労働組合が行うストライキや団体行動には「正当性」が求められます。正当性のない組合活動に対して会社が懲戒処分を行っても、不当労働行為には該当しません。しかし、どのような行為が「正当性なし」とされるかを正確に理解しておかなければ、誤った対応をして紛争を拡大させるリスクがあります。

 本記事では、労働組合の正当行為と認められないケースと、会社としての適切な対応方法を、使用者側専門の弁護士が解説します。

01労働組合の行為に「正当性」が必要な理由

 労働組合法1条2項は、刑事免責・民事免責の適用を「正当な行為」に限定しています。したがって、正当性のない組合行為については、刑事罰の対象となる可能性があり、会社側が損害賠償請求できる場合もあります。また、正当性のない組合活動に関与した組合員に対して懲戒処分を行っても、不当労働行為(支配介入)にはなりません。

 一方、正当性のある組合活動を理由に懲戒処分を行うことは不当労働行為となります。正当性の有無の判断を誤ることは、会社側にも大きなリスクをもたらします。

02正当性が否定される組合活動のケース

 以下に、正当性が否定されると判断されるケースの代表例を示します。

① 組合の内部手続きを経ないストライキ
 組合規約上の手続き(組合大会での決議等)を経ずに一部の構成員が独自に行うストライキは、正当性が否定されるのが通常です。このようなスト参加者に対する懲戒処分も適法とされる可能性があります。

② 政治的目的の争議行為
 労働者の経済的地位の向上と直接関係のない政治的目的のための争議行為は、正当性が否定されます。特定政党の支援・政治的抗議を目的としたストは保護されません。

③ 暴力を伴う争議行為
 ピケットラインでの暴力行為、施設の不法占拠、業務を物理的に妨害する行為等は、手段の相当性を欠くとして正当性が否定されます(労組法1条2項ただし書き)。

④ 就業時間中の組合活動
 就業時間中に使用者の許可なく行う組合活動は、原則として正当性が認められません。就業時間中の組合活動を理由に懲戒処分することは、適法とされる場合があります。

⑤ 会社施設の無断使用
 会社の施設(会議室・掲示板等)を使用者の許可なく組合活動に使用する行為は、施設管理権の侵害として正当性が否定されます。

03会社として対応する際の注意点

 正当性のない組合活動に対する会社の対応として、懲戒処分・損害賠償請求等が考えられますが、いずれも慎重な検討が必要です。正当性の判断は個別事情に依拠するため、一律に「このケースは正当性なし」と断定することはできません。

 実務上重要なのは、①組合活動の記録を保全すること(日時・場所・参加者・行為の内容)、②即断での懲戒処分を避け、専門家に相談した上で対応を決定すること、③組合との交渉・団体交渉の申入れには誠実に対応すること(不当労働行為の回避)です。

04会社側として知っておくべき不当労働行為の禁止

 使用者は、組合活動に対する報復や妨害行為(不当労働行為)を行ってはなりません。組合員であることを理由とした不利益取扱い、正当な団体交渉の拒否、支配介入(組合運営への干渉)等は、労働委員会への救済申立の対象となります。

 労働組合からの団体交渉申入れ・ストライキ予告等があった場合は、対応を誤ると会社側が不当労働行為の認定を受けるリスクがあります。使用者側の弁護士に速やかに相談することを推奨します。

弁護士 藤田 進太郎

監修者弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

05よくある質問

Q1. 正当性のないストに参加した社員を懲戒解雇できますか?
A. 直ちに懲戒解雇は難しいケースがほとんどです。正当性がないストへの参加は懲戒事由となり得ますが、解雇の相当性を判断するには行為の悪質性・回数・会社の損害等を考慮する必要があります。けん責・減給・出勤停止から段階的に対応するのが実務上の基本です。

Q2. 就業時間中に組合活動をしている社員に業務命令を出せますか?
A. 就業規則上の根拠があれば、就業時間中の組合活動を制限する業務命令は原則として適法です。ただし、会社施設の利用許可、組合事務所の付与等の合意がある場合はその内容を確認した上で対応する必要があります。

Q3. 社外の合同労組から突然団体交渉を申し入れられました。どうすればいいですか?
A. 合同労組(ユニオン)からの申入れも、要件を満たせば誠実に対応する義務があります。拒否すると不当労働行為(団体交渉拒否)となるリスクがあるため、まず使用者側弁護士に相談し、対応方針・交渉窓口・日程等を検討することを推奨します。

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最終更新日:2026年5月10日