動画解説

本記事の内容は、代表弁護士 藤田進太郎が動画でも解説しています。「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)では、問題社員対応の実務を継続的に配信しています。

この記事の結論
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ごまかしが多い社員への対応は「信じる」から「事実確認する」への転換が出発点

報告を鵜呑みにして経営判断を重ねれば、誤った現状把握のまま重大な損害につながるリスクがあります。

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危険業務・管理職からの除外や配置転換を経ても改善しなければ、退職勧奨・解雇を段階的に検討する

感情ではなく、繰り返しの事実確認によって積み上げた記録が、すべての判断の土台になります。

 ごまかしが多い社員がいると、会社経営者は正確な現状把握ができなくなります。業務の進捗や結果について事実と異なる報告を受ければ、その情報を前提にした判断や指示は最初からズレたものになり、思わぬ損害を被るリスクが高まります。

 本記事では、ごまかしが多い社員への対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを解説します。

01ごまかしが多い社員がもたらす経営リスクと、「事実確認」への転換

 現状把握が誤っている状態では、適切な指示や軌道修正ができず、思わぬ損害を被るリスクが高まります。小さなごまかしの積み重ねが、取引先とのトラブルや業務上の重大なミスにつながるケースも珍しくありません。特に問題なのは、ごまかしが習慣化し「この人の言うことはそのまま信じてはいけない」という状態になってしまうケースで、会社としての管理コストは一気に跳ね上がります。

 ごまかしが多い社員への対応で、会社経営者がまず切り替えるべき発想は、「信じる」から「事実確認する」への転換です。一度でもごまかしが発覚している以上、その言葉を前提に経営判断を行うこと自体が、リスクの高い行為になります。「性善説で任せている」という考え方自体は否定されるものではありませんが、ごまかしが多いと分かっている社員に対してまでその姿勢を貫くことは、管理を放棄しているのと同じ評価を受けかねません。事実確認を徹底することは、疑ってかかる冷たい対応ではなく、会社を守るための当然の業務であるという認識を持つことが重要です。

02事実確認の実務|繰り返し質問と会議室面談

 ごまかしが多い社員に対して最も基本となる対応は、繰り返し質問して事実を確認することです。一度説明を受けたからといってその内容を前提に話を進めてしまうのは危険であり、「本当にそうなのか」「具体的にはどういう状況なのか」を角度を変えて重ねて確認する必要があります。「しつこく問い詰める」ことと「必要な事実確認をする」ことは違うという点を意識し、穏やかで丁寧な言葉を使いながら、矛盾点や不明確な部分を淡々と確認していくことが重要です。

 事実確認を行う際、会社経営者が特に注意すべきなのは、感情的にならないことです。感情を前面に出した質問は相手を防御的にし、かえって事実を引き出しにくくします。「ここが少し分かりにくいのですが」といった穏やかな言葉を使い、淡々と確認を続けていくと、ごまかしがある場合にはどこかで説明が苦しくなり、矛盾が表面化します。

 業務上重要な事項や損害につながりかねない内容については、会議室などで改めて面談の場を設けることが有効です。長時間に及ぶ必要はなく、5分から10分程度であっても、対面で逃げ場のない状況で説明を求められると、ごまかしは続けにくくなります。「信じるから任せる」のではなく「事実を確認したうえで判断する」という姿勢を一貫して示すことが重要です。

03事実確認を怠った場合のリスクと、注意指導・懲戒処分の検討

 ごまかしが多い社員に対して十分な事実確認を行わず、「信じて任せた」という姿勢を取り続けた場合、そのリスクは最終的に会社側が負うことになります。「なぜその時に確認しなかったのか」と後から問われた場合、「信じていたから」という説明は責任を免れる理由にはならず、事実確認を怠っていたこと自体が管理不十分と評価される可能性があります。懲戒処分や退職勧奨を検討する局面でも、事実確認をしてこなかったことは不利に働きます。

