この記事の結論
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固定給と歩合給は一体計算できず、それぞれ別の方法で計算して合算する

固定給部分は「固定給÷一月平均所定労働時間数×1.25(時間外)」、歩合給部分は「歩合給÷総労働時間数×0.25(時間外の場合の割増分のみ)」で別々に計算し、合算します。

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「歩合給だから残業代不要」は誤り。計算ミスが未払残業代リスクを生む

歩合給制でも割増部分(時間外25%等)の支払いは必要です。計算方法を誤ると長期間の未払残業代が累積するリスクがあります。

01固定給と歩合給がある場合の残業代計算の基本

 固定給と歩合給の両方を支払っている場合、残業代は一つの賃金としてまとめて計算することはできません。それぞれの賃金の性質に応じて、固定給部分と歩合給部分を分けて計算する必要があります。

 固定給は所定労働時間内の労働に対する対価として支払われるものであり、時間外労働に対しては通常の賃金に加えて割増賃金を支払う必要があります。一方、歩合給(出来高払い)は労働時間の長短に関わらず成果に応じて支払われる賃金であり、時間単価に相当する部分は既に歩合給に含まれていると考えられています(623番参照)。

賃金の種類 時間外割増賃金の計算(月60時間以下)
固定給部分 (固定給 ÷ 一月平均所定労働時間数)× 1.25
歩合給部分 (歩合給 ÷ 総労働時間数)× 0.25(割増部分のみ)

02固定給部分の残業代の計算方法

 固定給は所定労働時間内の労働に対する対価ですから、時間外労働分の賃金は固定給に含まれていません。そのため、時間外労働をさせた場合は、固定給に基づく時間単価の全額(100%)に割増率を加えた時間単価(例:時間外なら125%)で計算します。

 具体的には、まず固定給を一月平均所定労働時間数で除して時間単価を算出し、その時間単価に法定の割増率を乗じます。時間外(月60時間まで)なら×1.25、休日なら×1.35、深夜なら×1.25といった計算です。この方法は月給制と同様です(622番・624番参照)。

 会社経営者として注意すべきなのは、「月給制だから固定残業代で処理できる」という単純な考え方は誤りであるという点です。固定残業代として処理するためには厳格な要件(516番参照)を満たす必要があります。

03歩合給部分の残業代の計算方法

 歩合給は労働時間ではなく成果に応じて支払われる性質のものです。時間を延長して労働した結果として成果が上がっているという側面があるため、通常の労働時間に相当する賃金部分(100%)は既に歩合給に含まれていると考えられています。

 このため、歩合給部分の時間外労働に対して会社が追加で支払うべき割増賃金は、通常の時間単価の全額(125%)ではなく、割増部分の25%のみで足りるとされています(労基則19条1項6号・623番参照)。

 具体的には、当月の歩合給の総額を当月の総労働時間数(所定労働時間数+時間外労働時間数)で除して時間単価を算出し、その時間単価に割増率のみ(時間外0.25、休日0.35、深夜0.25)を乗じて割増賃金単価を求めます。

04具体的な計算手順と計算ミスが生じやすいポイント

 固定給と歩合給がある場合の残業代計算は、次の手順で行います。

計算手順

① 固定給部分の時間単価 = 固定給 ÷ 一月平均所定労働時間数
② 固定給部分の割増時間単価 = ①の時間単価 × 割増率(時間外1.25等)
③ 歩合給部分の時間単価 = 歩合給 ÷ 当月の総労働時間数
④ 歩合給部分の割増時間単価 = ③の時間単価 × 割増率のみ(時間外0.25等)
⑤ 各区分の割増賃金 = (②+④)× 各区分の時間外・深夜・休日労働時間数
⑥ 賃金総額 = 固定給 + 歩合給 + ⑤の合計

 計算ミスが生じやすいポイントとしては、①歩合給部分について「成果に応じた賃金だから残業代は不要」という誤解、②固定給部分の一月平均所定労働時間数の計算誤り、③深夜労働・休日労働の割増率の混同、④歩合給部分の「総労働時間数」(所定外を含む)と「所定労働時間数」の混同などが挙げられます。

 就業規則・賃金規程において固定給と歩合給の内訳・趣旨を明確に区分して定めておくことも重要です。賃金の性質が不明確な場合、残業代計算の前提自体が争われる可能性があります。具体的な計算方法や制度設計については、使用者側弁護士・社会保険労務士に相談することをお勧めします。

経営上のポイント 固定給と歩合給を併用している場合の残業代は、①固定給部分(時間単価×1.25等)と②歩合給部分(時間単価×0.25等・割増部分のみ)を別々に計算して合算します。「歩合給だから残業代不要」は誤りです。就業規則・賃金規程で両者の区分を明確にし、労働時間を正確に把握することが残業代リスク管理の基本です。計算方法や制度設計について不安がある場合は弁護士・社労士に相談することをお勧めします。アドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

Q&Aよくある質問

Q1. 歩合給部分の時間単価計算で使う「総労働時間数」には時間外労働時間も含まれますか。

A. はい、含まれます。労基則19条1項6号の「当該賃金算定期間における総労働時間数」とは、所定労働時間数のみならず時間外労働時間数を含む実際の総労働時間数です。所定労働時間数だけで除した場合、時間単価が高くなり結果として残業代を過少計算することになりますので注意が必要です。

Q2. 固定給と歩合給の比率が月によって大きく変動します。毎月計算し直す必要がありますか。

A. はい、毎月計算する必要があります。歩合給部分の時間単価は当月の歩合給の総額と当月の総労働時間数によって毎月変動します。固定給部分の時間単価は月ごとの所定労働時間数が変わらない限り一定ですが、歩合給部分については毎月計算が必要です。計算の正確性を担保するため、勤怠管理システムや給与計算ソフトを適切に活用することをお勧めします。

Q3. 固定給・歩合給を併用している社員に固定残業代を設定することはできますか。

A. 理論上は可能ですが、固定給部分と歩合給部分が混在する場合に固定残業代として処理するには複雑な設計が必要となり、要件を満たすことが困難です。固定残業代が有効に機能するためには、対応する時間数・金額が明確であること等の厳格な要件(516番参照)が必要です。固定残業代の設計については、事前に弁護士・社労士に相談することを強くお勧めします。

最終更新日:2026年3月1日


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