この記事の結論
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対象業務は19業務に限定され、労使協定の締結・届出が必須

専門業務型裁量労働制が適用される要件は、対象業務に当たること、業務の遂行手段や時間配分の決定等に関し使用者が具体的指示をしないこと、労使協定の締結・届出です。対象業務は法定の19業務に限られます。

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「具体的指示をしない」は、基本的な指揮命令権まで放棄する意味ではない

途中経過の報告を求めたり、タイムカードで労働時間を管理したり、始業・終業時刻を定めたりすることは、必ずしも裁量労働制の適用を否定するものではありません。

 専門業務型裁量労働制は、対象業務が法律上限定列挙されている点で、企画業務型裁量労働制とは制度設計が異なります。また、適用のためには、業務要件だけでなく、労使協定の締結・届出という手続要件も満たす必要があります。

 会社側専門の弁護士の立場から、専門業務型裁量労働制が適用されるための要件を解説します。

01適用のための3つの要件

 専門業務型裁量労働制が適用される要件として、①対象業務に当たること、②業務の遂行手段や時間配分の決定等に関し、使用者が具体的指示をしないこと、③労使協定の締結・届出、の3つが必要です。以下、それぞれの内容を解説します。

02対象業務(19業務)

 専門業務型裁量労働制の対象業務は、次の6類型(基本5業務+厚生労働大臣の指定業務)に限定されています。

専門業務型裁量労働制の対象業務
新商品・新技術の研究開発、または人文科学・自然科学に関する研究の業務
情報処理システムの分析または設計の業務
新聞・出版の事業における記事、または放送番組の作成のための取材・編集の業務
衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサーまたはディレクターの業務
その他、厚生労働大臣の指定する業務(14業務)

 ⑥の厚生労働大臣が指定する業務には、コピーライター、システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲームソフト制作、証券アナリスト、金融商品開発、大学における研究、公認会計士、弁護士(外国法事務弁護士を含む)、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士の14業務が指定されています。①〜⑤の基本5業務とあわせて、合計19業務に限定されており、これ以外の業務には専門業務型裁量労働制を適用することができません。

03具体的指示の不存在

 業務の遂行手段や時間配分の決定等に関し、使用者が具体的な指示をしないことも要件の一つです。もっとも、これは、業務の遂行手段等について完全に労働者の裁量に委ねなければならないという意味ではなく、基本的な指揮命令権を使用者が保持することは差し支えありません。

 たとえば、次のような対応は、必ずしも裁量労働制の適用を否定するものではありません。

  • 途中経過の報告を求めること
  • 労働時間管理のためタイムカードに打刻させること
  • 特定の日または時間に会議等に出席するよう指示すること
  • 始業・終業時刻を定めること

 これらは、健康管理や組織運営上必要な最小限の関与であり、業務の遂行方法そのものに具体的な指示を与えるものではないため、制度の適用を妨げないと考えられています。

04労使協定の締結・届出

 専門業務型裁量労働制が適用されるためには、労使協定を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。労使協定に定めなければならない事項は、次のとおりです。

労使協定に定めるべき事項
対象業務
対象業務ごとのみなし労働時間
業務の遂行手段・時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこと
対象労働者の健康福祉確保措置
対象労働者からの苦情処理措置
協定の有効期間等、厚生労働省令で定める事項

 ②の対象業務ごとのみなし労働時間について、対象業務が複数に類型化され、それぞれの遂行に必要な時間が異なる場合には、その個別の業務ごとにみなし時間を定める必要があります。また、みなし時間の定め方は、1日あたりの労働時間として定めるべきであり、1か月あたりの労働時間として定めることはできません。

05会社側が押さえておくべき視点

 専門業務型裁量労働制の導入を検討する際、会社側が最初に確認すべきは、対象としたい業務が、法定の19業務のいずれかに該当するかどうかです。業務の名称ではなく、実態として、その業務が法定業務の定義に合致しているかを慎重に検討する必要があります。

 また、労使協定の届出を怠ったまま制度を運用すると、専門業務型裁量労働制としての効力が認められず、実労働時間に基づく割増賃金の支払義務が生じるリスクがあります。労使協定の締結・届出は、制度導入の前提条件として、確実に履践しておく必要があります。

06よくある質問(FAQ)

Q. 専門業務型裁量労働制の対象業務は、何種類ありますか。

基本5業務と、厚生労働大臣が指定する14業務をあわせて、合計19業務に限定されています。これら以外の業務には適用できません。

Q. タイムカードで労働時間を管理すると、裁量労働制の適用が否定されますか。

否定されません。労働時間管理のためのタイムカード打刻や、始業・終業時刻の設定は、業務の遂行方法そのものへの具体的な指示ではなく、必ずしも裁量労働制の適用を否定するものではありません。

Q. 労使協定の届出をしなかった場合、どうなりますか。

専門業務型裁量労働制としての効力が認められず、実労働時間に基づく割増賃金の支払義務が生じるリスクがあります。労使協定の締結・届出は、制度導入の前提条件です。

経営上のポイント 専門業務型裁量労働制が適用される要件は、①対象業務に当たること、②業務の遂行手段や時間配分の決定等に関し使用者が具体的指示をしないこと、③労使協定の締結・届出、の3つです。対象業務は、基本5業務と厚生労働大臣指定の14業務をあわせた19業務に限定されています。「具体的指示をしない」とは、基本的な指揮命令権まで放棄する意味ではなく、途中経過の報告や労働時間管理、始業・終業時刻の設定は制度の適用を妨げません。労使協定には、対象業務、対象業務ごとのみなし労働時間(1日あたりで定める必要)、具体的指示をしない旨、健康福祉確保措置、苦情処理措置などを定め、労働基準監督署長への届出が必要です。届出を怠ると制度の効力が認められず、割増賃金の支払義務が生じるリスクがあります。制度の導入・運用は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

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弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。裁量労働制の導入や運用でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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