労働問題387 会社の業績が悪いことを理由として休業がなされた場合、休業手当を支払う必要がありますか。
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会社の業績が悪いことを理由として休業がなされた場合、通常は「使用者の責めに帰すべき事由」があると評価される。休業手当(平均賃金の60%以上)の支払義務が生じる(労基法26条) 「業績が悪いから休業させる・賃金は払わない」という対応は労基法26条に違反します |
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「使用者の責めに帰すべき事由がない休業」(不可抗力等)の場合には休業手当の支払義務は生じないが、業績悪化はこれに該当しないケースがほとんど 「うちの業績不振は外部要因だから不可抗力」という主張は認められにくい傾向があります |
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休業手当の支払義務は労働協約・就業規則・個別合意によっても排除できない。労基法は強行法規(388番参照) 「就業規則で休業手当不支給と定めていても無効です」 |
目次
01労基法26条の休業手当とは
労働基準法26条は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない」と定めています。これが「休業手当」です。
休業手当は、使用者都合の休業(労働者の意思ではなく使用者が一方的に休業させる場合)において、労働者が最低限の収入を確保できるよう設けられた保護制度です。労働契約上の賃金請求権(民法536条2項による反対給付請求権)とは異なる、労基法上の独自の請求権です。
02「使用者の責めに帰すべき事由」とは何か
労基法26条が適用される「使用者の責めに帰すべき事由」は、民法上の「債務者の責めに帰すべき事由」よりも広い概念とされています。天変地異等の不可抗力ではなく、使用者の勢力圏内で発生した事情、すなわち経営上・管理上の判断に起因する事情はこれに含まれると解されています。
03業績悪化を理由とする休業は「使用者の責めに帰すべき事由」に当たるか
会社の業績が悪いことを理由として休業がなされた場合、通常はこれが「使用者の責めに帰すべき事由」に当たると評価されます。業績悪化は、たとえ外部環境の変化(経済状況の悪化・需要減少等)が原因であっても、使用者の勢力圏内の問題として評価されるのが一般的です。
会社経営者の立場から「業績悪化は外部要因だから仕方がない」という主張がなされることがありますが、これが不可抗力として認められるためのハードルは極めて高く、通常の業績悪化ではこれに当たらないと考えておくべきです。
したがって、業績悪化を理由として従業員を休業させる場合には、原則として平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務があります。この義務を免れようとして就業規則や個別合意で休業手当を不支給とする定めを設けても、無効となります(388番参照)。
04「不可抗力」の抗弁。認められるケースと認められないケース
使用者の責めに帰すべき事由がないとして休業手当の支払義務が否定されるのは、「不可抗力」に当たる場合のみです。不可抗力として休業手当支払義務が否定されるためには、①原因が事業の外部から発生したものであること、②事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることができなかった事情であること、という厳格な要件が必要です。
大規模な自然災害・感染症等の外的事象を理由とする休業については、不可抗力として争われることがありますが、それでも事前の対策を怠っていた場合や回避可能な部分については責めに帰すべき事由があると評価される場合があります。単なる業績悪化・受注減少・人員過剰という経営上の問題は、不可抗力には当たりません。
05会社経営者が取るべき実務上の対応
業績悪化局面において従業員を休業させる必要がある場合、会社経営者としては次の点に留意してください。
業績悪化時の休業対応における実務上の注意点
①休業手当の支払義務を前提とした資金計画:平均賃金の60%以上の支払義務があることを前提に、休業期間中の資金計画を立てる
②雇用調整助成金の活用:業績悪化に伴う休業の場合、雇用調整助成金の活用により会社の負担を軽減できる場合がある(詳細は厚生労働省または社会保険労務士に確認)
③就業規則の確認:就業規則の休業手当に関する規定を確認する(ただし、法定基準を下回る規定は無効)
④休業の記録保管:休業の期間・理由・対象者・支払額を記録として保管する
06まとめ
会社の業績が悪いことを理由として休業がなされた場合、通常は使用者の責めに帰すべき事由があると評価されるため、平均賃金の60%以上の休業手当を支払う義務が生じます(労基法26条)。業績悪化は不可抗力には当たらないのが一般的であり、外部要因による業績悪化であっても原則として同様です。また、この休業手当の支払義務は労働協約・就業規則・個別合意によっても排除することができません(388番参照)。業績悪化局面での休業を検討する際は、雇用調整助成金の活用も含めて使用者側弁護士・社会保険労務士のサポートを受けながら対応することをお勧めします。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 「平均賃金の60%以上」というのは、毎日の休業に対してですか、それとも月全体に対してですか。
A. 休業した日ごとに平均賃金の60%以上の支払義務が生じます。労基法26条は「休業期間中」という表現を使っており、実際に休業させた日数分の手当支払が必要です。平均賃金の計算方法(算定事由発生日以前3ヶ月の賃金総額を総日数で除した額等)については、具体的な計算をご確認ください。
Q2. 従業員が休業に同意した場合でも、休業手当を支払う必要がありますか。
A. 原則として必要です。ただし、従業員が自ら希望して休業する(使用者都合ではなく労働者都合)場合は、「使用者の責めに帰すべき事由」に当たらないとされる場合があります。使用者が休業を提案し、従業員がそれに同意したに過ぎない場合は、使用者都合の休業として扱われる可能性が高くなります。いずれにせよ、休業手当の支払義務を就業規則等で排除することはできません(388番参照)。
最終更新日:2026年5月31日