労働問題394 パワハラ・セクハラを巡る紛争の実態は、どのようなものですか。
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公的機関への相談数は多いが、パワハラ・セクハラを主な理由とする損害賠償請求メインの訴訟・労働審判はあまり多くない。解雇無効や残業代請求等に付随して損害賠償請求がなされるケースが多い 「パワハラと言われた=高額賠償」という発想は実態と乖離しています |
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地位確認・残業代請求等に付随してパワハラ・セクハラ損害賠償請求がなされた場合、業務指導に必要のない不合理な言動でない限り棄却されやすい。認められても慰謝料は低額になりやすい 「付随的な請求」という性質が影響しています |
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紛争の実態を正確に理解することで過剰な恐怖を払拭し、冷静な初動対応が可能になる。ただし業務指導の方法・記録管理は適切に行うことが不可欠 パワハラと言われても適正な業務指導は続けることが正しい対応です |
目次
01相談数は多いが単独訴訟は少ない。紛争形態の実態
パワハラ・セクハラに不満を持ち、労働基準監督署・都道府県労働局・労働相談センター等の公的機関に相談している労働者の数は少なくありません。「パワハラ・セクハラ被害を受けた」という相談件数は年々増加しています。
しかし、実際に訴訟や労働審判にまで発展するケースの分析では、パワハラ・セクハラを理由とした損害賠償請求がメインの紛争(パワハラ・セクハラの損害賠償だけを請求する訴訟等)はあまり多くないのが実態です。
実際に多く見られるのは、解雇無効を理由とした地位確認請求・残業代請求・不当な配置転換・降格に対する請求等がメインとなり、その中に「付随する請求として」パワハラ・セクハラを理由とした損害賠償請求が加えられるというパターンです。
02「付随的な損害賠償請求」として提起されるケースが多い理由
パワハラ・セクハラの損害賠償請求が「付随的」な形で提起されるケースが多い背景には、次のような実務的理由があります。
第一に、パワハラ・セクハラ単体の損害賠償請求は、立証が難しい場合が多くなります。証拠の収集・保全が困難であること、慰謝料額が比較的低額になりやすいこと、などから単独での訴訟提起が割に合わないケースがあります。
第二に、解雇・降格・残業代請求等の主たる請求と組み合わせることで、立証できれば追加の損害賠償を得られる可能性があるため、弁護士費用の観点からも「付随させる」という形が選択されやすくなります。
第三に、パワハラ・セクハラの主張が、解雇の理由や処分の正当性を争う際に「会社の対応の不当性」を強調する手段として使われるという側面もあります。
03付随的請求の場合は棄却・低額になりやすい傾向
地位確認請求や残業代請求等に付随して、パワハラ・セクハラを理由とする損害賠償請求がなされた場合、業務指導に必要のない不合理な言動があるような場合でない限り、損害賠償請求は棄却になりやすい傾向があります。
また、仮に不法行為責任等が認められたとしても、慰謝料の金額は低額になりやすい傾向があります。これは、付随的な請求として提起されるケースでは、パワハラ・セクハラの態様が比較的軽微であったり、主たる争点ではないために詳細な認定がなされにくかったりするためです。
04この傾向が会社経営者にとって何を意味するか
以上の紛争実態から、会社経営者が持つべき認識は次のとおりです。
第一に、「パワハラと言われた=高額賠償のリスク」という発想は実態と乖離しています。業務上必要で方法が相当な指導・注意であれば、たとえパワハラと主張されても、訴訟・労働審判において損害賠償請求が棄却される可能性が高くなります。
第二に、一方で「パワハラと言われたから何もしない」という萎縮的な対応も誤りです。業務上必要な指導・注意を行わなければ、問題社員への対応が取れなくなるという別の問題が生じます。
第三に、ただし業務指導の方法・記録管理には十分注意が必要です。業務上の必要性がない言動(人格否定・感情的侮辱等)は避け、指導の内容・方法・記録を適切に残すことが、紛争時の防御力を高めます。
05パワハラ・セクハラ紛争への正しい初動対応
従業員から「パワハラだ」「セクハラだ」という申告があった場合や、外部からの相談・申立てがあった場合、会社経営者として正しい初動対応を取ることが重要です。
パワハラ・セクハラ申告への初動対応のポイント
①感情的に対応しない:「そんなことはない」「おかしい」という感情的反応は紛争を拡大させる。まず事実確認を冷静に行う
②申告者への不利益取扱いを避ける:申告・相談を理由とした不利益取扱いは違法となりうる
③事実関係の確認と記録化:申告内容・自社の指導内容・経緯を文書化して整理する
④使用者側弁護士への早期相談:初動対応を誤ると紛争が拡大するリスクがある。早い段階で法的観点からの対応方針を確定する
06まとめ
パワハラ・セクハラを巡る紛争の実態としては、公的機関への相談数は多いが、単独メインの損害賠償請求訴訟・労働審判はあまり多くありません。解雇無効・残業代請求等に付随して損害賠償請求がなされるケースが多く、この場合、業務指導に必要のない不合理な言動でない限り棄却されやすく、認められても慰謝料は低額になりやすい傾向があります。「パワハラと言われた=高額賠償」という誤解を持たず、業務上必要な指導は続けつつ、方法・記録管理を適切に行うことが会社経営者の正しい姿勢です。パワハラ・セクハラに関するトラブルへの対処については使用者側弁護士のサポートを受けることをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 「パワハラで訴える」と従業員に言われました。どう対応すればよいですか。
A. まず冷静に状況を整理することが重要です。「パワハラで訴える」という発言それ自体は、実際の訴訟提起とは異なります。自社の指導内容・方法・経緯を客観的に記録化した上で、使用者側弁護士に相談して対応方針を決定することをお勧めします。業務上必要で方法が相当な指導であれば、過度に萎縮する必要はありませんが、初動対応を誤ると紛争が拡大するリスクがあります。
Q2. パワハラを理由とした慰謝料請求が認められると、どの程度の金額になりますか。
A. 付随的な請求として認められる場合は低額になりやすい傾向があります(数十万円程度)。悪質・継続的なハラスメントの証拠がある場合や単独メイン請求の場合は、より高額になることもあります。ただし、個別事案の具体的な事情によって大きく異なるため、一概には言えません。いずれにせよ、業務上必要のない不合理な言動を避け、指導の記録を適切に残すことが重要です。
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最終更新日:2026年5月31日