この記事の結論
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出向により、出向元・出向先との二重の労働契約関係が生じる

出向は、労働者と出向元・出向先との二重の労働契約関係が生じることになります。懲戒権や解雇権がどちらにあるかは、契約自由の原則により、三者間の合意内容に委ねられます。

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通常は、基本部分を出向元、日常の就業管理を出向先が担う

通常の出向では、賃金の支払義務や解雇権など労働契約の基本的部分は出向元が有し、労働時間等の就業管理や職場秩序の維持に関する権限は出向先が有するのが一般的です。

 出向を行う際、実務上しばしば問題になるのが、出向中の労働者に対して、誰がどのような権限を持つのかという点です。出向元・出向先のいずれもが労働者との関係を持つため、権限の分配をあらかじめ明確にしておくことが重要です。

 会社側専門の弁護士の立場から、出向中の労働関係の構造と、権限分配の実務を解説します。

01出向中の二重の労働契約関係

 出向は、労働者と出向元・出向先との二重の労働契約関係が生じることになります。出向元との労働契約は存続したまま、出向先との間にも新たな労働契約関係(あるいはこれに準じる関係)が生じ、労働者は、出向先の指揮命令のもとで労務を提供することになります。この二重性が、在籍出向の最大の特徴です。

02懲戒権・解雇権の所在

 このように二重の労働契約関係が生じる結果、労働者に対する懲戒権や解雇権が、出向元と出向先のどちらにあるのかが問題になります。この点は、法律で一律に定められているわけではなく、契約自由の原則により、出向元・出向先・労働者の三者間の合意内容に委ねられることになります。

 したがって、出向契約や出向規程において、懲戒権や解雇権をどちらが行使するのかを、あらかじめ明確に定めておくことが重要です。定めが曖昧なまま出向を実施すると、いざ懲戒処分や解雇を検討すべき事態が生じた際に、権限の所在をめぐって混乱が生じかねません。

03一般的な権限分配の実務

 もっとも、通常の出向の場合、実務上は次のような権限分配が一般的です。

出向中の一般的な権限分配
出向元 賃金の支払義務、解雇権など、労働契約の基本的部分
出向先 労働時間等の就業管理、職場秩序維持に関する権限

 この分配は、出向元が労働契約の当事者としての地位を維持している以上、賃金支払義務や解雇権といった契約の根幹に関わる権限は出向元に残るのが自然である一方、日常の業務遂行にかかわる指揮命令や職場規律の維持は、実際に労務の提供を受ける出向先が担うのが合理的である、という考え方に基づいています。もっとも、これはあくまで一般的な傾向であり、個別の出向契約の内容によって異なる定め方もあり得ます。

04会社側が押さえておくべき視点

 出向を行う会社としては、出向契約や出向規程の中で、次の点を明確にしておくことが重要です。第一に、賃金の支払主体(出向元・出向先のいずれが支払うか、差額をどう調整するか)です。第二に、懲戒権・解雇権の所在です。第三に、日常の労働時間管理や職場規律違反への対応を、出向先の権限とすることの明記です。第四に、出向先で問題が生じた場合の、出向元への報告・連携の仕組みです。

 特に懲戒権・解雇権の所在が不明確なまま出向を実施すると、出向先で問題行動があった場合に、どちらが対応すべきかで対応が遅れ、事態が深刻化するリスクがあります。出向契約を締結する段階で、これらの権限分配を書面で明確にしておくことをお勧めします。

05よくある質問(FAQ)

Q. 出向中の労働者に対する解雇権は、どちらが持ちますか。

契約自由の原則により、三者間の合意内容によって決まります。通常は、労働契約の基本的部分として、出向元が解雇権を有するのが一般的です。

Q. 出向先で労働者が問題を起こした場合、出向先が独自に懲戒処分できますか。

出向契約における合意内容によります。職場秩序維持に関する権限は出向先が有するのが一般的ですが、懲戒権の所在は個別の取り決め次第です。あらかじめ出向契約で明確にしておくことが重要です。

Q. 出向契約では、どのような点を明確にしておくべきですか。

賃金の支払主体、懲戒権・解雇権の所在、労働時間管理と職場規律違反への対応の権限、出向先での問題発生時の出向元への報告・連携の仕組みを明確にしておくべきです。

経営上のポイント 出向は、労働者と出向元・出向先との二重の労働契約関係が生じます。懲戒権や解雇権が出向元と出向先のどちらにあるかは、契約自由の原則により、三者間の合意内容に委ねられます。もっとも、通常の出向では、賃金の支払義務・解雇権など労働契約の基本的部分は出向元が、労働時間等の就業管理・職場秩序維持の権限は出向先が有するのが一般的です。会社側としては、出向契約や出向規程の中で、賃金支払主体、懲戒権・解雇権の所在、日常の就業管理の権限、出向先での問題発生時の報告・連携の仕組みを、あらかじめ明確に定めておくことが重要です。これらが曖昧なまま出向を実施すると、問題発生時に対応が遅れるリスクがあります。出向契約・出向規程の整備は、会社側・使用者側専門の弁護士にご相談ください。具体的な事情に応じて、実務で使える方針をアドバイスします。
監修者 弁護士 藤田 進太郎

監修者

弁護士法人四谷麹町法律事務所 代表弁護士 藤田 進太郎

東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。日本弁護士連合会会員労働法制委員会委員・事務局次長・最高裁行政局との労働審判制度に関する協議会協議員、第一東京弁護士会労働法制委員会委員・研修部会副部会長、経営法曹会議会員・第112回経団連労働法フォーラム報告担当者、労働審判員連絡協議会特別会員、日本労働法学会会員、東京麹町ロータリークラブ会員・2023-24年度幹事。
講演・著作 / 「会社経営者のための問題社員対応講座」(YouTube)

日本全国各地の会社経営者の皆様へ

弁護士法人四谷麹町法律事務所代表弁護士の藤田進太郎です。私は、労働問題のストレスから会社経営者の皆様を解放したいという強い思いを持っており、日本全国各地の会社経営者のために、問題社員、退職勧奨、労働審判、残業代トラブルなどの労働問題の予防解決に当たっています。出向規程の整備でお困りでしたら、弁護士法人四谷麹町法律事務所にご相談ください。事務所会議室での経営労働相談のほか、ZoomやTeamsでのオンライン経営労働相談を実施しています。

最終更新日:2026年7月13日


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