労働問題173 労契法19条2号の合理的期待の判断時期と実務上の含意【会社側弁護士が解説】

 労働契約法19条2号では、更新に対する合理的期待の判断時期として「当該有期労働契約の契約期間の満了時」という要件が明示されています。この規定は従来の雇止め法理では明示されていなかったものです。

 この要件が加えられた趣旨と、それが実務上どのような含意を持つかを理解しておくことは、会社側の対応において重要です。本ページでは、労契法19条2号の「満了時」という判断時期の解釈について、会社側・使用者側専門の弁護士が解説します。

01「満了時」という要件が追加された趣旨

 労契法19条2号では、更新に対する合理的期待の判断時期として「当該有期労働契約の契約期間の満了時」という要件が明示されています。この要件が加えられた趣旨は、判断時期を明確化すること・「合理的期待の有無は最初の契約締結時から満了時までのあらゆる事情を総合的に勘案する」という判断方法を明らかにすること、とされています。

02厚生労働省通達の解釈内容

 厚生労働省通達(基発0810第2号平成24年8月10日)では、「法第19条第2号の『満了時に』は、雇止めに関する裁判例における判断と同様、『満了時』における合理的期待の有無は、最初の有期労働契約の締結時から雇止めされた有期労働契約の満了時までの間におけるあらゆる事情が総合的に勘案されることを明らかにするために規定したものであること」と説明されています。

 さらに重要な点として、「いったん、労働者が雇用継続への合理的な期待を抱いていたにもかかわらず、当該有期労働契約の契約期間の満了前に使用者が更新年数や更新回数の上限などを一方的に宣言したとしても、そのことのみをもって直ちに同号の該当性が否定されることにはならないと解されるものであること」と明示されています。

03実務上の重要な含意

 この通達の解釈は会社側にとって重要な含意を持ちます。つまり、長期間にわたって更新を繰り返し合理的期待が既に生じている状態で、突然「これ以上更新しない」と通告しても、それ以前に生じていた合理的期待が即座に消滅するわけではない、ということです。

 雇止めを計画するなら、合理的期待が生じてしまう前の段階から対策を講じることが重要です。既に長期間更新を繰り返している有期契約社員の雇止めを検討する場合は、必ず弁護士に相談した上で進め方を検討することが必要です。

SUPERVISOR
弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。有期契約社員の合理的期待・雇止め対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 「今後は更新しない」と宣言すれば合理的期待は否定されますか。

A. 厚生労働省通達によれば、合理的期待が既に生じている状態で更新しないと一方的に宣言しても、そのことのみで直ちに合理的期待が否定されるわけではありません。過去の更新実態・会社側の言動など、最初の契約締結時から満了時までのあらゆる事情が総合的に考慮されます。既に合理的期待が生じている可能性がある場合は、弁護士に相談の上で対応方針を決定することをお勧めします。

Q2. 合理的期待が生じる前に対策を講じるためには何をすべきですか。

A. 合理的期待が生じる前から、毎回きちんと契約書を作成・押印させること・「更新しない場合がある」旨を契約書に明記すること・更新を期待させる発言を慎むことが重要です。また、更新回数・期間の上限を設定することも検討に値しますが、これらの対策を実施するタイミングや方法については弁護士に相談することをお勧めします。

Q3. 既に10年以上更新を繰り返している社員を雇止めすることはできますか。

A. 10年以上の更新実績がある社員については、実質無期・合理的期待ありと評価されるリスクが高く、雇止めには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。雇止めが可能かどうか・可能であればどのような手順を踏むべきかについては、必ず事前に弁護士に相談してください。安易な雇止めは労働審判・訴訟に発展するリスクがあります。

最終更新日:2026年5月10日

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