「通常の労働時間又は労働日の賃金」とはどのような賃金のことをいうのか教えてください。
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7種類の除外賃金を除く全ての賃金が算定基礎となる 「通常の労働時間又は労働日の賃金」(割増賃金の算定基礎)は、①家族手当②通勤手当③別居手当④子女教育手当⑤住宅手当⑥臨時賃金⑦1か月超の賃金の7種類以外の賃金は全て含まれます(小里機材事件最高裁昭和63年)。 |
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手当の名称ではなく実質で判断される(昭和22年通達) 「家族手当」と称していても扶養家族数に関係なく一律支給されている場合は除外賃金にならないなど、手当の名称ではなく実質的な内容で除外賃金かどうか判断されます。 |
目次
01労基法の規定と割増賃金の算出方法
労基法では、法定労働時間を超えて労働させた場合(時間外労働)、法定休日に労働させた場合(休日労働)、深夜(午後10時から午前5時)に労働させた場合(深夜労働)に、一定の割増率以上の割増賃金(残業代)を支払わなければならないとされています(労基法37条1項・4項)。
この割増賃金は、「通常の労働時間又は労働日の賃金」(割増賃金の算定基礎となる賃金)に一定の割増率を乗じることにより算出します。割増賃金の算定基礎となる賃金の範囲を正確に把握することは、残業代の適正な計算のために不可欠です。
02除外賃金の7種類
以下の①〜⑦(除外賃金)に当たらない限り、「通常の労働時間又は労働日の賃金」として割増賃金の算定基礎に算入しなければなりません(小里機材事件最高裁昭和63年7月14日判決)。
除外賃金の7種類(労基則21条)
| 番号 | 除外賃金の種類 |
|---|---|
| ① | 家族手当 |
| ② | 通勤手当 |
| ③ | 別居手当 |
| ④ | 子女教育手当 |
| ⑤ | 住宅手当 |
| ⑥ | 臨時に支払われた賃金 |
| ⑦ | 1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 |
役職手当・皆勤手当・営業手当・職務手当・精勤手当等は上記7種類に含まれないため、原則として割増賃金の算定基礎に算入する必要があります。これらを誤って除外すると、未払残業代のリスクが生じます。
03手当の名称ではなく実質で判断される(通達)
通達(昭和22年9月13日基発17号)では、①〜⑤の手当は名称のいかんにかかわらず実質によって取り扱うとされています。したがって、手当に上記の名称がついていれば除外賃金として扱えるというわけではなく、実質的な内容が除外賃金としてふさわしいかどうかで判断される必要があります。
実質判断の具体例
「家族手当」という名称でも除外賃金にならないケース:
扶養家族数に関係なく一律1万円を支給している場合は、実質的に「家族手当」ではなく労働の対価として機能しているため、除外賃金として取り扱うことはできません。
「通勤手当」という名称でも除外賃金にならないケース:
実際の通勤距離・交通費に関係なく全員一律で支給している場合は、除外賃金として取り扱えない可能性があります。
04臨時に支払われた賃金・1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の具体例
⑥の「臨時に支払われた賃金」とは、臨時的・突発的事由に基づいて支払われたもの、または支給条件は予め確定しているが支給事由の発生が不確定であり、かつ非常に稀に発生するものをいいます(昭和22年9月13日基発17号)。具体的には傷病手当金や加療見舞金等があります。
⑦の「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」の具体例としては、次のものが挙げられます。
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金の具体例
・賞与(金額が予め確定していないもの)
・1か月を超える期間の出勤成績によって支給される精勤手当
・1か月を超える一定期間の勤務に対して支給される勤続手当
・1か月を超える期間にわたる事由によって算定される奨励加給または能率手当等
なお、賞与については金額が予め確定していないものが⑦に該当します。毎月1か月分の賞与を支払うと定められている場合など、賞与の名称があっても毎月支払われるものは⑦に該当しない場合があるため注意が必要です。
監修者
弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎
東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)
日本全国各地の会社経営者の皆様へ
弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。問題社員、労働審判、残業代トラブルでお悩みでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。
Q&Aよくある質問
Q1. 役職手当や皆勤手当は割増賃金の算定基礎に含めなければなりませんか。
A. はい、含めなければなりません。役職手当・皆勤手当・精勤手当・職務手当・営業手当等は、労基則21条が定める7種類の除外賃金に該当しないため、原則として割増賃金の算定基礎に算入する必要があります。これらを除外していると未払残業代が発生するリスクがあります。自社の賃金規程を確認し、除外している手当がある場合は弁護士・社労士に相談することをお勧めします。
Q2. 住宅手当は全額除外できますか。
A. 住宅費(家賃等)の実額に応じて支給している場合や、住宅費を段階的に区分して支給している場合は除外賃金として取り扱うことができます。しかし、全従業員に一律で支給している場合や、社宅を貸与している場合の家賃補助等は、実質的に住宅費補填ではなく労働の対価として機能しているとして、除外賃金に当たらないと判断される可能性があります。名称ではなく実質で判断されますので、自社の住宅手当の支給基準を確認することをお勧めします。
Q3. 夏季・冬季の定期賞与は割増賃金の算定基礎に含まれますか。
A. 夏季・冬季の定期賞与については、金額が予め確定していない場合は「1か月を超える期間ごとに支払われる賃金」として除外賃金となります。ただし、「毎月1か月分の賞与を支払う」等、支給額が予め確定している場合は1か月超の賃金の要件を満たさず、除外賃金に当たらない可能性があります。また、賞与が毎月支払われるものは⑦に該当しません。賞与の性質や支給方法によって判断が分かれますので、不明な場合は弁護士に相談することをお勧めします。
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最終更新日:2026年2月25日