労働問題765 専門業務型裁量労働制が適用されるための要件を教えて下さい。
1.専門業務型裁量労働制が適用されるための要件
専門業務型裁量労働制が適用される要件として、対象業務に当たるほか、業務の遂行手段や時間配分の決定等に関し、使用者が具体的指示をしないこと、労使協定の締結・届出が必要です。
2.対象業務
① 新商品・新技術の研究開発又は人文科学・自然科学に関する研究の業務
② 情報処理システムの分析又は設計の業務
③ 新聞・出版の事業における記事又は放送番組の作成のための取材・編集の業務
④ 衣服、室内装飾、工業製品、広告等の新たなデザインの考案の業務
⑤ 放送番組、映画等の制作の事業におけるプロデューサー又はディレクターの業務
⑥ その他、厚生労働大臣の指定する業務
⑥には、コピーライター、情報処理システムコンサルタント、インテリアコーディネーター、ゲームソフト制作会社、証券アナリスト、金融商品開発者、大学研究者、公認会計士、弁護士、建築士、不動産鑑定士、弁理士、税理士、中小企業診断士の14業務が指定されています。
3.具体的指示の不存在
具体的指示をしないといっても、業務の遂行手段等に関して完全に労働者の裁量に任せなくてはならないというわけではなく、基本的な指揮命令権を使用者が保持することは差し支えありません。例えば、途中経過の報告を求めたり、労働時間管理のためタイムカードに打刻させたり、特定の日又は時間に会議等に出席するよう指示したり、始業・終業時刻を定めたりすることは、必ずしも裁量労働制の適用を否定するものではありません。
4.労使協定の締結・届出
専門業務型裁量労働制が適用されるためには、労使協定を締結し、労働基準監督署長に届け出る必要があります。
労使協定に定めなければならない事項は、次のとおりです。
① 対象業務
② 対象業務ごとのみなし労働時間
③ 当該業務の遂行手段・時間配分の決定等に関し具体的な指示をしないこと
④ 対象労働者の健康福祉確保措置
⑤ 対象労働者からの苦情処理措置
⑥ 協定の有効期間等の厚生労働省で定める事項
②対象業務ごとのみなし労働時間については、対象業務が複数に類型化され、それぞれについて遂行に必要な時間が異なる場合、その個別の業務ごとにみなし時間を定める必要があります。また、みなし時間の定め方は、1日当たりの労働時間として定めるべきであり、1か月当たりの労働時間を定めたりすることはできません。
弁護士法人四谷麹町法律事務所
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