わがままを大目に見ていたら指示に従わなくなった。
動画解説
この記事の要点
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対応のスタートは、社長の決意 辞められても対応するという覚悟がないと、機嫌を損ねられず相手のペースになる。誰の会社か分からなくなる前に決める |
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大目に見てきたため、いきなり重い処分はできない 社長自ら容認して秩序を崩している。守るべき秩序がない状態では、同じことをしても同じ処分はできない |
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まず「今後はこうはいかない」と警告し、秩序を回復する 面談で事実をベースに伝える。その上で従わなければ、厳重注意・懲戒処分へと段階を踏む |
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根本の予防は、公平・平等な取扱い わがままを聞くほど管理の難易度は上がる。特別扱いは最小限にし、可能なら全員を公平に扱う |
目次
1. 仕事のできる社員のわがままという悩み
仕事のできる方は、自分の思い通りにやりたがるものです。仕事の進め方だけで、それが会社の方針に沿っているのであれば問題はありません。しかし、そうした方は、単に裁量の範囲内で好きにやるだけでなく、特別な取扱いを求めてきたり、十分なすり合わせもなく会社の方針と大幅に違うやり方を始めたりすることがあります。
仕事のできない方であれば、厳しく注意して「辞めるぞ」と脅されても「こちらは構いません」と言えますが、ものすごく仕事ができる方だと、辞められると困ります。そこで、本当はダメなのにわがままを聞いてあげて、その後で痛い目に合い、手を焼いている社長は本当に多いのです。ほどほどで済めばよいのですが、許容限度を超えて特別扱いを要求し、増長して、社長が何か言っても聞く耳を持たなくなることもあります。本記事では、仕事のできる社員のわがままを大目に見ていたところ、指示に従わなくなった場合の対処法を解説します。
2. 最初に必要なのは、社長の決意
この種の社員に対応するにあたって、最初に必要になるのは決意です。この方にしっかり対応していくのだ、もう逃げないのだ、という決意です。これがないと、技術的なことを本で読んだり、セミナーで弁護士から教わったりしても役に立ちません。「この人がいなくなったらうちの会社は回らない」というのが前提にあると、機嫌を損ねられず、恐る恐る話すことになり、あくまでも相手のペースで話が進んでしまうからです。
放置すると、誰の会社か分からなくなる
エスカレートすると、社長の言うことを聞かず、逆に社長に要求してくるようになり、どちらが社長か分からなくなることがあります。本人だけならまだしも、周りの社員も、社長ではなくそのわがままな社員の言うことを聞くようになることもあります。社長が指示したのに、その社員が「そんなのじゃできませんよ」と次々にひっくり返していると、最終判断をするのは社長ではなくこの人だと見られ、社長が形だけのお飾りになってしまいます。ですから、仮にこの人が辞めて代わりを準備するのが大変でも、それでも対応していくのだ、という決意が、何よりも先に必要になります。
3. 面談で、逃げずに話し合う
決意ができたら、本人としっかり話し合います。メールや紙を渡して終わりにするのではなく、会議室に呼んで、どこがどう問題なのかを話していきます。相手は手強く、反論してくるかもしれませんが、それでも逃げずにやります。
相手の言っていることが正当であれば、その理由を説明してもらいます。仕事の進め方について合理的なことを言い出すなら、そのやり方をきっちり守ってもらえるのであれば許可すればよいのです。ただし、会社の方針と大幅に違うことは、よく議論して社長の決裁が下りてからでなければ、方針転換をしてはいけません。方針転換が必要だというのであれば、「自分を説得してみなさい」と、論理的な説明と資料を求めます。さらに、労働時間・お金・お金以外の待遇・他の社員との関係など、普通なら認めない特別な要求を認めていて、社長が容認できないほどひどくなったのであれば、止めなければなりません。「こうしなさい」と言ってその通りにやらなければ厳重注意書を渡す、ルール違反があれば厳重注意する、といったことを始めます。
4. いきなり重い処分ができない理由
ここで重要な注意点があります。通常であれば重い懲戒処分に値するような行動であっても、これまで容認してきた、大目に見てきたという経緯がある場合、いきなり重い処分はできません。守るべき秩序がないからです。社長自らが大目に見ることで秩序を崩しており、ルール違反がルール違反でなくなっているようなところがあるのです。
まず警告し、秩序を回復してから
ですので、「今後はこれを許さないから、ルール通り、会社の方針通りにやってください」と、しっかり面談で伝えます。その上でやらなかったら、厳重注意書で注意します。厳重注意書に、具体的に何がどう問題なのか事実をしっかり書き、何をどうすべきだったのかを書き込めば、その記載自体が業務命令の内容にもなります。半端に裁判例を勉強して、「これくらいやれば懲戒処分や解雇が有効になる」と同じことをやると、なぜか裁判で負けることがあります。よく見ると、勝っている会社は、割とルールをしっかり守らせている会社なのです。大目に見てきた結果、言うことを聞かなくなったケースでは、同じことをやっても同じ処分はできません。まず警告を発し、今までのようにはいかないと伝えた上で、注意・厳重注意・懲戒処分へと進む手順が必要です。もちろん、これまでと段違いにひどいことをいきなりやった場合は、ある程度重い処分もあり得ます。
5. 本人が納得できないのは、なぜか
