労働者による賃金債権の放棄が有効といえるためには、意思表示が労働者の自由な意思に基づくものであると認められる必要があります。
 シンガー・ソーイング・メシーン・カムパニー事件判決は、在職中の経費の使用について会社が疑惑を抱き、これによる損害の一部の填補として退職金を放棄する旨の意思表示をした退職者について、放棄の意思表示は有効であると判断しました(最高裁第二小法廷昭和48年1月19日判決)。
 これに対して、北海道国際航空事件判決は、会社の経営危機に際し経営状態を説明して課長以上の役職者について賃金の減額を通告し、労働者は遡っての賃金減額は違法である等と抗議しましたが、減額された賃金を余儀なく受け取っていたという事案について、労働者が余儀なく減額された賃金を受け取っていたこと等からすれば、減額された賃金を受け取った時点でその時点以降の賃金減額には同意していたと認めましたが、賃金減額同意までに発生していた賃金については、自由な意思に基づくものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するとはいえず、賃金債権放棄の要件を満たさないとして、放棄を無効としました(最高裁第一小法廷平成15年12月18日判決)。

 


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