労働問題490 問題を起こした社員の給料を6か月に渡り10%減給する懲戒処分をすることはできますか。
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6か月間10%減給は労基法91条に違反し無効 6か月にわたり10%減給する懲戒処分は、「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超えてはならない」とする労基法91条に違反し無効となります。 |
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減給制裁には2つの上限がある ①一回の額が平均賃金の一日分の半額を超えてはならない、②総額が一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えてはならない、という2つの上限があります(労基法91条)。 |
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違反には30万円以下の罰金刑 労基法91条違反については、30万円以下の罰金刑が規定されています(労基法120条1号)。 |
01労基法91条の減給制裁の上限
労基法91条は、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」と規定しています。
労基法91条は、同条の制限に違反する減給の制裁を就業規則に定めることを禁止するのみならず、同条の制限に違反して減給することをも禁止しているものと考えられます。同条の制限を超える減給の制裁が行われた場合、減給処分は無効となります。
02「一回の額」の上限
一回の額の上限
一回の減給額 ≦ 平均賃金の1日分の半額
「一回の額」の上限は、平均賃金の一日分の半額です。「一回の額」とは、一つの懲戒事由に対して行われる減給の額のことです。例えば、月給30万円(月20日勤務)の場合、平均賃金の一日分はおよそ1万円ですから、一回の減給額は最大5,000円が上限となります。
月給の10%(3万円)を一回の減給として行うことは、「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超えてはならない」という上限を大幅に超えるため、認められません。
03「総額」の上限
一賃金支払期における減給の総額の上限
一賃金支払期の減給総額 ≦ 当該期間の賃金総額の10分の1
「総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない」とは、一賃金支払期(通常は1か月)に発生した複数の懲戒事案に対する減給の合計額が、その月の賃金総額の10分の1以下でなければならないという意味です(昭和23年9月8日基収第1789号)。
例えば月給30万円の社員の場合、一か月間に複数の懲戒事案が発生し複数の減給処分を行うとしても、その月の減給総額は3万円(30万円×10分の1)を超えることはできません。
046か月間10%減給が違反となる理由
6か月にわたり10%減給する懲戒処分が行われた場合、「一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え」ていると考えられます。月給30万円(月20日勤務)であれば、10%減給は3万円となり、平均賃金の一日分(約1万円)の半額(5,000円)を大幅に超えます。
したがって、このような懲戒処分は労基法91条に違反し無効となります。また、労基法91条違反については30万円以下の罰金刑が規定されています(労基法120条1号)。
05適法な減給処分の設計
より重い制裁を加えたい場合には、減給処分よりも重い処分(出勤停止、降格、懲戒解雇等)を検討する必要があります。ただし、懲戒処分全般について、処分が有効となるためには就業規則への根拠規定の存在、懲戒事由との均衡、適正手続等の要件を満たすことが必要です。
なお、一賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えて減給処分を行う必要がある場合、次期の賃金支払期に繰り越して行うことができます(491番参照)。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 適法な減給処分はどの程度の金額まで可能ですか。
A. 月給30万円(月20日勤務)の社員の場合、平均賃金の一日分は約1万円となるため、一回の減給額の上限はその半額の約5,000円です。これが一回の事案に対する減給の上限となります。なお、一賃金支払期の合計は賃金総額(30万円)の10分の1(3万円)が上限ですので、複数の事案がある場合でも合計3万円が上限となります。
Q2. 減給処分ではなく「昇給停止」や「降格」を行うことはできますか。
A. 昇給停止や降格は減給の制裁(労基法91条)とは別の問題です。就業規則に根拠がある場合には、懲戒処分として昇給停止や降格を行うことが可能です。ただし、降格によって賃金が大幅に減少する場合には、当該降格が懲戒処分として有効かどうかについて別途検討が必要です。
Q3. 労基法91条の「一回」とはどの単位ですか。
A. 「一回」とは一つの懲戒事由(一つの問題行為)に対する減給処分の回数を指します。一つの問題行為に対して平均賃金の一日分の半額を超えて減給することはできません。ただし、一つの問題行為について数か月にわたって分割して減給する場合、その合計額が「一回の額」として判断されることになります。
最終更新日:2026年2月25日