・会社側弁護士に早期に相談することをお勧めします。
Q4. 労使協定でみなし時間を定めておけばリスクを下げることができますか。
A. 業務実態に即したみなし時間を労使協定で定め、そのみなし時間に基づく残業代を適正に支払っていれば、将来の残業代請求リスクを大幅に下げることができます。ただし、労使協定で定めたみなし時間が実態より短い場合(例:実態は10時間なのに8時間と定めた場合)は、依然としてリスクが残ります。業務実態に基づいた正確なみなし時間の設定が重要です。
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最終更新日:2026年5月10日