労働問題291 「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合」とは、どのような場合のことをいいますか。
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事業場外で業務に従事していない場合には、労働時間を算定し難い場合であっても、みなし労働時間制は適用されない 事業場外での業務への従事は適用の大前提です |
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「一部」が事業場外であれば適用の余地がある——事業場外と事業場内の両方で業務に従事した場合も適用可能 ただし、事業場内での労働時間は通常どおり計算する必要があります |
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「事業場」の範囲は、就業規則・労使協定の「事業場」とは必ずしも一致せず、使用者の具体的な指揮監督の困難性の程度により決定される 形式的な事業場の単位ではなく、実質的な指揮監督の可能性で判断されます |
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「業務」には恒常的な業務のみならず、出張等の臨時的業務も含まれる 出張中の業務でも、要件②「労働時間を算定し難いとき」を満たせばみなし労働時間制が適用される可能性があります |
目次
01「事業場外で業務に従事した場合」の基本的な意味
事業場外労働のみなし労働時間制(労基法38条の2)は、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合」を適用の前提としています(290番参照)。
事業場外労働のみなし労働時間制は、事業場外で業務に従事した場合の制度ですので、事業場外での業務に従事していない場合には、労働時間を算定し難い場合であっても、事業場外労働のみなし労働時間制の適用はありません。
例えば、労働者が常に事業場内(会社のオフィス内)で業務を行っている場合は、事業場外での業務に従事していませんので、たとえ使用者が詳細な労働時間を把握していないとしても、みなし労働時間制の適用はありません。
02「一部」が事業場外の場合——事業場内外の混在
もっとも、労働者が労働時間の「一部」について事業場外で業務に従事した場合にも適用がありますので、労働者が事業場外と事業場内の両方で業務に従事した場合も、事業場外労働のみなし労働時間制が適用される可能性があります。
労働者が午前中は事業場内で業務を行い、午後から事業場外で外回り営業を行う場合、「労働時間の一部について事業場外で業務に従事した」こととなり、要件①は満たされます。
ただし、この場合、みなし労働時間制が適用されるのは事業場外での業務部分のみです。事業場内での午前中の業務については、通常どおり実際の労働時間を計算する必要があります。
なお、「一部」が事業場外であっても、要件②「労働時間を算定し難いとき」(290番参照)を満たさない限りは、みなし労働時間制は適用されません。事業場内での業務時間と事業場外での業務時間の両方が把握できる場合は、みなし労働時間制の適用が否定されることがあります。
03「事業場」の範囲——指揮監督の困難性で判断
「事業場」の範囲は、使用者の具体的な指揮監督の困難性の程度により決定されるものであり、就業規則の制定単位や労使協定の締結単位である「事業場」とは必ずしも一致しません。
労基法上の「事業場」は、通常は一つの工場・事業所・店舗等の組織的な単位を指しますが、みなし労働時間制における「事業場」の範囲は、これと異なり、「使用者がその場所で労働者を具体的に指揮監督することができるかどうか」という実質的な観点から判断されます。
したがって、就業規則・労使協定において「事業場外労働のみなし労働時間制を採用する」と定めていても、実際の業務が行われる場所が「事業場外」の要件を満たすかどうかは、その場所における使用者の指揮監督の困難性という実質的な観点から個別に判断されることになります。
04「業務」の範囲——恒常的業務と出張等の臨時的業務
「業務」には、恒常的な業務のみならず、出張等の臨時的業務も含まれます。
例えば、通常は事業場内で業務を行っている労働者でも、出張先で業務を行う場合には「事業場外で業務に従事した場合」に当たります。出張先での業務が要件②「労働時間を算定し難いとき」(290番参照)を満たすかどうかについては、269番で解説した出張の移動時間の問題と同様に、業務の性質や使用者の指揮命令の有無・程度によって判断されます。
恒常的な業務の例:外回り営業職・訪問介護・配達業務・取材記者等、日常的に事業場外で業務を行う職種
臨時的な業務の例:出張先での業務・展示会・顧客訪問・現場調査・社外研修等、通常は事業場内で業務を行う労働者が一時的に事業場外で行う業務
いずれの場合も、「業務」の要件を満たすかどうかとは別に、要件②「労働時間を算定し難いとき」を満たすかどうかが重要な問題となります。
05まとめ
「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合」については、以下のとおり整理することができます。
事業場外での業務に従事していない場合は、労働時間を算定し難い場合であってもみなし労働時間制の適用はありません。「一部」が事業場外であれば適用の余地がありますが、事業場内での労働時間は通常どおり計算する必要があります。「事業場」の範囲は、使用者の指揮監督の困難性の程度という実質的な観点から判断され、就業規則・労使協定上の「事業場」と必ずしも一致しません。また、「業務」には恒常的な業務のみならず出張等の臨時的業務も含まれます。
みなし労働時間制の適用可否の判断は、実態に応じた個別の判断が必要ですので、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。みなし労働時間制の要件確認・就業規則の整備・残業代トラブルの予防でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 「事業場外で業務に従事した場合」とはどのような場合ですか。
A. 使用者が管理する事業場の外(顧客先・公道上・在宅等)で業務を行った場合をいいます。「事業場外」かどうかは、就業規則・労使協定上の「事業場」の単位ではなく、使用者がその場所で労働者を具体的に指揮監督することができるかどうかという実質的な観点から判断されます。
Q2. 午前中は事業場内で働き、午後から外回りをした場合もみなし労働時間制が適用されますか。
A. 「労働時間の一部」が事業場外であれば、要件①は満たされる可能性があります。ただし、この場合も要件②「労働時間を算定し難いとき」を満たす必要があります。また、みなし労働時間制が適用されるのは事業場外での業務部分に限られ、事業場内での業務時間は通常どおり計算します。
Q3. 「事業場」の範囲はどのように決まりますか。
A. 使用者の具体的な指揮監督の困難性の程度により決定され、就業規則の制定単位や労使協定の締結単位である「事業場」とは必ずしも一致しません。形式的に就業規則上の事業場の外であっても、使用者が具体的に指揮監督できる状況にある場合は「事業場外」とならない可能性があります。
Q4. 出張中の業務にもみなし労働時間制が適用されますか。
A. 「業務」には恒常的な業務のみならず出張等の臨時的業務も含まれますので、出張中の業務も要件①の「事業場外で業務に従事した場合」に該当し得ます。ただし、要件②「労働時間を算定し難いとき」を満たすかどうかは、出張先での業務の性質や使用者の指揮命令の有無・程度によって個別に判断されます。
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最終更新日:2026年5月10日