労働問題573 労働組合から労働契約成立前の労働者に関し団交の申し入れがあった場合,会社は応じる義務がありますか。

この記事の結論
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原則として、労働契約成立前の労働者への団交応諾義務はない

労働契約が成立する前の段階では、原則として会社は労組法7条2号の「使用者」とは認められず、団体交渉応諾義務を負いません。

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例外:近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的具体的に存在する場合

例外的に、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在する場合(派遣先による直接雇用決定後、会社合併の過程等)には、使用者として団体交渉応諾義務を負います。

01原則(労働契約成立前は使用者として認められない)

 労働組合から、まだ労働契約が成立していない労働者に関して団体交渉の申し入れがあった場合、会社はこれに応じる義務があるのでしょうか。

 労働契約が成立する前の段階では、原則として会社は労組法7条2号の「使用者」とは認められませんので、団体交渉応諾義務を負いません。団体交渉義務を負う「使用者」とは、基本的には、労働者との間に労働契約関係が存在する事業主を指します。そのため、まだ労働契約が成立していない者については、その者に対する団体交渉義務は原則として発生しないということです。

02例外(現実的・具体的な成立可能性がある場合)

 もっとも、例外的に、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在する場合には、労組法7条2号の「使用者」と認められますので、団体交渉応諾義務を負うことになります。

例外が認められる具体例①:派遣先が直接雇用を決定した後

派遣先事業主が派遣労働者の直接雇用を決定した後に、その派遣労働者が加入する労働組合から団体交渉を申し入れられた場合です。直接雇用の決定後は、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在するといえますので、派遣先事業主は使用者として団体交渉義務を負うことになります。

例外が認められる具体例②:会社合併の過程で吸収会社が団交を申し入れられた場合

会社合併の過程で、吸収会社が被吸収会社の従業員で組合を組織する労働者から、合併後の労働条件について団体交渉を申し入れられた場合です。合併が確定した後は、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在するといえますので、吸収会社は使用者として団体交渉義務を負うことになります。

 これらの例外が認められるのは、いずれも労働契約関係の成立が現実的・具体的に見込まれる段階に至っているからです。単に採用の検討をしているというだけでは足りず、採用の決定や合併の確定など、より確実な段階に至っていることが必要です。

03会社経営者が取るべき実務上の対応

 労働契約成立前の労働者に関する団体交渉の申し入れを受けた場合、まず「近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在するか」という観点から、自社の状況を確認することが重要です。

 例外に当たる場合には団体交渉に応じる義務があり、拒否すれば不当労働行為となります。一方、原則どおり例外に当たらない場合には、団体交渉応諾義務は生じません。ただし、例外への該当性の判断は必ずしも明確ではないことも多く、判断を誤ると不当労働行為を問われるリスクがあります。

 会社合併、事業譲渡、直接雇用の決定等の場面では、従業員の組合関係が複雑な問題を生じさせることがあります。このような局面での団体交渉への対応については、早期に使用者側弁護士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 労働契約が成立していない段階では、原則として団体交渉応諾義務はありません。ただし、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在する場合(例:派遣先が直接雇用を決定した後、会社合併の過程等)には例外的に使用者と認められ、団交義務を負います。例外への該当性の判断は難しいことが多いため、このような場面での団交申入れには弁護士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 採用選考中の応募者に関して、その者が加入する組合から団交申入れがありました。応じる必要がありますか。

A. 採用選考の段階では、原則として労働契約関係は成立していませんので、会社は使用者として団体交渉応諾義務を負わないのが原則です。ただし、採用を内定した後など、労働契約の成立が現実的・具体的に見込まれる段階に至っている場合は、例外的に義務が生じることがあります。採用内定の段階や採用内定取消しが問題になる場面では、判断が難しいこともありますので、弁護士に相談することをお勧めします。

Q2. 会社分割の場合も、合併と同様に扱われますか。

A. 会社分割の場合も、分割される事業に従事する労働者との間で、近い将来に労働契約関係が成立する可能性が現実的・具体的に存在するといえる場合には、分割会社(新設会社・承継会社)は使用者として団体交渉義務を負う可能性があります。会社分割に伴う労働契約の承継や、分割後の労働条件については、組合との協議・情報提供義務等も定められていますので(労働契約承継法等)、専門家に相談のうえ対応することをお勧めします。

Q3. 派遣先が直接雇用を決定した場合、どのような事項が団交の議題になりますか。

A. 直接雇用後の賃金・労働条件(職種・勤務時間・賞与等)、雇用形態(正社員・有期社員等)、入社日、配属等が主な議題となることが多いといえます。これらは直接雇用に伴う重要な条件ですので、団体交渉への対応方針を事前に整理しておくことが重要です。直接雇用決定後の組合対応については、弁護士に相談のうえ進めることをお勧めします。

最終更新日:2026年2月25日

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