ワード:「精神疾患」
精神的疾患が疑われる社員が働き続けている。
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1. 医師の診察を受けてもらう
(1) 自発的に受診するよう促す
精神疾患の場合、身体的な疾患とは異なり、病気の自覚がなかったり、精神的疾患を理由に職場で不利な扱いを受けるのではないかと考えたりして、医師の診療を受けないことがあります。
医師の診療を拒む労働者には、まずは、上司が当該社員と面談して医師の診察を受けるよう助言したり、上司が当該社員の家族から受診を勧……
医師の診療を拒む労働者には、まずは、上司が当該社員と面談して医師の診察を受けるよう助言したり、上司が当該社員の家族から受診を勧……
労働基準監督署は、何を基準に精神疾患の労災を認定しているのですか?
労働基準監督署は、平成23年12月23日に厚生労働省が定めた「心理的負荷による精神障害の認定基準」に沿って、うつ病などの精神疾患の労災認定を行っていると考えます。
「心理的負荷による精神障害の認定基準」は、労災認定の要件として、次のものを挙げています。
① 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
② 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に……
① 認定基準の対象となる精神障害を発病していること
② 認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に……
④パワハラ・セクハラに関する労災認定の概要を教えて下さい。
パワハラ・セクハラの被害者が精神疾患を発症している場合に、パワハラ・セクハラの心理的負荷が「強」と判断されれば、業務起因性が肯定され、労災認定される可能性が高くなります。
労災認定の可否は、行政レベルでは、『心理的負荷による精神障害の認定基準』を参考に判断されることになります。 ……
労災認定の可否は、行政レベルでは、『心理的負荷による精神障害の認定基準』を参考に判断されることになります。 ……
②解雇、休職期間満了退職無効を理由とした地位確認請求の内容はどのようなものですか。
精神疾患発症の原因が職場のパワハラ・セクハラの場合は、療養のための休業期間及びその後30日間は、原則として解雇したり、休職期間満了退職扱いにしたりすることができません(労基法19条、同条類推)。
(解雇制限)
労基法19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30……
労基法19条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のため休業する期間及びその後30日間並びに産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30……
月例賃金に占める定額(固定)残業代の比率は、どれくらいまでなら許されますか。
月例賃金に占める定額(固定)残業代の比率と定額(固定)残業代の有効性との間には、論理必然の関係はありません。
もっとも、脳・心臓疾患や精神疾患を発症した場合に、長時間労働を理由として労災認定がなされる可能性が高い時間外労働を予定するような定額(固定)残業代制度を採用すべきではなく、月80時間分の時間外割増賃金額を下回る定額(固定)残業代額にすべきと考えます。個人的見解としては、月……
もっとも、脳・心臓疾患や精神疾患を発症した場合に、長時間労働を理由として労災認定がなされる可能性が高い時間外労働を予定するような定額(固定)残業代制度を採用すべきではなく、月80時間分の時間外割増賃金額を下回る定額(固定)残業代額にすべきと考えます。個人的見解としては、月……
飲み会で部下に飲酒を強要する。
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1 飲酒強要の問題点
上司と部下が酒食を共にすることは、普段の仕事とは違った打ち解けた雰囲気での親密なコミュニケーションを促し、円滑な人間関係の形成に資する面がありますが、体質上、お酒を全く飲めない人もいますし、お酒が弱いだけである程度は飲める人であっても、体調や気分次第では飲酒したくないこともあり、一緒にお酒を飲みさえすれば人間関係が良くなるというものではありません。お酒の最低……
部下に過大なノルマを課したり仕事を干したりする。
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1 過大なノルマの問題点
部下に対し一定のノルマを課すこと自体は合理的なことであり、上司にしてみれば、ノルマを達成できるだけの高い能力とやる気のある社員だけ残ればいいという発想なのかもしれません。しかし、とても達成できないような過大なノルマを部下に課すことに経営上の合理性はなく、部下のモチベーションが上がらず営業成績を高めることができない結果となったり、せっかく費用をかけて採用し……
