動画解説

本記事の内容は、代表弁護士 藤田進太郎が動画でも解説しています。「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)では、問題社員対応の実務を継続的に配信しています。

この記事の結論
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知ったかぶりをする社員の多くは「知らないことを知らない」状態にあり、一方的な説明では改善しない

「知っているなら説明してもらう」という対処法によって、本人の理解度が自然に表面化します。

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教育やトレーニングを尽くしても改善しなければ配置転換を検討し、それも難しければ退職勧奨・解雇を段階的に検討する

業務とのミスマッチが背景にあることも多く、感情論ではなく能力・適性の観点で冷静に整理することが重要です。

 仕事ができないにもかかわらず知ったかぶりをする社員がいると、会社経営者としては非常に扱いづらさを感じるものです。本人は理解しているつもりでいるため指示を出しても修正が効かず、教育や指導のスタート地点も見えにくいという問題があります。

 本記事では、知ったかぶりをする社員への対応について、会社経営者がどのような順序で判断すべきかを整理します。

01知ったかぶりをする社員が会社にもたらす問題

 仕事ができないにもかかわらず知ったかぶりをする社員の多くは、「分かっていない」という自覚そのものが欠けている、いわゆる「知らないことを知らない」状態にあります。本人の中では理解できていない部分が問題として認識されていないため、指示を出しても修正が効かず、同じミスを繰り返す傾向が強くなります。

 この状態が厄介なのは、本人に学ぼうとする動機が生まれにくい点です。分からないと自覚していなければ質問も復習もせず、同じ説明を何度受けても改善しません。会社経営者としては、この状態を「やる気がない」「態度が悪い」と短絡的に評価してしまうことに注意が必要です。実際には能力や適性の問題が背景にあり、本人なりに精一杯やっているケースも少なくありません。

 まずは、本人がどこまで理解していて、どこから理解できていないのかを可視化することが対応の第一歩です。その前提を欠いたままでは、どれだけ指導しても効果が上がらず、時間と労力だけが消費されてしまいます。

02指導方法の工夫|記録化の限界と「説明させる」対処法

 知ったかぶりをする社員への対応として、メールやチャットで指示内容を記録に残す方法を取る会社経営者も少なくありません。何度説明しても同じミスを繰り返す場合、記録を残しておくこと自体は経緯を振り返るうえで意味がありますが、記録化だけに頼った指導は教育効果が低くなりがちです。本人から「証拠集めをされている」と受け取られ、改善に向けた前向きな姿勢を引き出せない場合があります。記録化はあくまで補助的な手段と位置付け、対面での丁寧な指導や確認を重ねることが重要です。

 より有効な方法の一つが、「知っているのであれば説明してもらう」という対応です。会社経営者が一方的に説明を重ねるのではなく、本人に理解している内容を言葉にしてもらうことで、実際の理解度が明確になります。本当に仕事として使えるレベルで理解しているのであれば、他人に説明できるはずです。説明が曖昧になったり要点を外したりする場合には、本人が十分に理解できていないことが自然に表面化します。この方法は、「分かっていない」と直接指摘するよりも本人に気付かせやすく、感情的な対立を避けやすいという利点もあります。

03知識不足かトレーニング不足かの見極め

 知ったかぶりをする社員が仕事をできない理由は、必ずしも「知識が足りない」ことだけとは限りません。一定の知識は頭に入っているものの、それを実際の業務で使いこなすためのトレーニングが不足しているケースも多く見られます。会社経営者としては、この二つを切り分けて考える視点が重要です。

 知識不足であれば、説明や資料の提供によって改善が見込めます。しかし、知ってはいるものの実行できない場合には、説明を繰り返すだけでは成果につながりません。実際の業務を想定した練習や、手本を見せながらの反復など、身体で覚えさせるトレーニングが必要になります。単に「分かっているはずだ」と決めつけるのではなく、知識と実行力のどこに問題があるのかを見極めたうえで対応することが、現実的で効果的な判断につながります。

