労働問題241 残業代(割増賃金)請求との関係で、使用者が労働時間を把握することには、どのような意味がありますか。

 近年では、労働者の労働時間を管理する義務は使用者にある(平成1346日基発339号「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」)のだから、それを使用者が怠った場合の負担を労働者に課すのは相当でなく、使用者が負担すべきであるという発想が強くなってきています。
 また、労働者の労働時間管理を怠っていた結果、水増しされた残業時間が記載された証拠を根拠として残業代請求がなされ、使用者が労働時間管理を怠っていなければ計算できたはずの本来の残業代よりも高額の残業代の支払が命じられるリスクもあります。
 労働時間を把握した記録がないと、訴訟で手間暇かけて反証活動をしても、思ったほど功を奏しないことがありますが、労働時間を把握するための記録がある場合には、単にそれを証拠として提出すればいいだけなのですから、反証活動の手間暇がかかりませんし、しかも客観的証拠による反証は認められやすい傾向にあります。
 残業代(割増賃金)請求との関係では、使用者が社員の労働時間を把握することにより、社員から水増しした時間外労働・休日・深夜労働時間を主張されないようにするとともに、訴訟における反証活動を容易にし、使用者が負担する割増賃金の上限を画することができることになります。
 今や、タイムカード等の記録は、水増しされた労働時間に基づき残業代が請求されるのを防ぐための証拠でもあるのです。

 

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