労働問題27 普通解雇の社会通念上の相当性とは?処分の均衡と使用者の落ち度を会社側弁護士が解説

この記事の要点

社会通念上の相当性は「解雇がやむを得ない」と評価できるかの問題です。処分の均衡と使用者側の落ち度が実務上特に問題になりやすい点です。

 普通解雇が社会通念上相当であるためには、①労働者の情状、②他の社員との処分の均衡、③使用者側の対応・落ち度という3つの要素を総合的に考慮した上で、解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。

考慮要素①:労働者の情状(反省の態度・処分歴・年齢・家族構成等)

 反省の態度があるか、過去の勤務態度・処分歴はどうか、年齢・家族構成など社員個人の事情も考慮されます。


考慮要素②:他の社員との処分の均衡(不均衡処分は特に問題になりやすい)

 同じような状況の社員に対して一方は解雇・他方は軽い処分という不均衡な対応は、社会通念上の相当性を否定する要因となります。


考慮要素③:使用者側の対応・落ち度

 業務指示の不明確さや管理上の問題など、使用者側に落ち度がある場合は、解雇の相当性が認められにくくなります。

1. 社会通念上の相当性とは何か

「解雇がやむを得ない」と評価できることが必要

 普通解雇の有効性を判断する上での2つ目の要件が「社会通念上相当であること」です(労働契約法16条)。この要件は、客観的合理的理由が存在することに加えて、解雇という手段を用いることが社会通念上やむを得ないと評価できるかどうかを問うものです。

 客観的合理的理由(前記事・労働問題26参照)は「解雇する理由があるか」という問題であるのに対し、社会通念上の相当性は「解雇という手段を取ることが相当か」という問題です。前者の要件を満たしても、後者の要件が認められなければ、解雇は依然として解雇権濫用として無効となります。

社会通念上の相当性判断における3つの考慮要素

 社会通念上の相当性の判断にあたっては、次の3つの事情が主な考慮要素となります。

 ①労働者の情状:反省の態度があるかどうか、過去の勤務態度・処分歴はどうか、年齢・家族構成など個人的な事情はどうかという事情です。例えば、問題行動に対して深く反省し改善の意欲を示している社員と、全く反省の態度を示さない社員とでは、解雇の相当性評価が異なります。

 ②他の労働者との処分の均衡:同じような問題行動をした他の社員と比較して、著しく不均衡な処分でないかどうかです。

 ③使用者側の対応・落ち度:使用者側の業務指示・管理体制に問題があったかどうか、改善の機会を十分に与えたかどうかという事情です。

2. 実務上特に問題になりやすい点:処分の均衡と使用者の落ち度

②処分の均衡:「あの人は解雇されていないのに」という主張

 実務上、社会通念上の相当性をめぐって最も頻繁に問題となるのが、他の社員との処分の均衡です。同じような状況にあるにもかかわらず、ある社員は解雇し、別の社員は軽い処分(譴責・減給など)にとどめるという対応をした場合、解雇された社員から「自分だけが不当に重い処分を受けた」という主張がなされます。

 裁判所・労働審判委員会は、こうした処分の不均衡を解雇の社会通念上の相当性を否定する方向で評価することがあります。過去の処分事例・他の社員への対応との均衡が取れているかどうかを、解雇前に必ず確認することが重要です。

 なお、全く同じ状況の社員が存在しないことも多く、処分の均衡は「まったく同じ行為・状況でなければ比較できない」というものではありません。類似した問題行動に対してどのような処分をしてきたかという過去の実績・傾向が、均衡の判断基準となります。

③使用者側の対応・落ち度:会社に責任がある場合の解雇は認められにくい

 使用者側の対応・落ち度も、社会通念上の相当性判断において重要な考慮要素です。例えば、業務の指示・指導が不明確であったために社員が業務をうまく遂行できなかった場合、あるいは会社が社員の能力向上のための教育・指導を怠った結果として能力不足が生じた場合などは、会社側の落ち度が認定され、解雇の相当性が否定されることがあります。

 「社員が悪い」という評価だけでなく、「会社は適切な対応を取ったか」という視点でも審査が行われます。会社側が十分な指導・教育・改善機会の付与を行ったことを示す記録があることが、社会通念上の相当性を支える上で重要です。

✕ よくある経営者の誤解

「反省しているかどうかは関係ない。問題行動があった以上は解雇できる」→ 誤りです。
 反省の態度は社会通念上の相当性の考慮要素の一つです。深く反省し改善の意欲を示している社員を解雇する場合は、改善可能性を十分に考慮した上でなお解雇がやむを得ないといえる事情が必要です。

「他の社員と比べる必要はない。この社員の問題行動が解雇理由になれば十分だ」→ 不十分なケースがあります。
 他の社員との処分の均衡は社会通念上の相当性の重要な考慮要素です。類似の問題行動に対して軽い処分しかしてこなかったにもかかわらず、特定の社員だけを解雇することは、均衡を欠くとして相当性が否定されるリスクがあります。

 解雇を検討している場合、処分の均衡・使用者側の落ち度の有無も含めた社会通念上の相当性について、事前に弁護士に確認することをお勧めします。→ 経営労働相談はこちら

3. 実務上の対策:社会通念上の相当性を確保するために

解雇前に確認すべき3つのポイント

 社会通念上の相当性を確保するために、解雇前に次の3点を確認・準備しておくことをお勧めします。

 ①反省の機会と改善の余地を十分に与えたか:注意指導を行い、改善期限を設定し、それでも改善されなかったという経緯が示せるかどうかを確認します。

 ②過去の処分事例との均衡が取れているか:同じような問題行動に対して過去にどのような処分をしてきたかを確認し、今回の解雇が著しく重い処分でないかを検討します。

 ③使用者側に落ち度はないか:業務指示の明確性・教育機会の提供・管理体制の適切さなど、会社側の対応に問題がなかったかを客観的に確認します。

⚠ 実務でよく見られるパターン(弁護士対応事例より)

 社会通念上の相当性をめぐる紛争でよく見られるのは、次のようなパターンです。

・「同じような無断欠勤をした別の社員には譴責処分しかしていなかったが、気に入らない社員だったので解雇した。裁判で均衡を欠く不当解雇と認定された」

・「能力不足で解雇したが、そもそも会社が業務指示を曖昧にしていたことが指摘され、使用者側の落ち度があるとして解雇の相当性が否定された」

 いずれも、解雇前に弁護士へ相談していれば回避できた問題です。

4. まとめ

 普通解雇が社会通念上相当であるためには、①労働者の情状(反省の態度・過去の勤務態度・処分歴・年齢・家族構成等)、②他の労働者との処分の均衡、③使用者側の対応・落ち度、という3つの要素を総合的に考慮した上で、解雇がやむを得ないと評価できることが必要です。実務上は、同じような問題行動をした他の社員との処分の不均衡が問題となるケースが特に多く見られます。解雇を検討している場合は、客観的合理的理由(前記事参照)と社会通念上の相当性の両方について、事前に会社側の労働問題に精通した弁護士に確認することをお勧めします。

 


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最終更新日 2026/04/05


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