精神疾患を発症したのは長時間労働や上司のパワハラ・セクハラのせいだと主張して損害賠償請求してくる。
長時間労働や上司のパワハラ・セクハラが原因となって労働者が精神疾患を発症した場合、使用者は安全配慮義務違反(労契法5条、民法415条)又は使用者責任(民法715条)を問われ、損害賠償義務を負うことがあります。
過去の裁判例、心理的負荷による精神障害の労災請求事案において業務上外を判断する際に用いられる「心理的負荷による精神障害の認定基準(平成23年12月26日基発1226第1号)……
過去の裁判例、心理的負荷による精神障害の労災請求事案において業務上外を判断する際に用いられる「心理的負荷による精神障害の認定基準(平成23年12月26日基発1226第1号)……
精神疾患を発症してまともに働けないのに休職や退職の効力を争う。
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1 精神疾患発症が疑われる社員の基本的対応
使用者は、社員の健康に対して安全配慮義務を負っていますので(労契法5条)、遅刻や欠勤が急に増えたり、集中力や判断力が低下して単純ミスが増えたりするなど、精神疾患発症が疑われる社員については、上司から具体的問題点を指摘した上で、医療機関での受診や産業医への面談を勧めるなどする必要があります。
また、使用者は、必ずしも社員か……
また、使用者は、必ずしも社員か……
精神疾患の発症、増悪に本人の素因が寄与している場合は、賠償額を減額してもらえますか?
損害の発生又は拡大に関し、被災労働者に過失がある場合には、過失の程度に応じて、損害賠償額が減額されます(民法418条、722条2項)。また、被害者の性格等の心因的要因が損害の発生又は拡大に寄与している場合には、損害を公平に分担させるという損害賠償法の理念に照らし、民法418条又は民法722条2項の過失相殺の規定を類推適用して、損害賠償額が減額(素因減額)されることがあります。
電……
電……
社員の精神疾患発症に関し使用者責任又は安全配慮義務違反を理由とする債務不履行を問われて損害賠償義務を負う場合、社員の弁護士費用まで賠償しなければなりませんか。
不法行為の被害者が損害賠償を請求するために「訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は、事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」(最高裁昭和44年2月27日第一小法廷判決)とするのが、確立した最高裁判例です。
また、最高裁第二小法廷平成24年2月24日判決は、……
また、最高裁第二小法廷平成24年2月24日判決は、……
労災保険給付がなされれば、使用者は、労働者から損害賠償請求を受けずに済むのでしょうか。
労基法75条~88条は、労働者が業務上負傷し、または疾病にかかった場合における災害補償について規定しています。この災害補償責任は使用者の無過失責任であり、過失相殺がなされることはなく、原則として平均賃金に対する定率により補償額が決定されており、労災保険法により労災保険制度が整備されています。
労災保険給付がなされた場合、使用者は、同一の事由については、その価額の限度において民法の……
労災保険給付がなされた場合、使用者は、同一の事由については、その価額の限度において民法の……
精神疾患発症の原因が長時間労働、セクハラ、パワハラ等の業務に起因する労災かどうかは、どのように判断すればよろしいでしょうか。
精神疾患発症の原因が長時間労働、セクハラ、パワハラ等の業務に起因する労災かどうかは、行政レベルでは、『心理的負荷による精神障害の認定基準』(基発1226第1号平成23年12月26日)を参考にして判断することになりますので、企業レベルでも、基本的には同認定基準を参考に労災に当たるかどうかを判断することになります。
月100時間を超える恒常的な時間外労働がなされている場合のように、労……
月100時間を超える恒常的な時間外労働がなされている場合のように、労……
精神疾患発症の原因が長時間労働、セクハラ、パワハラ等の業務に起因する労災であることが判明した場合、休職期間満了退職の効力はどうなりますか。
精神疾患の発症の原因が長時間労働、セクハラ、パワハラ等の業務に起因する労災であることが判明した場合、
① 私傷病を理由とした休職命令が休職事由を欠き無効となり、その結果、休職期間満了退職の効力が生じなくなったり、
② 療養するため休業する期間及びその後30日間であることを理由として、休職期間満了による退職の効果が生じなくなったり(労基法19条1項類推)
……
① 私傷病を理由とした休職命令が休職事由を欠き無効となり、その結果、休職期間満了退職の効力が生じなくなったり、
