労働問題938 法定休日をまたぐ勤務の残業代はどう考える?―2日にまたがる勤務の割増賃金の整理方法
目次
1. 法定休日をまたぐ勤務に関する基本的な考え方
法定休日を含む2日にまたがる勤務については、割増賃金の考え方を誤解しているケースが少なくありません。特に、「連続して勤務しているのだから一律に休日労働になる」といった理解は、実務上の誤りとなります。
労働基準法において、法定休日は暦日、すなわち午前0時から午後12時までの24時間で判断されます。そのため、勤務が日をまたいで連続して行われた場合であっても、法定休日に該当するかどうかは、暦日ごとに切り分けて判断する必要があります。
また、割増賃金の種類についても、時間外労働、休日労働、深夜労働はそれぞれ別の概念であり、該当する時間帯に応じて重複して発生することがあります。
2. 割増賃金の種類と判断の基準
法定休日をまたぐ勤務の割増賃金を正しく計算するためには、まず割増賃金の種類と、それぞれの判断基準を整理しておく必要があります。割増賃金は、主に「時間外労働」「休日労働」「深夜労働」の三つに区分されます。
時間外労働とは、1日8時間または週40時間を超えて行われた労働をいい、通常25%以上の割増賃金の支払いが必要となります。休日労働は、法定休日に行われた労働であり、35%以上の割増賃金が必要です。また、深夜労働は、午後10時から午前5時までの時間帯に行われた労働をいい、25%以上の割増賃金が発生します。
これらの割増賃金は、該当する要件を満たせば重複して発生します。たとえば、法定休日の深夜時間帯に労働した場合には、休日割増と深夜割増の双方を支払う必要があります。
3. 土曜日から日曜日(法定休日)にまたがる勤務の場合
まず、土曜日から日曜日(法定休日)にまたがって勤務したケースについて整理します。たとえば、土曜日の午後2時から午後10時まで勤務し、その後も勤務を継続して、日曜日の午前5時まで働いた場合を想定します。
この場合、土曜日は法定休日ではありませんので、午後2時から午後10時までの8時間は、通常の労働日の労働時間として扱われます。また、午後10時から午後12時までの2時間については、法定労働時間を超えており、かつ深夜時間帯に該当するため、時間外労働および深夜労働として、それぞれの割増賃金の支払義務が生じます。
一方、法定休日は暦日で判断されるため、日曜日の午前0時から午前5時までの時間は、休日労働時間となります。この時間帯は、深夜時間帯にも該当することから、休日割増賃金と深夜割増賃金の双方を支払う必要があります。
4. 日曜日(法定休日)から月曜日にまたがる勤務の場合
次に、日曜日(法定休日)から月曜日にまたがって勤務したケースについて整理します。たとえば、法定休日である日曜日の午後2時から午後10時まで勤務し、その後も勤務を継続して、月曜日の午前5時まで働いた場合を想定します。
この場合、法定休日は暦日で判断されるため、日曜日の午後2時から午後12時までの時間は、すべて休日労働時間となります。さらに、午後10時から午後12時までの2時間については、深夜時間帯にも該当するため、休日割増賃金に加えて深夜割増賃金の支払義務が生じます。
一方、月曜日の午前0時から午前5時までは、法定休日ではなく通常の労働日に該当します。ただし、この勤務は前日の勤務と連続しており、1日の労働時間が8時間を超えているため、時間外労働となります。また、深夜時間帯にも該当することから、時間外割増賃金と深夜割増賃金の双方を支払う必要があります。
5. 実務で混同しやすいポイント
法定休日をまたぐ勤務に関する割増賃金の計算では、実務上、いくつか混同されやすいポイントがあります。特に多いのは、「勤務が連続している以上、すべて同じ割増区分になる」と誤って整理してしまうケースです。
前述のとおり、法定休日は暦日で判断されるため、日付が変わる午前0時を境に、労働の性質は切り替わります。たとえ前日から連続して勤務していたとしても、法定休日に該当する時間帯と、通常の労働日に該当する時間帯とを分けて判断しなければなりません。
また、休日労働と時間外労働を同時に発生させてしまう誤りも見受けられます。法定休日に行われた労働は、時間外労働ではなく休日労働として整理されるため、休日割増と時間外割増を重ねて支払う必要はありません。一方で、深夜時間帯に該当する場合には、休日割増とは別に深夜割増が必要となる点には注意が必要です。
6. 会社経営者が注意すべき実務対応
法定休日を含む2日にまたがる勤務については、割増賃金の計算を誤りやすく、未払残業代請求に発展しやすい分野です。会社経営者としては、制度と運用の両面から慎重な対応が求められます。
まず、法定休日がいつなのかを就業規則や勤務カレンダー上で明確にしておくことが重要です。法定休日と所定休日を混同していると、休日労働の区分を誤り、割増賃金の計算ミスにつながります。
また、勤怠管理においては、日付をまたぐ勤務について、時間帯ごとに労働区分を切り分けて把握できる仕組みを整える必要があります。単に「何時から何時まで働いたか」だけでなく、「どの時間帯が休日・深夜・時間外に該当するのか」を正確に記録できる運用が不可欠です。
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東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日2026/2/7
