労働問題405 是正勧告とはどういうものですか。

この記事の要点

是正勧告とは、労働基準監督官が事業所調査や臨検(立入検査)をした場合において、労働法令違反に該当する事実を確認した時に行われる行政指導。「違法認定後の改善命令」として理解すべき重大な行政措置

指導票(法令違反ではないが改善が望ましい事項)とは性質が異なります

是正勧告には法的強制力はないが。対応しない場合は送検等に進む可能性があり、実務上は必ず速やかに対応する必要がある

「行政指導だから従わなくてもよい」は誤りです

是正報告書の提出が求められるのが通常。是正した事実を文書で報告し、改善の記録を残しておくことが重要

対応の記録は民事紛争においても重要な意味を持ちます

01是正勧告の定義と位置づけ

 是正勧告とは、労働基準監督官が事業所調査や臨検(立入検査)をした場合において、その事業所で労働法令違反に該当する事実を確認した時に行われる行政指導をいいます。

 労働基準監督官は、労働基準法・最低賃金法・安全衛生法等の労働法令を所管する行政機関として、事業場への立入調査・調書の作成・関係者への質問等の権限を持っています。調査の結果、労働法令違反が確認された場合に、当該企業に対して是正措置を求めるのが是正勧告です。

 是正勧告は、法令違反が認定されているという点で、次節で解説する指導票(将来的に違反につながる可能性があるが現時点では違反とまでは言えない事項への行政指導)とは性質が根本的に異なります。会社経営者として、この区別を正確に理解することが重要です。

02是正勧告が交付されるプロセス

 是正勧告が交付される典型的なプロセスは次のとおりです。労働基準監督署が事業場への調査(定期監督・申告監督等)を行い、調査の結果として労働法令違反に該当する事実が確認された場合に、是正勧告書が交付されます。

是正勧告に至る調査の種類

定期監督:計画的に事業場を選んで行われる調査。長時間労働や賃金不払い等のリスクが高いと評価された業種・事業場が対象となりやすい
申告監督:従業員(現職・元職を問わず)から労基署に申告・相談があった場合に行われる調査。残業代請求・解雇問題等に関連して行われることが多い
災害調査等:労働災害が発生した場合に実施される調査

 特に、元従業員が退職後に残業代請求等の相談をきっかけとして申告監督が実施されるケースは実務上少なくありません。会社経営者として、調査が任意ではなく強制的なものである点(質問・検査への拒否は刑事罰の対象)を認識しておく必要があります。

03是正勧告書の記載内容

 是正勧告書には、違反した法令条文・違反の具体的内容・是正期限が記載されます。例えば、未払い割増賃金(残業代)の存在が確認された場合、「労基法37条違反」として具体的な是正事項と是正期限が示されます。

 是正勧告書の交付と同時に、または後日、是正報告書の提出を求められることが一般的です。是正報告書は、会社側が是正した事実と内容を報告する文書であり、提出期限も指定されます。

04法的効力と対応しない場合のリスク

 是正勧告は行政指導の一種であり、直ちに法的強制力を持つものではありません。しかし、実務上は「必ず対応しなければならない」と理解すべきです。

 是正勧告に対応せず放置した場合、労働基準監督官は捜査機関として送検(検察庁への事件送致)を行う権限を持っており、刑事事件として処理される可能性があります。特に、残業代の未払い・違法な長時間労働等に関しては、是正勧告を受けながら改善しなかった場合に送検事案となるリスがあります。

 また、是正勧告で指摘された違反事項が民事訴訟・労働審判において証拠として利用される可能性もあります。会社が法令違反を認識しながら是正しなかったという事実は、悪意・過失を基礎づける事情として評価されることがあります。

05指導票との違い

比較項目 是正勧告書 指導票
前提 法令違反が確認された 現時点では明確な法令違反とはいえないが、改善が望ましい
違反条文 明示される 通常は明示されない
対応しない場合 送検等の可能性あり 次回調査で違反認定される可能性あり
緊急度 高い やや高い(放置厳禁)

06会社経営者が取るべき対応

 是正勧告を受けた場合、会社経営者として次の対応が必要です。

是正勧告への対応ステップ

①使用者側弁護士への即時相談:是正勧告の内容・法的意味・対応方針を専門家と協議する。勧告内容への法的疑義がある場合も含めて早期対応が重要
②勧告内容の精査:指摘された違反事実の具体的内容・根拠条文を正確に理解する
③速やかな是正措置の実施:指定期限内に是正措置を講じる
④是正報告書の提出:是正した内容・方法・時期を具体的に記載して提出する
⑤再発防止体制の整備:同種違反が再発しないよう、制度設計・運用体制を見直す

 特に、是正勧告の内容が民事上の損害賠償請求・労働審判等と連動する可能性がある場合は、対応方針を誤ると後の紛争において会社側が不利になるリスがあります。早期に使用者側弁護士に依頼することが最善の選択です。

07まとめ

 是正勧告とは、労働基準監督官が事業所調査や臨検をした際に、労働法令違反に該当する事実を確認した場合に行われる行政指導です。法的強制力はないものの、対応しない場合は送検等に進む可能性があり、実務上は速やかに是正措置を講じ、是正報告書を提出することが必要です。是正勧告が指摘した違反事項は民事紛争にも影響しうるため、使用者側弁護士と連携した早期対応が重要です。アドバイスします。

SUPERVISOR 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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Q&Aよくある質問

Q1. 是正勧告書に記載された是正期限を守れない場合はどうすればよいですか。

A. 是正期限の延長が必要な場合は、担当監督官に事情を説明して相談することが重要です。是正措置を検討中であることや、準備に時間を要する理由を説明した上で、対応中であることを示す書面を提出するなどして、誠実に対応している姿勢を示すことが求められます。期限を無視して連絡もしない対応は、送検へのリスクを高めます。

Q2. 是正勧告の内容に納得できません。異議を申し立てることはできますか。

A. 是正勧告は行政指導であるため、企業側の見解を示すことは可能です。事実誤認がある場合や、自社の運用に法的正当性がある場合は、使用者側弁護士を通じて論理的に説明することが有効です。ただし、感情的な拒絶は逆効果であり、誠実な対応姿勢を維持しながら法的観点からの見解を示すという対応が求められます。

最終更新日:2026年5月31日

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