② 療養するため休業する期間及びその後30日間であることを理由として、休職期間満了による退職の効果が生じなくなったり(労基法19条1項類推)
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精神疾患を発症した社員が休職と復職を繰り返しても、真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり、会社の負担が過度に重くなったりしないようにして会社の活力を維持するためには、どうすればいいと思いますか。
精神疾患を発症した社員が休職と復職を繰り返しても、真面目に働いている社員が不公平感を抱いたり、会社の負担が過度に重くなったりしないようにして会社の活力を維持するためには、休職期間を無給とし、傷病手当金の受給で対応するのが効果的です。休職と復職を繰り返す社員の対応に困っている会社は、休職期間についても賃金が支払われていることが多い印象です。
……
精神疾患を発症した社員が休職と復職を繰り返すのを防止するためには、就業規則にどのような規定を置く必要がありますか。
精神疾患を発症した社員が休職と復職を繰り返すのを防止するためには、復職後間もない時期(復職後6か月以内等)に同一又は類似の事由により欠勤した場合(債務の本旨に従った労務提供ができない場合を含む。)には、復職を取り消して直ちに休職させ、休職期間を通算する(休職期間を残存期間とする)等の規定を置いて対処する必要があります。そのような規定がない場合は、普通解雇を検討せざるを得ませんが、有効性が争われる……
休職制度を運用する上での注意点を教えて下さい。
休職命令の発令、休職期間の延長等に関し、同じような状況にある社員の扱いを異にした場合、紛争になりやすく、敗訴リスクも高まるので、休職制度の運用は公平・平等に行うようにして下さい。
同じような状況にある社員の取扱いを異にする場合は、裁判官が納得できるような合理的理由を説明できるようにしておいて下さい。 ……
同じような状況にある社員の取扱いを異にする場合は、裁判官が納得できるような合理的理由を説明できるようにしておいて下さい。 ……
精神疾患を発症して休職している社員が提出した主治医の診断に疑問がある場合に、会社が医師を指定して受診を命じたところ当該社員が指定医への受診を拒絶した場合は、どのように対応すればいいでしょうか。
精神疾患を発症して休職している社員が提出した主治医の診断に疑問がある場合に、会社が医師を指定して受診を命じたところ当該社員が指定医への受診を拒絶した場合は、休職期間満了時までに、債務の本旨に従った労務提供ができる程度にまで精神疾患が改善していないものとして取り扱って復職を認めず、退職扱いとすることができることもあります。
……
精神疾患を発症して休職している社員が提出した主治医の診断書の内容に疑問がある場合には、どのように対応すればいいでしょうか。
復職の可否を判断するにあたっては、専門医の診断・意見を参考にして下さい。
精神疾患を発症して休職している社員が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても、専門医の診断を軽視することはできません。主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり、精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医の意見を聴いたりして、病状を確認して下さい。 ……
精神疾患を発症して休職している社員が提出した主治医の診断書の内容に疑問があるような場合であっても、専門医の診断を軽視することはできません。主治医への面談を求めて診断内容の信用性をチェックしたり、精神疾患に関し専門的知識経験を有する産業医の意見を聴いたりして、病状を確認して下さい。 ……
精神疾患を発症して休職に入った社員の復職の可否の判断基準を教えて下さい。
精神疾患を発症して休職に入った社員の復職の可否は、「休職期間満了日までに、債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否か」により判断するのが原則です。
ただし、診断書等の客観的証拠により、間もない時期に債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善していると認定できる場合には、休職期間満了により退職扱いにするかどうかを慎重に判断する必要があります。休……
ただし、診断書等の客観的証拠により、間もない時期に債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善していると認定できる場合には、休職期間満了により退職扱いにするかどうかを慎重に判断する必要があります。休……