労働問題557 計画年休制度とは?労使協定の結び方と年5日消化義務を達成する実務対策
■ 計画年休は「年5日の消化義務」を果たす有力な手段
労使協定に基づき計画的に付与した有給休暇は、法的に義務付けられた「年5日の指定義務」に充当することができます。
■ 労使協定の締結と就業規則の整備が前提条件
導入には過半数労働組合(または過半数代表者)との書面による労使協定が不可欠です。適切な手続を欠くと無効となるリスクがあります。
■ 労働者に残すべき「5日の留保」に注意
全ての有給休暇を強制的に指定することはできません。労働者が個人的な事情で使用できるよう、最低5日は自由枠として残す必要があります。
目次
1. 計画年休制度(計画的付与)の法的定義
計画年休制度(正式名称:有給休暇の計画的付与制度)とは、労働基準法第39条第6項に基づき、年次有給休暇のうち「5日を超える部分」について、労使協定を締結することで、会社が計画的に休暇日を指定できる制度です。
本来、有給休暇の取得日は労働者が指定するもの(時季指定権)ですが、この制度を導入することで、会社主導で休暇日を確定させることが可能になります。適法に導入された場合、たとえ個別の労働者が反対したとしても、その日は法的にも「年次有給休暇」として扱われることになります。
2. 導入に不可欠な労使協定と手続
計画年休を導入するためには、以下の2点が必要です。
- 就業規則への規定:「労使協定の定めに従って計画的に付与することがある」旨の条文を設ける必要があります。
- 労使協定の締結:事業場の過半数労働組合、または過半数代表者と書面による協定を締結しなければなりません。
協定書には、対象となる労働者の範囲、付与の対象となる有給休暇の日数、具体的な付与方法などを明記します。会社側弁護士としてアドバイスしたいのは、この「過半数代表者」の選出プロセスの適正性です。選出方法が不適切であれば協定自体が無効となり、計画年休そのものが法的根拠を失うおそれがあるため、細心の注意が必要です。
3. 計画的付与の3つの主要方式
事業の特性に合わせて、実務上は主に以下の3つの方式で運用されます。
- ①事業場全体による一斉付与方式:製造ラインの停止時や夏季休暇、年末年始に合わせて全社一斉に休む方式です。最も管理が簡便です。
- ②グループ別の交替制付与方式:部署やチームごとに交替で休暇日を設定する方式です。サービス業など、営業を継続する必要がある職種に適しています。
- ③計画表による個人別付与方式:年度初めに個別の休暇計画表を作成・提出させる方式です。個々の労働者の希望を尊重しつつ、偏りを防ぐことができます。
4. 経営者が留意すべき「5日の留保」ルール
計画年休制度で最も注意しなければならないのが、「労働者の自由枠(5日)」の確保です。労働基準法は、急な病気や個人的な用事のために使える有給休暇を最低5日は残すよう定めています。
例えば、有給休暇の残日数が10日の従業員に対し、計画年休として指定できるのは最大5日までとなります。もし有給休暇が6日しかない新入社員などがいる場合、その従業員に5日の計画年休を強制することはできません。この場合、特別休暇(有給)を与えるなどの配慮が必要になる点に、実務上の難しさがあります。
5. まとめ―年5日の指定義務対策としての活用
2019年4月より、年10日以上の有給が付与される労働者に対し、年5日の確実な消化が義務化されました。計画年休制度を導入し、あらかじめ労使協定で5日間の休暇日を決めておけば、それだけで会社としての年5日の指定義務を自動的にクリアすることが可能になります。
「従業員がなかなか有給を取ってくれない」「未消化分の管理が煩雑である」とお悩みの経営者にとって、計画年休はコンプライアンス遵守と生産性向上の両立を図る有効な手段です。適正な労使協定の作成や、制度設計についてお悩みの方は、ぜひ弊所までご相談ください。

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年3月1日
計画年休に関するよくある質問(Q&A)
Q1. 計画年休として指定した日に、従業員から「別の日に変えてほしい」と言われたら?
A1. 適法な労使協定に基づいている場合、その日は有給休暇として確定しています。会社にも労働者にも「時季変更権」や「時季指定権」の行使は認められなくなるため、原則として変更に応じる義務はありません。
Q2. 有給休暇が足りない(まだ付与されていない)従業員はどう扱えばいいですか?
A2. 一斉付与を行う場合、有給がない従業員だけを出勤させることは現実的ではありません。一般的には、その従業員に対してのみ特別休暇(有給)を与えるか、休業手当(平均賃金の60%以上)を支払って休ませる必要があります。
Q3. 労使協定を毎年結び直す必要はありますか?
A3. 付与日を具体的に特定する形式(一斉付与など)の場合、カレンダーが毎年変わるため、通常は1年ごとに締結します。ただし、「前年度と同様のルール」として自動更新条項を含めることも実務上検討されます。