労働問題407 是正勧告を受けた労基法違反についての送検リスクはどれだけありますか。
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ニュースで報道されるような重大事件や刑事告訴されている事件を除き、是正勧告に対し誠実に対応すれば送検されるリスクは低い 是正勧告を受けたこと自体で直ちに刑事罰のリスクが高まるわけではありません |
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起訴されて有罪判決を受けるリスクはさらに低い。日本の労働事件の刑事化率は総じて低く、送検されても不起訴となるケースが多い ただし「誠実な対応」が前提条件であることを忘れないでください |
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送検リスクが高まるのは、悪質な違反(長時間労働による健康被害・大規模な賃金不払い等)や是正勧告を放置した場合。誠実な対応と記録化が最大のリスク管理策 是正勧告を受け取ったら速やかに使用者側弁護士に相談してください |
目次
01送検とは何か。刑事罰へのプロセス
「送検」とは、労働基準監督官が労働法令違反事件として検察庁に事件を送致することをいいます。労働基準監督官は、司法警察員としての権限を持ち、刑事訴訟法上の捜査権・送致権を行使することができます。
是正勧告は行政指導であり、直ちに刑事手続に移行するものではありません。しかし、是正勧告に対応しない場合や、特に悪質・重大な違反がある場合に、労働基準監督官が検察庁に事件を送致する(送検する)ことがあります。送検後は、検察官が起訴するかどうかを判断し、起訴された場合には刑事裁判が行われます。
02誠実な対応をすれば送検リスクは低い
ニュースで報道されるような重大事件(労働者が死亡・重傷を負った事案・大規模な賃金不払い等)や、刑事告訴されている事件を除き、是正勧告に対し誠実に対応すれば、送検されるリスクは低いといえます。
是正勧告に対して誠実に対応している(是正措置を実施し、是正報告書を提出している)場合、行政当局は通常、改善の意思がある企業に対してただちに送検という選択をするわけではありません。送検は、行政指導が奏功しなかった場合の最終手段として位置づけられています。
したがって、是正勧告を受けた場合に最も重要なことは、誠実かつ速やかに対応することです。使用者側弁護士と連携して、適切な対応方針を立て、是正措置と報告を確実に行うことが、送検リスクを最も効果的に抑制する方法です(405番参照)。
03起訴・有罪判決のリスクはさらに低い
仮に送検された場合でも、起訴されて有罪判決を受けるリスクはさらに低くなります。日本の刑事司法では、検察官が起訴するかどうかを独自に判断します(起訴独占主義・起訴便宜主義)。労働事件については、悪質性・被害の重大性・被疑者の反省・被害回復の状況等を総合的に考慮した結果として、不起訴(起訴猶予等)となるケースも少なくありません。
さらに、起訴された場合でも、有罪判決を受けるためには証拠による立証が必要です。会社側として誠実に対応し、違反を認識した時点での改善対応を記録として残しておくことは、刑事手続においても有利な事情として働く可能性があります。
04送検リスクが高まるケース
一方で、送検リスクが特に高くなるケースがあります。注意が必要なのは次のような場合です。
送検リスクが高まるケース
重大な健康被害が発生した場合:過労死・重篤な労働災害等、労働者の生命・身体に重大な被害が生じた事案
悪質・大規模な賃金不払い:多数の労働者に対する長期・大規模な残業代不払い等の事案
刑事告訴・告発がある場合:被害労働者や弁護士から刑事告訴・告発がなされている場合は捜査機関として動く
是正勧告を放置した場合:是正勧告を受けながら改善せず、複数回にわたって同一の違反を繰り返しているような場合
報道・社会的注目がある場合:ニュースで報道されるなど社会的注目を集めている事案
これらのケースに該当する場合は、送検リスクが相当程度高まります。早期に使用者側弁護士に相談し、刑事手続を見据えた対応方針を検討することが不可欠です。
05誠実な対応とは何か。具体的な行動
「誠実に対応する」とは、具体的には次の行動を取ることです。
是正勧告への誠実な対応の具体的行動
①速やかな是正措置の実施:指定期限内に是正措置を講じる。期限を守ることが基本
②是正報告書の提出:是正した内容・方法・時期を具体的に記載して提出する
③改善の記録化:是正措置を実施した事実(就業規則の改訂・未払賃金の支払・労働時間管理体制の整備等)を文書として保存する
④再発防止体制の整備:同種違反が再発しないよう制度・運用を改善する
⑤使用者側弁護士との連携:対応方針・対応内容の妥当性を法的観点から確認する
06まとめ
ニュースで報道されるような重大事件や刑事告訴されている事件を除き、是正勧告に対し誠実に対応すれば送検されるリスクは低く、起訴されて有罪判決を受けるリスクはさらに低くなります。送検リスクが高まるのは、重大な健康被害・大規模な賃金不払い・是正勧告の放置・刑事告訴がある場合等です。是正勧告を受けたら速やかに使用者側弁護士と連携して誠実に対応することが、送検・起訴リスクを最も効果的に抑制する方法です。アドバイスします。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
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Q&Aよくある質問
Q1. 是正勧告を受けた事実は、登記事項や公開情報になりますか。
A. 是正勧告は行政指導であり、登記事項にはなりません。ただし、厚生労働省は労働基準関係法令違反に係る公表事案(重大な違反事案等)をウェブサイトで公表する制度があります。重大な違反として送検され、送検情報として公表されるリスクはありますが、通常の是正勧告が公表されるわけではありません。
Q2. 元従業員が刑事告訴すると言っています。どう対応すればよいですか。
A. 刑事告訴がなされた場合は、捜査機関として動く可能性があり送検リスクが高まります。早期に使用者側弁護士に依頼し、刑事手続を見据えた対応方針を決定することを強くお勧めします。事実関係の整理・証拠の保全・対応の記録化が最初のステップとなります。
最終更新日:2026年5月31日