この記事の結論
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裁判所は、申立書等の写しを相手方に送付しなければならない

裁判所は、労働審判法6条の規定により申立てを却下する場合を除き、申立書の写しおよび証拠書類の写し等を相手方に送付しなければなりません(労働審判規則10条)。争訟性の強い労働審判事件で、相手方に十分な主張の機会を保障するための規定です。

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後続の書類は、当事者間で直接送付する(直送)

申立書に続いて提出される答弁書、補充書面、証拠書類の写しなどについては、裁判所を介さず、当事者が相手方に直接送付するよう定められています(労働審判規則20条)。

 労働審判手続では、労働者側から申立書が提出されると、会社側にその写しが送付されてきます。この送付の仕組みは、実は一般的な非訟事件とは異なる、労働審判手続に特有のものです。

 会社側専門の弁護士の立場から、申立書等の写しが送付される理由と、その後の書類のやり取りの仕組みを解説します。

01裁判所による送付義務(労働審判規則10条)

 裁判所は、労働審判法6条の規定により労働審判手続の申立てを却下する場合を除き、申立書の写しおよび証拠書類の写し等を相手方に送付しなければならないと定められています(労働審判規則10条)。会社側が労働審判の申立てを受けたことを知るのは、通常、この送付によってです。

02非訟事件との違い(争訟性の強さ)

 典型的な非訟事件では、裁判所は、申立書等の副本を相手方に送付する必要はありません。非訟事件は、当事者間の対立構造を前提とせず、裁判所が後見的な立場から関与する手続だからです。

 これに対し、労働審判事件は、手続の性質としては非訟事件に位置づけられるものの、実質的には当事者間の権利義務をめぐる争いを扱う点で、争訟性が強い手続です。そこで、労働審判手続において相手方が十分な主張をすることができるよう、あえて非訟事件の一般原則とは異なり、申立書等の写しを送付する仕組みが設けられました。労働審判が、迅速性を重視しつつも、当事者双方の主張立証の機会を確保しようとする制度であることが、この規定にも表れています。

03送付が不要となる例外

 もっとも、次の2つの場合には、申立書等の写しを送付する必要はないとされています。第一に、裁判所が申立てを不適法と判断し、却下する場合です。この場合、そもそも手続が本格的に開始しないため、送付の必要がありません。第二に、労働審判委員会が、労働審判期日を経ずに労働審判事件を終了させる場合(24条終了)です。この場合も、期日における審理に進まないため、送付は不要とされています。

04具体的な送付書類

 裁判所から相手方に送付される具体的な書類は、労働審判手続の申立書の写し、証拠書類の写し、証拠説明書です。会社側は、これらの書類を受け取った時点から、第1回期日に向けた答弁書の作成や証拠の準備を開始することになります。

05後続書類の直送(労働審判規則20条)

 申立書等の最初の送付とは異なり、その後に提出される答弁書、補充書面、証拠書類の写し、証拠説明書等については、裁判所が送付するのではなく、当事者が相手方に直接送付するよう定められています(労働審判規則20条)。これを「直送」といいます。直送は、書類の写しの交付、またはファクシミリを利用した送信によって行います。

 つまり、労働審判手続における書類のやり取りは、最初の申立書等については裁判所を介した送付、それ以降は当事者間の直送という、2段階の仕組みになっています。会社側が答弁書を提出する際には、裁判所への提出とあわせて、申立人側への直送も忘れずに行う必要があります。

06会社側が押さえておくべき視点

 会社側にとって重要なのは、答弁書以降の書類については、裁判所への提出だけでは足りず、相手方への直送も必要になるという点です。裁判所に提出しただけで安心していると、直送を怠ったことになり、手続上の不備を指摘されるおそれがあります。答弁書や証拠説明書を提出する際には、部数の確認(裁判所提出用・相手方直送用)とあわせて、直送の実施を漏れなく行うことが重要です。

07よくある質問(FAQ)

Q. 労働審判の申立てがあったことは、どのようにして分かりますか。

裁判所から、申立書の写し、証拠書類の写し、証拠説明書が送付されます(労働審判規則10条)。この送付によって、会社側は申立ての内容を把握することになります。

Q. なぜ労働審判では申立書の写しが送付されるのですか。

典型的な非訟事件では申立書等の送付は不要ですが、労働審判事件は争訟性が強いことから、相手方が十分な主張をできるよう、あえて送付する仕組みが設けられています。

Q. 答弁書は、裁判所に提出すれば相手方にも自動的に届きますか。

届きません。答弁書以降の書類は、裁判所ではなく当事者が相手方に直接送付(直送)するよう定められています(労働審判規則20条)。裁判所への提出とあわせて、相手方への直送を忘れずに行う必要があります。

経営上のポイント 裁判所は、労働審判法6条による申立ての却下の場合を除き、申立書の写しおよび証拠書類の写し等を相手方に送付しなければなりません(労働審判規則10条)。典型的な非訟事件では不要な取扱いですが、労働審判事件は争訟性が強いため、相手方の主張の機会を確保するために設けられた仕組みです。申立てを却下する場合や、期日を経ずに事件を終了させる場合(24条終了)には送付は不要です。もっとも、答弁書や補充書面など、申立書等の後に提出される書類については、裁判所を介さず、当事者間で直接送付(直送)することになっています(労働審判規則20条)。会社側が答弁書を提出する際は、裁判所への提出だけでなく、相手方への直送も忘れずに行う必要があります。答弁書の作成・提出手続は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。労働審判の申立てを受けてお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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