労働審判手続において、管轄の合意は書面で行わなければなりませんか?
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管轄の合意は、書面でしなければならない 労働審判規則3条は、管轄の合意の方法について、書面でしなければならないと定めています。口頭の合意では、成否や内容をめぐって後々疑義が生じるおそれがあり、迅速な解決という制度の目的を損ないかねないためです。 |
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1通の書面である必要はなく、申込みと承諾が別の書面でもよい 管轄の合意の書面には、合意が成立したことと、その内容が明らかになっていれば足ります。1通の書面で合意する必要はなく、申込みと承諾が別々の書面であっても、書面性の要件を満たすと考えられています。 |
労働審判の申立ては、法律で定められた管轄裁判所に対して行うのが原則ですが、当事者間の合意によって、管轄裁判所を定めることもできます。この合意管轄について、労働審判規則3条は、書面によることを要求しています。
会社側専門の弁護士の立場から、管轄の合意に書面性が要求される理由と、実務上の注意点を解説します。
01管轄の合意とは
労働審判事件は、法律上、相手方の住所地や、労働者が現に就業しもしくは最後に就業した事業所の所在地を管轄する地方裁判所などに申し立てることが原則とされています。もっとも、当事者は、これとは別に、合意によって、労働審判手続の申立てをすることができる地方裁判所を定めることができます。これが管轄の合意です。労働審判規則3条は、この管轄の合意の方法について、書面でしなければならないと定めています。
02書面性が要求される理由
仮に、口頭で管轄の合意をすることができるとすると、その合意が実際に成立したのか、成立したとしてどのような内容だったのかをめぐって、後々疑義が生じる可能性があります。管轄をどの裁判所とするかについて争いが生じれば、その点だけで手続に時間がかかってしまい、労働審判手続の目的の一つである紛争の迅速な解決の実現が難しくなります。
そこで、裁判所が、合意の際の当事者の意思を確認し、合意の成立および内容についての証拠を確保できるようにするため、管轄の合意は書面でするものと定められています。書面という明確な形で残すことにより、後日の紛争を未然に防ぐ趣旨です。
03書面性の要件を満たす方法
管轄の合意の書面には、管轄の合意が成立したこと、およびその合意内容が明らかになっている必要があります。もっとも、1通の書面で合意をする必要はありません。一方当事者からの申込みを記載した書面と、他方当事者からの承諾を記載した書面とが、それぞれ別の書面であっても、両者をあわせて合意の成立と内容が明らかになる限り、書面性の要件を満たすものと考えられています。
したがって、たとえば、契約書の一条項として管轄合意条項を定める方法だけでなく、メールや書面のやり取りの中で合意が成立したことが確認できる場合にも、書面性の要件を満たし得ると考えられます。
04会社側が押さえておくべき視点
会社側にとって、管轄の合意は、労働契約書や就業規則の中で、あらかじめ紛争解決の枠組みを整えておく際に関係してきます。たとえば、本社の所在地を管轄する裁判所を合意管轄として定めておけば、従業員の勤務地が全国に分散している場合であっても、紛争対応の窓口を一元化できるという利点があります。
もっとも、合意管轄を定める場合には、書面性の要件を満たす形で、労働契約書等に明記しておくことが重要です。口頭でのやり取りだけでは、合意の成立や内容が争われるリスクが残ります。労働契約書のひな形や就業規則を整備する際には、管轄条項の記載についても確認しておくとよいでしょう。
05よくある質問(FAQ)
Q. 管轄の合意は、口頭でも有効ですか。
有効ではありません。労働審判規則3条は、管轄の合意の方法について、書面でしなければならないと定めています。口頭の合意では、成否や内容をめぐって疑義が生じるおそれがあるためです。
Q. 管轄の合意は、1通の書面にまとめる必要がありますか。
その必要はありません。申込みと承諾が別々の書面であっても、両者をあわせて合意の成立と内容が明らかになれば、書面性の要件を満たすと考えられています。
Q. 会社としては、管轄の合意をどのように活用できますか。
労働契約書などに、本社所在地を管轄する裁判所を合意管轄として定めておくことで、従業員の勤務地が分散している場合にも、紛争対応の窓口を一元化できます。書面性の要件を満たす形で明記しておくことが重要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働契約書や就業規則の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日