この記事の結論
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計算違いや誤記があれば、申立てまたは職権でいつでも更正できる

労働審判の内容に計算違いや誤記などの誤りがあった場合、裁判所は、申立てまたは職権により、いつでも更正決定をすることができます。これは、審判書に代わる調書や、調停成立調書についても同様に考えられます。

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更正決定には、限られた者だけが即時抗告できる

更正決定は裁判書を作成して行わなければならず、これに対する即時抗告は、更正後の内容を原決定とみなした場合に即時抗告をすることができる者に限って認められます。

 労働審判の内容が確定した後、あるいは口頭で告知された後になって、金額の計算違いや当事者名の誤記といった誤りに気づくことがあります。このような場合、あらためて労働審判の手続をやり直す必要があるのでしょうか。

 会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の内容に誤りがあった場合の対応を解説します。

01更正決定とは何か

 労働審判の内容に、計算違いや誤記など、明白な誤りがあった場合、裁判所は、申立てまたは職権により、いつでも更正決定をすることができます。これは、労働審判事件について非訟事件手続法の規定が準用されること(労働審判法29条1項)を通じて認められている手続です。誤りの訂正のために、あらためて労働審判委員会による審理をやり直す必要はなく、簡易な手続で対応できる点に意義があります。

02更正できるのは、どのような誤りか

 更正決定の対象となるのは、計算違いや誤記その他これらに類する明白な誤りです。たとえば、金額の桁を誤って記載した場合や、当事者の氏名・名称の表記に誤りがあった場合などが典型例です。

 もっとも、これはあくまで表現上の誤りを正すための手続であり、労働審判委員会の判断内容そのものを見直すためのものではありません。判断の内容に不服がある場合には、更正決定ではなく、異議申立てによって争うべき問題です。誤りの性質が、単純な表記・計算上のミスなのか、判断内容にかかわる実質的な問題なのかを見極める必要があります。

03調書や調停調書についても同様に考えられる

 更正決定の考え方は、審判書そのものだけでなく、審判書に代わる調書(口頭告知の場合に作成される調書)や、調停が成立した場合の調停成立調書についても、同様に当てはまると考えられます。労働審判の多くは調停の成立によって終了しますが、調停調書に計算違いや誤記があった場合にも、あらためて調停をやり直す必要はなく、更正の手続で対応できると考えられます。

04更正決定への即時抗告

 更正決定は、裁判書を作成して行わなければならないとされています。そして、更正決定に対しては、即時抗告をすることができますが、これができるのは、更正後の内容を前提とした終局決定を原決定とみなした場合に、即時抗告をすることができる者に限られます。つまり、誰でも更正決定に不服を申し立てられるわけではなく、もともとの決定に対して不服申立ての資格を持つ者に限定されるということです。

05会社側が押さえておくべき視点

 会社側としては、労働審判の内容を受け取った際に、金額や当事者の表記に誤りがないかを速やかに確認することが重要です。とりわけ、金銭の支払を命じる主文では、金額や振込先口座に関する記載の正確性が、後の履行や強制執行の場面で直接影響します。誤りに気づいた場合には、速やかに裁判所に対して更正の申立てを検討すべきです。

 他方で、更正決定は判断内容そのものを見直す制度ではないため、「金額に納得できない」といった実質的な不服は、更正の申立てでは解決できません。この場合は、2週間の異議申立期間内に、異議を申し立てるかどうかを検討する必要があります。誤りの性質を正確に見極め、適切な対応を選択することが重要です。

06よくある質問(FAQ)

Q. 審判書の金額に計算違いがあった場合、審理をやり直す必要がありますか。

やり直す必要はありません。計算違いや誤記などの明白な誤りは、裁判所が申立てまたは職権により、いつでも更正決定をすることで対応できます。あらためて労働審判委員会による審理を経る必要はありません。

Q. 調停が成立した場合の調書にも、更正の考え方は当てはまりますか。

当てはまると考えられます。審判書に代わる調書や調停成立調書についても、計算違いや誤記があれば、同様に更正の手続で対応できると考えられます。

Q. 労働審判の判断内容そのものに不満がある場合も、更正の申立てで対応できますか。

できません。更正決定は、計算違いや誤記など表現上の誤りを正すための手続であり、判断の内容そのものを見直すものではありません。判断内容に不服がある場合は、異議申立期間内に異議を申し立てるかどうかを検討する必要があります。

経営上のポイント 労働審判の内容に計算違いや誤記などの誤りがあった場合、裁判所は申立てまたは職権により、いつでも更正決定をすることができます(労働審判法29条1項が準用する非訟事件手続法の規定)。あらためて審理をやり直す必要はなく、審判書に代わる調書や調停成立調書についても同様に考えられます。更正決定は裁判書を作成して行い、これに対する即時抗告は、更正後の内容を前提に即時抗告できる者に限られます。ただし、更正決定はあくまで表現上の誤りを正すものであり、判断内容そのものへの不服は更正では解決できず、異議申立期間内の対応が必要です。労働審判の内容を受け取ったら、まず記載内容を速やかに確認し、誤りの性質に応じた対応を選択することが重要です。会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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