 事実確認を重ねた結果、虚偽の説明や意図的な隠蔽が明らかになった場合には、注意指導や懲戒処分を検討する段階に入ります。注意指導を行う際には、「何が事実として確認されたのか」「どの点が問題なのか」を具体的に示すことが重要で、抽象的に「ごまかすな」と伝えるだけでは改善につながりません。懲戒処分についても、事実確認が不十分なまま重い処分を選択すると紛争へ発展するリスクが高まるため、「これまでどのような確認を行い、その結果どう判断したのか」を説明できる状態を作ってから、段階的に処分を検討することが不可欠です。

04危険業務・管理職からの除外と配置転換

 ごまかしが多い社員について特に注意しなければならないのは、生命・身体に危険が及ぶ業務や、失敗した場合に会社へ重大な損害が生じる業務に従事させ続けてよいのかという点です。工事現場や危険物を扱う業務、金額が大きい取引などでは、「実はできていなかった」というごまかしは致命的であり、他の社員が管理・確認する体制を整えるか、業務そのものから外す決断が必要です。

 管理職や重要ポジションとしての適性についても、慎重に見極める必要があります。管理職は正確な情報をもとに判断する役割を担うため、事実を歪めたり不都合な点を隠したりする傾向がある場合、経営判断そのものを誤らせるリスクが高くなります。能力や経験があるからといって、ごまかし癖のある社員を重要ポジションに据え続けることが適切なのかを冷静に考え、管理職から外す、権限を限定するといった判断も検討してください。

 注意指導や事実確認を続けても改善が見られない場合、配置転換も現実的な選択肢です。正確性が強く求められる業務では致命的になる一方、上位者の指示のもとで動く補助的な業務や、結果を第三者が確認できる業務であれば、管理体制を整えることでリスクを抑えられる場合もあります。社内に適切な受け皿がない場合には、無理に業務を作ったり重要度の高い仕事を任せ続けたりせず、次の段階の対応を検討する現実を受け止める必要があります。

05退職勧奨・解雇を検討すべき局面

 社内での配置転換も難しく、ごまかし行為について注意指導や懲戒処分を重ねても改善が見られない場合、会社経営者としては退職勧奨や解雇を検討せざるを得ない局面に入ります。退職勧奨については、あくまで本人の合意を前提とするものであり、強要や圧力と受け取られる進め方は避けなければなりません。これまでに確認した事実、ごまかしが業務や会社に与えた影響、なぜ配置転換では対応できなかったのかを整理したうえで、冷静に説明する必要があります。

 解雇については、さらに高いハードルがあり、客観的で合理的な理由と社会的相当性が求められます。単なる不信感だけでは足りず、具体的なごまかしの事実、指導の経過、改善の見込みがないことを示す必要があります。まず行うべきは繰り返しの事実確認であり、それでも改善が見込めず社内で安全に任せられる業務がないと判断した場合には、退職勧奨や解雇に進むことも会社経営者の責任です。この段階に進む場合には、必ず事前に弁護士へ相談してください。

06よくある質問(FAQ)

Q. 社員の「ごまかし」を理由に解雇することは可能ですか。

一度のごまかしですぐに解雇することは困難ですが、重要な事項についての虚偽報告が繰り返され、注意指導を重ねても改善が見られない場合、客観的合理的な理由があるとして解雇が認められる可能性があります。事前の証拠(事実確認の記録)が重要です。

Q. ごまかし癖のある社員を管理職から降格させても問題ありませんか。

管理職には正確な報告と判断が求められるため、ごまかしによって経営判断に支障をきたす場合は、適格性欠如を理由とした降格が検討可能です。就業規則の規定を確認し、指導経過を記録しておく必要があります。

Q. 事実確認のために会議室に呼ぶ際、パワハラと言われないコツは。

感情的に怒鳴るのではなく、「事実を正確に把握するため」という目的を伝え、穏やかかつ淡々と質問を重ねることがポイントです。矛盾点を指摘する場合も事実に基づき、人格否定を避けることでリスクを抑えられます。

経営上のポイント ごまかしが多い社員への対応は「信じる」から「事実確認する」への転換が出発点です。感情的にならず淡々と質問を重ね、必要に応じて会議室での面談で事実を積み上げてください。危険業務や管理職からは早めに除外し、配置転換を検討しても改善しなければ、退職勧奨・解雇を段階的に検討します。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。虚偽報告・信頼関係が崩れた社員への対応でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月7日


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