04教育を尽くしても改善しない場合の配置転換

 説明を工夫し、トレーニングも行っているにもかかわらず、いつまで経っても改善が見られないケースは現実に存在します。重要なのは、一定期間・一定水準の教育指導を行ったかどうかです。場当たり的ではなく、内容を整理し理解度を確認しながら指導してもなお成果が出ないのであれば、それは能力や適性の問題である可能性が高くなります。

 この段階で会社経営者として検討すべき選択肢の一つが配置転換です。現在の業務では力を発揮できていなくても、別の業務に就かせることで状況が大きく好転するケースは決して珍しくありません。今の仕事が合っていないだけで「使えない社員」と評価してしまうのは早計であり、知ったかぶりをしてしまう背景に業務とのミスマッチがある場合も少なくありません。

 配置転換を検討しても社内に適職が見当たらない場合、会社経営者としては「何とか今の仕事を続けさせる」ことだけに固執すべきではありません。無理に合わない業務を続けさせることは、周囲の社員の負担増と本人の精神的負担の蓄積を招き、健全な雇用関係とは言えません。会社の中で活かすことが難しいという現実を踏まえ、本人の今後のキャリアも含めて整理する視点が必要になります。

05退職勧奨・解雇を検討する際の注意点

 社内での配置転換も難しく、教育やトレーニングによる改善も見込めない場合、会社経営者としては退職勧奨や解雇といった選択肢を検討せざるを得ない局面に入ります。ただし、ここから先の対応は感覚や勢いで進めてよいものではありません。

 退職勧奨は、あくまで「合意による退職」を目指すものであり、強要や圧力と受け取られる言動は避ける必要があります。条件の提示や説明の仕方によっては、後からトラブルに発展することもあるため、慎重な進め方が求められます。解雇については、さらにハードルが高く、客観的で合理的な理由と社会的相当性が必要になります。本採用後の解雇は簡単ではなく、試用期間中の本採用拒否であっても一定の合理性が求められる点は変わりません。

 重要なのは、どの段階でも「やるべきことをやった」と説明できる対応を積み重ねておくことです。知ったかぶりをする社員の問題は、本人の人格だけに原因があるとは限らず、業務とのミスマッチや能力不足が背景にあることも多いため、この段階に進む場合には必ず事前に弁護士へ相談し、手続や証拠関係を整理したうえで進めることをお勧めします。

06よくある質問(FAQ)

Q. 知ったかぶりをする社員には、まずどう対応すればよいですか。

一方的に説明するのではなく、「知っているなら説明してもらう」方法が有効です。本人に理解度を言葉にしてもらうことで、実際に理解できているかが自然に明らかになります。

Q. 教育を尽くしても改善しない場合、何を検討すべきですか。

業務とのミスマッチを疑い、配置転換を検討する段階です。今の仕事で力を発揮できなくても、別の業務であれば適性が活きるケースは少なくありません。

Q. 配置転換も難しい場合はどうすればよいですか。

無理に今の仕事を続けさせることに固執せず、退職勧奨を含めた話し合いを検討します。ただし合意による解決を目指すものであり、強要と受け取られる進め方は避けてください。

Q. 解雇を検討する場合、注意すべき点はありますか。

客観的で合理的な理由と社会的相当性が必要であり、本採用後の解雇や試用期間中の本採用拒否でも一定の合理性が求められます。必ず事前に弁護士へ相談してください。

経営上のポイント 知ったかぶりをする社員の多くは「知らないことを知らない」状態にあり、一方的な説明では改善しません。「知っているなら説明させる」対処法で理解度を可視化し、知識不足かトレーニング不足かを見極めてください。教育を尽くしても改善しない場合は配置転換を、それも難しければ退職勧奨・解雇を段階的に検討します。感情論ではなく能力・適性の観点で冷静に整理し、具体的な事情に応じて実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。能力不足の社員への対応・配置転換の進め方でお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月7日


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