労働審判にはどのような効力がありますか?
|
1
|
2週間以内に異議がなければ、労働審判は裁判上の和解と同一の効力を持つ 当事者は、労働審判の告知を受けた日から2週間以内に異議を申し立てることができます(労働審判法21条1項)。この期間に異議がなければ、労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を有します(同21条4項)。 |
|
2
|
給付を命じる確定した労働審判は、債務名義となり強制執行ができる 裁判上の和解と同一の効力を有するものは、確定判決と同一の効力を有するものとして、民事執行法上の債務名義となります(民事執行法22条7号)。金銭の支払等を命じる主文を含む労働審判は、強制執行の根拠となります。 |
目次
労働審判が示された後、その効力がどうなるかは、会社側にとって実務上極めて重要な問題です。労働審判は、確定すれば強い効力を持ち、金銭の支払等を命じる内容であれば、強制執行の根拠にもなります。
会社側専門の弁護士の立場から、労働審判の効力について解説します。
01異議申立期間と労働審判の確定(労働審判法21条1項・4項)
労働審判に対して不服があるときは、当事者は、審判書の送達を受けた日、または労働審判期日において労働審判の口頭告知を受けた日から、2週間以内に、裁判所に対して異議の申立てをすることができます(労働審判法21条1項)。この2週間は不変期間であり、延長は認められません。
この期間内に異議の申立てがない場合は、労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を有することになります(同21条4項)。異議を申し立てるかどうかは、この2週間のうちに判断しなければならないということです。
02「裁判上の和解と同一の効力」の意味
裁判上の和解は、調書に記載されることで確定判決と同一の効力を有するとされています。労働審判が確定すると、これと同じ効力が生じることになります。したがって、確定した労働審判は、その内容によって形成力(権利関係を確定的に変動させる効力)や執行力(強制執行の基礎となる効力)が認められます。
これは、労働審判が単なる「勧告」や「意見」にとどまるものではなく、確定すれば、通常の判決と同じような強い法的効力を持つことを意味します。労働審判の内容を軽く見て異議申立てを検討しないまま2週間が経過すると、その内容が確定的な効力を持ってしまうという点に注意が必要です。
03債務名義となる効果(民事執行法22条7号)
裁判上の和解のように、確定判決と同一の効力を有するものは、民事執行法上、債務名義の一つとして位置づけられています(民事執行法22条7号)。債務名義とは、強制執行を行うために必要となる公的な文書をいいます。
したがって、金銭の支払を命じる主文を含む労働審判が確定すれば、その労働審判は債務名義となり、相手方が任意に支払わない場合には、労働審判に基づいて、財産の差押えなどの強制執行手続をとることができます。これは、金銭の支払を求める側(申立人)にとって重要な効果ですが、会社側が支払義務を負う立場になった場合には、強制執行を受け得る立場になるという意味でもあります。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側にとって重要なのは、労働審判の内容を受け入れるかどうかの判断を、2週間という限られた期間内に行わなければならないという点です。労働審判の内容に不服がある場合、異議を申し立てれば訴訟に移行しますが(732の記事で解説したとおり、異議は取り下げられません)、異議を申し立てなければ、確定した労働審判が強い効力を持ち、金銭支払義務があれば強制執行の対象にもなり得ます。
したがって、労働審判の告知を受けたら、直ちに内容を精査し、確定した場合の効果(強制執行を受け得る立場になること)と、異議を申し立てて訴訟に移行した場合の見通し(負担と時間、解決の可能性)とを比較検討する必要があります。判断に迷う場合には、期間内に専門的な助言を得ることが重要です。
05よくある質問(FAQ)
Q. 労働審判に異議を申し立てなかった場合、どうなりますか。
告知を受けた日から2週間以内に異議の申立てがなければ、労働審判は確定し、裁判上の和解と同一の効力を有します(労働審判法21条1項・4項)。確定判決と同じ強い効力が生じることになります。
Q. 確定した労働審判に基づいて、強制執行はできますか。
できます。確定した労働審判は、裁判上の和解と同一の効力を有するものとして、民事執行法上の債務名義となります(民事執行法22条7号)。金銭の支払等を命じる主文を含む労働審判であれば、相手方が任意に支払わない場合、強制執行の根拠となります。
Q. 労働審判の内容に不服がある場合、いつまでに判断すればよいですか。
審判書の送達を受けた日、または期日で口頭告知を受けた日から2週間以内です(労働審判法21条1項)。この期間は不変期間で延長できないため、期間内に、内容を受け入れるか異議を申し立てるかを判断する必要があります。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判への対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日