労働者派遣法は派遣元の講ずべき措置についてどのように定めていますか。
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派遣元には16項目にわたる措置が課されている 労働者派遣法は、雇用の安定等措置、教育訓練、均衡待遇の確保、就業条件の明示、派遣元管理台帳の作成等、派遣元が講ずべき16の措置を定めています。 |
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通算5年超の有期契約には無期転換申込権も発生する 派遣元との有期労働契約の通算期間が5年を超える場合、派遣労働者は無期労働契約への転換を申し込むことができ、これにより従前と同一の労働条件の無期労働契約が成立します。 |
目次
826・827の記事で解説した派遣制度の基本を踏まえ、実際に労働者派遣事業を営む派遣元には、多岐にわたる法的義務が課されています。派遣先企業にとっても、派遣元がこれらの義務を適切に履行しているかを把握しておくことが重要です。
会社側専門の弁護士の立場から、労働者派遣法が定める派遣元の講ずべき措置を解説します。
01派遣元が講ずべき16の措置
労働者派遣法は派遣元の講ずべき措置について、次のとおり定めています。
- 特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等措置
- 段階的かつ体系的な教育訓練等
- 派遣労働者と同種の業務に従事する派遣先労働者との均衡を考慮した待遇の確保のための措置
- 派遣労働者の福祉の増進のための措置
- 適正な派遣就業の確保のための措置
- 待遇に関する事項等の説明
- 派遣労働者であることの明示等
- 派遣労働者が派遣先に雇用されることを禁止する契約の禁止
- 派遣就業条件(従事する業務内容、就業場所、派遣期間、就業開始終了時刻、休憩時間、派遣先責任者、派遣元責任者等)及び派遣可能期間に制限がある場合はその期間満了日を明示した文書を交付する義務
- 労働者派遣に関する料金の額の明示
- 派遣先への労働者の氏名、雇用形態、社会保険の加入状況等の一定事項の通知
- 派遣可能期間の適切な運用
- 日雇労働者についての労働者派遣の原則禁止
- 派遣先を離職後1年経過しない労働者についての労働者派遣の禁止
- 派遣元責任者の選任
- 派遣元管理台帳の作成、記載及び3年間の保存
02雇用の安定等措置の具体化(平成27年改正)
①特定有期雇用派遣労働者等の雇用の安定等措置について、平成27年の労働者派遣法の改正では、平成24年の改正により設けられていた雇用安定措置の内容を、次のとおり、より具体化しています。
- 派遣先への直接雇用の依頼
- 新たな派遣先の提供(新たな派遣先は、能力、経験、住居地、従前の職務に係る待遇、その他派遣労働者の配置に関して通常考慮すべき事項に照らして合理的なものに限られます)
- 派遣元による無期雇用
- その他雇用の安定を図るために必要な措置(有給の教育訓練、紹介予定派遣、その他雇用の継続が図られると認められる措置に限られます)
03教育訓練の実施義務と要件
②段階的かつ体系的な教育訓練等について、派遣元は、派遣労働者が段階的かつ体系的に派遣就業に必要な技能及び知識を習得することができるよう教育訓練を実施しなければなりません(労派遣30条1項)。教育訓練は、以下の要件を満たした教育訓練計画に基づく必要があります(平成27年厚労告391号4号)。
- 教育訓練が全派遣労働者を対象とすること
- 教育訓練が有給かつ無償であること
- 教育訓練が派遣労働者のキャリアアップに資する内容であること
- 入職時の教育訓練を含むこと
- 無期雇用派遣労働者に対する教育訓練は、長期的キャリアの形成を念頭に置いた内容であること
04派遣労働者に対する均衡待遇の確保
③労働者派遣の均衡待遇について、派遣元は、派遣労働者が従事する業務と同種の業務に従事する派遣先に雇用される労働者との賃金水準との均衡を考慮しつつ、当該派遣労働者の従事する業務と同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準又は当該派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力若しくは経験等を勘案し、当該派遣労働者の賃金を決定するよう配慮しなければならず、派遣労働者から求めがあったときは、これらを決定するにあたって考慮した事項について、説明をしなければなりません(労派遣31条の2)。
05無期労働契約への転換申込権
また、派遣元と有期労働契約を締結する派遣労働者にも、無期労働契約への転換申込権が発生する場合があります。すなわち、派遣元と派遣労働者との間で締結された2以上の有期労働契約の期間を通算した期間が5年を超える場合に、派遣労働者が派遣元に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間満了までの間に、当該満了日の翌日から労務が提供される無期労働契約の締結の申込みをしたときは、派遣元は、当該申込みを承諾したものとみなされ、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件と同一の内容の無期労働契約が成立することになります。この点は、819の記事で解説した有期労働契約の一般的な期間規制とはまた別の、労働契約法18条に基づく無期転換ルールに関わる論点です。
06会社側が押さえておくべき視点
自社が派遣元として労働者派遣事業を行う場合、これら16の措置を漏れなく履行する体制の整備が必要です。特に、雇用安定措置・教育訓練・均衡待遇の確保は、実務上のコンプライアンス上重要な項目であり、行政指導や是正勧告の対象になりやすい分野でもあります。
派遣先企業としても、派遣元がこれらの義務を適切に履行しているかを確認しておくことは、円滑な派遣契約の運用や、後のトラブル予防に役立ちます。
07よくある質問(FAQ)
Q. 派遣元は、派遣労働者に教育訓練を実施する義務がありますか。
あります。派遣労働者が段階的かつ体系的に技能・知識を習得できるよう教育訓練を実施する義務があり、有給かつ無償で行う必要があります。
Q. 派遣元との有期契約が5年を超えたら、必ず正社員になれますか。
正社員ではなく、無期労働契約に転換されます。派遣労働者が転換の申込みをすれば、従前と同一の労働条件で無期労働契約が成立します。
Q. 派遣元管理台帳は、どのくらいの期間保存する必要がありますか。
3年間の保存が義務付けられています。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働者派遣事業のコンプライアンス対応でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
最終更新日:2026年7月13日