労働問題220 時間単価1,500円の正社員の残業代計算方法|月60時間超50%割増・時効3年改正も解説|会社側弁護士が解説

残業代(割増賃金)の計算方法

この記事の要点

時間単価1,500円の場合、法定時間外(月60時間以内)の割増賃金は1,875円

割増率25%を乗じた金額が1時間あたりの割増賃金。深夜・休日はさらに加算される

月60時間超の割増率は50%——2023年4月から中小企業にも適用

かつて大企業のみだった50%割増が中小企業にも適用。月60時間超は時間単価2,250円となる

残業代の時効は2020年改正で原則5年・当分の間3年に延長

改正前の2年から延長。退職者からの請求可能期間が拡大したことで、未払い請求の総額が大幅に増える

時間外労働には上限規制あり——違反すれば罰則の対象

2019年施行の上限規制により月45時間・年360時間が原則上限。特別条項があっても年720時間・月100時間未満

01割増賃金の基本と計算式

労働基準法第37条は、使用者が法定労働時間を超えて労働させた場合に、通常の賃金に割増率を乗じた割増賃金(残業代)を支払うことを義務付けています。時間単価が1,500円の正社員に残業させた場合、各類型の割増賃金は以下のとおりです。

法定時間外労働(月60時間以内)1,500円 × 1.25 = 1,875円
法定時間外労働(月60時間超)1,500円 × 1.50 = 2,250円 ※2023年4月から中小企業も適用
法定休日労働1,500円 × 1.35 = 2,025円
深夜労働(午後10時〜午前5時)1,500円 × 0.25 = 375円を上乗せ
法定時間外+深夜(月60時間以内)1,500円 × 1.50 = 2,250円
法定休日労働+深夜1,500円 × 1.60 = 2,400円

なお、所定労働時間内の残業(法内残業)については、別途就業規則や労働協約で割増賃金の支払いを定めていない限り、25%の割増義務は生じません。ただし、会社が自主的に割増賃金を支払っている場合はその運用が継続されます。

02月60時間超の50%割増——中小企業への適用(2023年4月)

月の法定時間外労働が60時間を超えた場合、超えた時間分については割増率が50%以上に引き上げられます(労働基準法第37条第1項ただし書き)。かつてこの規定は大企業のみに適用されていましたが、2023年4月1日から中小企業にも適用されています。

月60時間を超える残業が常態化している部署がある会社は、賃金計算を早急に見直す必要があります。従来通り25%で計算し続けていると、退職後に差額分を請求されるリスクがあります。

経営者が見落としやすいポイント

「うちは月60時間超はない」と思っていても、退職者が過去の実態を主張するケースがあります。タイムカードや業務日報に長時間の記録が残っていれば、会社側の反論は困難です。賃金計算の見直しと同時に、労働時間管理の記録整備も必要です。

03深夜・休日労働が重複する場合の計算

法定時間外労働と深夜労働が重複する場合(例:22時以降の残業)、それぞれの割増率を合算します。時間外25%+深夜25%=50%となり、時間単価1,500円の場合は2,250円が1時間あたりの支払額です。

法定休日労働と深夜労働が重複する場合は、休日35%+深夜25%=60%となります。時間単価1,500円の場合、1時間あたり2,400円となります。

なお、法定休日に労働させた場合の残業代計算では、法定時間外割増と休日割増の重複適用はありません(どちらか高い方の35%が適用される扱いです)。深夜のみ別途加算されます。

04残業代請求の時効——2020年改正で3年に延長

賃金請求権の消滅時効は、2020年4月1日施行の労働基準法改正により、原則5年・当分の間3年に延長されました(改正前は2年)。この「当分の間3年」という経過措置は将来的に5年に延長される見込みです。

時効が2年から3年に延びたことで、退職者からの請求可能期間が1.5倍に拡大しました。月の残業代が10万円の社員であれば、2年分で240万円だった請求が3年分では360万円となります。旧来の「時効は2年」という知識で対応すると、重大な判断誤りを招きます。

さらに、未払い残業代には本体の割増賃金に加えて、付加金(裁判で命じられる場合、未払額と同額を上限)と遅延損害金(退職後は年14.6%)が上乗せされます。早期に弁護士に相談し対応方針を決めることが、会社側の経済的負担を最小化する上で重要です。

05時間外労働の上限規制と違反した場合の罰則

2019年4月(中小企業は2020年4月)から、時間外労働の上限規制が法定化されています。原則として時間外労働は月45時間・年360時間が上限です。特別条項付き36協定を締結した場合でも、年720時間・月100時間未満(休日労働含む)・2〜6ヶ月平均で月80時間以内という上限が設けられています。

これらの上限に違反した場合、会社・使用者は6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります。残業代の支払い義務と上限規制の遵守は別物であり、割増賃金を払っていても上限を超えた場合は罰則の対象になる点に注意が必要です。

なお運送業(自動車運転者)については、2024年4月から年960時間の上限規制が適用されています(いわゆる2024年問題)。業種ごとの特則についても把握しておく必要があります。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 月60時間超の50%割増は、60時間を超えた分だけに適用されますか。

A. はい。月60時間以内の時間外労働は25%、60時間を超えた部分のみ50%が適用されます。例えば月70時間の時間外労働があった場合、最初の60時間は25%、超過した10時間分のみ50%で計算します。

Q2. 残業代の時効は今でも2年ではないですか。

A. 2020年4月1日以降に支払期日が到来した賃金については、時効が原則5年・当分の間3年に延長されています。改正前の2年という知識は現在通用しません。退職者からの請求を受けた際に旧来の知識で対応すると、対応可能な時効の援用時期を誤るリスクがあります。

Q3. 法内残業(所定時間を超えるが法定時間内)にも25%の割増賃金を払う必要がありますか。

A. 法令上の義務はありません。ただし就業規則や労働契約に「所定時間外労働に割増賃金を支払う」旨の定めがある場合は、その定めに従って支払う必要があります。定めがない場合でも、法定の最低賃金を下回らない範囲であれば、通常の時間単価で支払うことが可能です。

Q4. 退職した社員から残業代を請求されました。どう対応すればよいですか。

A. 内容証明が届いた時点で、関連するタイムカード・賃金台帳・雇用契約書・就業規則を収集し、会社側専門の弁護士に速やかに相談することが最重要です。感情的に否定したり、記録を改変したりすることは厳禁です。残業時間の計算方法・固定残業代の有効性・時効の起算点などを法的に検証した上で、交渉または審判での対応方針を決めます。

最終更新日:2026年5月28日

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