労働問題247 就業時間外に行われる研修、講習、自主活動等の時間について、残業代を支払う必要があるかどうかは、どのような基準で判断すればいいのですか。
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就業規則・労働契約で残業代支払いを定めている場合は、当然支払い義務がある 就業規則等で「研修時間に賃金を支払う」と定めている場合は、その定めに従って支払う必要があります |
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そのような定めがない場合でも、研修等の時間が労基法上の労働時間に該当すれば残業代支払い義務がある 1日8時間・週40時間を超える部分については割増賃金(残業代)を支払う必要があります(労基法37条1項) |
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研修等が労基法上の労働時間に該当するかどうかは「実質的に出席の強制があるか否か」で判断する 就業規則上の制裁等の不利益の有無、業務との関連性の強さ、不参加による業務への具体的支障の有無が判断要素となります |
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「自主的な参加」という形式だけでは労働時間性を否定できない場合がある 形式上は任意参加であっても、実質的に参加を強制する雰囲気や慣行がある場合は労働時間と評価されるリスがあります |
目次
01就業規則・労働契約で定めがある場合——当然の支払い義務
まず、就業規則や労働契約において、就業時間外に行われる研修・講習・自主活動等の時間について残業代を支払う旨定められているなどして、残業代を支払うことが労働契約の内容となっている場合には、当然、残業代を支払う必要があります。
この場合は、研修等の時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかという判断とは別に、契約上の義務として残業代を支払わなければなりません。就業規則や労働契約の定めが存在する以上、その内容に従うことが法的義務となります。会社経営者としては、就業規則等にどのような定めがあるかを正確に把握しておくことが重要です。
02労基法上の労働時間に該当する場合——残業代支払いの基本ルール
就業規則等に定めがない場合であっても、就業時間外に行われる研修・講習・自主活動等の時間が労基法上の労働時間に該当する場合には、1日8時間・週40時間(特例措置対象事業場では週44時間)を超える労働時間については、残業代(時間外割増賃金)を支払う必要があります(労基法37条1項)。
つまり、就業規則等に定めがない場合の残業代支払い義務の有無は、その研修等の時間が労基法上の「労働時間」に該当するかどうかという問題に帰着します。
03研修等が労働時間に該当するかどうかの判断基準
研修等の時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかの判断基準については、「労働者が使用者の実施する教育・研修に参加する時間を労働時間とみるべきか否かについては、就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無や、教育・研修の内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生ずるか否か等の観点から、実質的にみて出席の強制があるか否かにより判断すべきものである」(厚生労働省労働基準局編集『平成22年版 労働基準法 上』)と考えるのが一般的です。
すなわち、「実質的に出席の強制があるか否か」が判断の中核となります。この実質的強制性の有無は、以下の3つの観点から総合的に判断されます。
① 就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無
研修等に参加しなかった場合に懲戒処分・人事評価の不利益など、就業規則上の制裁が科される可能性がある場合は、実質的に出席を強制されているものと評価されやすくなります。「参加は任意」と口頭で説明していても、不参加が不利益につながる場合は形式的な任意性は意味を持ちません。
② 教育・研修の内容と業務との関連性の強さ
研修等の内容が業務遂行に直接必要なスキルや知識の習得を目的とするものであり、業務との関連性が強い場合は、実質的な強制性が認められやすくなります。逆に、業務とほとんど関係のない自己啓発的な内容であれば、強制性は認められにくくなります。
③ 参加しないことにより本人の業務に具体的な支障が生じるか否か
研修等に参加しなければ業務上必要な資格が取得できない、必要な知識が得られず担当業務を継続できないなど、不参加により業務に具体的な支障が生じる場合は、実質的な強制性が強く認められます。
04実務上の判断ポイントと会社側の注意事項
「任意参加」と言っても安心できないケース
「参加しなければ評価が下がる」という慣行がある場合
形式上は任意参加であっても、不参加者が実際に人事評価で不利益を受けているような場合は、実質的に出席を強制されていると評価されるリスがあります。
上司や会社全体として参加が当然視されている場合
「みんな参加しているから」「断りにくい雰囲気がある」という状況も、実質的な強制と評価される可能性があります。形式的な「任意性」だけでは労働時間性を否定できない場合があります。
会社経営者としては、研修等の時間が労働時間に該当するかどうか曖昧なまま放置することは避けるべきです。特に定期的に実施する研修については、事前に労働時間への該当性を確認し、就業規則への明記・賃金支払いの設計を行っておくことが重要です。判断が難しいケースについては、使用者側弁護士・会社側弁護士に相談することをお勧めします。
05まとめ
就業時間外の研修・講習・自主活動等への残業代支払い義務は、2段階で判断します。第一に、就業規則・労働契約に支払いの定めがある場合は契約上の義務として当然支払いが必要です。第二に、そのような定めがない場合は、当該時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかを「実質的に出席の強制があるか否か」という観点から判断します。
この判断には、①就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無、②業務との関連性の強さ、③不参加による業務への具体的支障の有無——の3つの観点が重要な要素となります。形式上「任意参加」としていても、実態として参加を強いられているような状況があれば労働時間と評価されるリスがある点に、会社経営者として十分注意する必要があります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。研修・講習時間の労働時間該当性・残業代トラブルの予防・就業規則の整備でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 就業時間外に行われる研修に残業代を支払う必要がありますか。
A. 2つの観点から判断します。①就業規則・労働契約に支払いの定めがある場合は当然支払い義務があります。②定めがない場合は、その研修時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかを「実質的に出席の強制があるか否か」で判断します。該当する場合は8時間・40時間を超えた部分について割増賃金を支払う必要があります。
Q2. 研修が「労働時間」に該当するかどうかの判断基準は何ですか。
A. 「実質的に出席の強制があるか否か」が判断の中核です。具体的には、①就業規則上の制裁等の不利益な取扱いの有無、②研修の内容と業務との関連性の強さ、③不参加により業務に具体的な支障が生じるか否か——の3点を総合的に考慮して判断します(厚生労働省労働基準局編集『平成22年版 労働基準法 上』)。
Q3. 「任意参加」と案内すれば残業代を支払わなくてよいですか。
A. 形式的な「任意参加」という案内だけでは残業代支払い義務を免れることはできません。参加しない場合に不利益があったり、参加が当然視される職場の雰囲気がある場合は、実質的に出席を強制されていると評価されるリスがあります。実態として任意性が確保されているかどうかが重要です。
Q4. 就業規則に研修中の賃金について規定がない場合はどうなりますか。
A. 就業規則に定めがない場合は、その研修時間が労基法上の労働時間に該当するかどうかという判断に委ねられます。判断が曖昧なままであると後に残業代請求トラブルに発展するリスがあります。定期的に実施する研修については、事前に労働時間への該当性を確認し、就業規則への明記と賃金支払い設計を行っておくことをお勧めします。
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最終更新日:2026年5月10日