労働問題153 精神疾患を発症して休職に入った社員の復職の可否の判断基準を教えて下さい。

この記事の要点

復職の可否は「休職期間満了日までに、債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているかどうか」により判断するのが原則です。ただし職種限定の有無・配置可能な他の業務の存在(片山組事件最高裁判決)・回復見込みの有無など複数の要素を慎重に検討する必要があります。

1. 復職可否判断の基本基準

 精神疾患を発症して休職に入った社員の復職の可否は、「休職期間満了日までに、債務の本旨に従った労務提供ができる程度に精神疾患が改善しているか否か」により判断するのが原則です。

 主治医が「復職可能」と診断した場合でも、会社が直ちに復職を認めなければならないわけではありません。産業医の意見・会社による業務遂行能力の評価・職場環境への適応可能性を総合的に判断することが求められます。他方で、「まだ不安だから」という理由だけで復職を拒否し続けると、不当な就業排除として損害賠償請求されるリスクがあります。

2. 職種限定がある場合の判断

 職種や業務内容を特定して採用された場合(例:システムエンジニアとして採用)は、その特定された職種・業務について就労可能かどうかを判断します。特定職種での就労が不可能であれば、他の業務ができたとしても復職不可と評価される可能性が高いです。

3. 職種限定がない場合——片山組事件の射程

 通常の正社員のように職種・業務内容を特定せずに採用されている場合も、基本的には現に就業を命じられた業務について就労可能かどうかを判断します。ただし、片山組事件最高裁平成10年4月9日第一小法廷判決の判示(配置される現実的可能性がある他の業務について労務の提供ができ、かつ本人がその労務の提供を申し出ているのであれば、債務の本旨に従った履行の提供がある)により、当該社員が配置される現実的可能性がある他の業務についても就労可能かどうかを検討する必要があります

4. 慎重な判断が必要なケース

 休職期間満了時に精神疾患が完全には治癒していないとしても、近い将来に就労可能な程度に回復する見込みがある場合は、直ちに退職扱いにすることができないとする裁判例もあります。診断書等の客観的証拠により「間もない時期に回復見込みがある」と認定できる場合は、期間延長や試し出勤制度の活用も含めて弁護士と慎重に検討することが必要です。

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弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 /  「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

 

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

 

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最終更新日 2026/04/10

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