よくある失敗は、手に負えなくなって「もう辞めてもらうしかない」と、いきなり言ってしまうことです。社長からすれば、我慢を重ねてきて、とうとう堪忍袋の緒が切れたのですが、相手はまったく違う見方をしています。「なぜいきなり。今までいいと言うからやってきたし、ダメだとも、注意もされてこなかったのに、いきなり辞めてくれとはおかしい。納得いかない」と受け止め、労働基準監督署や弁護士、労働組合に相談すると言い出すこともあります。
社長が「いいから頑張ってくれ、結果を出せばいい」などと言ってきたことが、足を引っ張ります。励ますつもりでも、相手にとっては、それが普通であり、社長の評価であり、「ここまでやっていい」というメッセージなのです。社長が容認しているから、本人の中ではルール違反ではなくなっています。こちらは我慢してわがままを聞いてあげたつもりでも、相手にとっては社長の了解を得てやっている、少なくとも問題視されずにやっているのだから、ルール違反でも何でもない。だからこそ、いきなり厳しいことを言われると納得できないのです。守るべき秩序を社長自ら崩しているので、重い処分がいきなりできません。まずは本人の納得感を得ることが大変です。「今までのやり方は特別扱いだったので、今後はそういうことはないから、ルール通りにやってください、指示に従ってください」と伝え、厳重注意などをして、それでも治らなければ懲戒処分などに進んでいきます。
なお、注意指導のやり方は通常のケースと同じで、事実がベースです。何月何日の何時頃、あなたがどのように何をやったこと、あるいはやらなかったことが、どう問題なのか。それが正当だと言うなら、その理由を具体的に説明してもらえますか。こうした対話を、穏やかな言葉で淡々と、しかし逃げずに行います。むしろ、いつも以上に事実を踏まえた対話が大事になります。相手がこちらを軽く見ていることもあり、評価的・抽象的な話では噛み合わないからです。事実をベースにすれば、議論になります。
6. 根本の予防は、公平・平等な取扱い
この問題の難易度が高い原因は、能力が高く、辞められると困るから、わがままを大目に見てきた、という経緯にあります。ですので、特別扱いやわがままの容認は、最小限にする必要があります。可能であれば、全員を公平・平等に取り扱うのがよいでしょう。従業員を公平・平等に扱っていると、トラブルの起きる確率はかなり減ります。
杓子定規に同じように扱ってもうまくいかない、個別に対応して乗り越える必要がある、という場面があるのは確かです。しかし、それは同時に業務管理のリスクを高めることに直結します。しっかり対応すれば乗り越えられますが、求められるスキルの程度が上がり、一定の難易度を超えると、対応が上手な社長でも手に負えなくなって、いきなり「辞めてもらうしかない」と言ってしまう。これがうまくいかないのです。特別扱いを最小限にしておくことが、こうした事態を防ぐ、何よりの予防になります。
7. まとめ
- 対応のスタートは、社長の決意。辞められても対応するという覚悟がないと、相手のペースになる
- 面談で、逃げずに話し合う。合理的な提案は取り入れるが、方針転換は社長の決裁が下りてから
- 大目に見てきたため、いきなり重い処分はできない。社長自ら秩序を崩している状態だから
- まず「今後はこうはいかない」と警告し、秩序を回復してから、注意・厳重注意・懲戒へ
- 本人が納得できないのは、社長の容認によりルール違反でなくなっているから。事実をベースに対話する
- 根本の予防は、公平・平等な取扱い。特別扱いは最小限にする
大目に見てきたことが裏目に出て秩序が乱れているわけですから、まず秩序を回復しないと重い処分はしにくい、というのがこの問題の本質です。大変ではありますが、ここで踏ん張らないと、一体誰の会社なのか分からなくなってしまいます。仕事のできる社員のわがままへの対応でお悩みの経営者の皆様は、ぜひ会社側専門の弁護士にご相談ください。
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. これまで大目に見てきた行動を、いきなり懲戒処分できますか。
A. いきなり重い処分をするのは難しいのが原則です。会社が長く容認してきた行動については、守るべき秩序が崩れている状態にあり、同じことをしても他社と同じ処分はできません。まずは「今後はこうはいかない、ルール通りにやってください」と明確に警告し、秩序を回復した上で、従わなければ注意・厳重注意・懲戒処分へと段階を踏むのが原則です。これまでと段違いにひどい行為をいきなりやった場合は別ですが、同程度の行為の繰り返しであれば、警告を挟む手順が必要になります。
Q2. 「辞める」と脅されると、つい要求を聞いてしまいます。どうすればよいですか。
A. 「この人がいなくなると困る」という前提があると、機嫌を損ねられず、相手のペースで話が進んでしまいます。まずは、辞められても対応していくという決意を固めることが出発点です。その上で、合理的な提案であれば取り入れ、会社の方針と大幅に違うことは社長の決裁を要件とし、待遇面の過大な要求には応じない、という線引きを明確にします。要求を無条件に飲み続けると、周りの社員まで本人の言うことを聞くようになり、かえって収拾がつかなくなります。
Q3. こうした事態を防ぐには、日頃どうすればよいですか。
A. 根本の予防は、特別扱いを最小限にし、できるだけ全員を公平・平等に取り扱うことです。従業員を公平・平等に扱っていると、トラブルの起きる確率はかなり下がります。仕事ができるからと特別扱いを重ねると、管理の難易度が上がり、ある水準を超えると手に負えなくなります。励ましの言葉のつもりでも、「結果を出せばやり方は自由」といった発言が、後に本人の中で「容認された」という前提になりがちです。日頃から、評価と待遇の基準、守ってほしいルールを明確にしておくことが、予防につながります。
最終更新日:2026年7月18日